転生したら何も無い廃れた村の長になりました。

松宮砂糖

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序章

プロローグ

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 窓から入る日光が、窓側の席に座る私を照らした時、私こと塩野愛しおのあいは、私の名前を呼ぶ声を聞いた。
 不思議と落ち着く声ではありながら、何故かはらわたが煮えくり返る程ムカつく声に聞こえるその声。
これが、全ての事の発端でした。


 私が所属していた吹奏楽部は、全国大会出場と優勝にしか目がない部活。少し気を抜いただけで、顧問に怒鳴られてしまう。「やる気がないのか」、と。はいと答えればどうなるか分からない恐怖から、「いいえ」と返す以外になかった。そんな顧問や先輩達からの圧やプレッシャーが、私の心をむしばんだ。

 頭痛がするほど聞いた、両親の喧嘩。不倫、弁護士、慰謝料。嫌と思う程聞いたその単語。日々喧嘩し、仲がどんどん悪くなる。なのに、言葉にしか出てこない離婚。家庭内の環境は悪化し、次第に私の扱いも雑となった。

 そのせいかはわからないけれど、授業中も、部活中も、ゲーム中も、興味があると思うことがなくなった。
 そんな中でも、唯一ゆいいつ少し興味があった死後の世界について調べる事にした。学校の図書室、インターネット、県立図書館、古本屋。様々な場所を巡って死後について調べた。
 天国へ送られる。地獄へ送られる。その先は無い。色んな検索結果がヒットした。
 そんな中で私が目を輝かせたのは──

 転生。

 転生と言っても、私が1番多く見たものは、レストランのコースのように幾つかジャンルがあるという物だった。ランダムで何らかの動物への転生するコース。人間となり、またこの地球という世界に返り咲くタイプの転生コース。モンスターとなり、異世界へと飛ばされる転生コース。そして、異世界でモンスターではなく、人間として産まれる転生コース。私はこの転生コースに憧れた。
 この世界は、死者自身が死後を選べるという優しい世界みたいだった。事実かどうかは分からないのだが、こんな悲しく、酷く醜いとまで感じた世界の先は、自由。そう思えば、少し肩の荷が軽くなった気がした。
 死ぬと決まればどう死ぬかを考える。飛び降り?OB?首吊り?一酸化炭素中毒?溺死?どれもこれも苦しそう。だったらどうしようか。
 少しだけ気分は明るくなったものの、また帰れば喧嘩だと思うと、重くなる足取り。その中歩く帰り道。蝉の声が響く夏のある日。セーラー服に身を包んだ私という女の子は、仲良さそうな親子を見て、羨ましそうに足を止めた。だが、電車の時間を思い出して、また足を動かす。人混みに紛れながらの帰り道という物は、毎日思うが苦しいものだ。まもなく着く駅。この電車に乗って、私は家へと帰る。いつも通り少し早く着いて、いつも通り『△1△』と書かれた白い文字の列の先頭に立つ。1番が好きな私にとっては、これが日課で、他人が先頭に入ればなんだかムカッとする。私でもこの現象については分からないが、多分、昔からの性格なのだろう。
 電車が来る1分前。ファンタジー小説を読みながら待っていた。電車到着の音楽が流れ、私は持っていた白い手持ちカバンに本を入れて、此方に来る電車を見つめていた。
 その時、視界が歪んだ。
 背中から押された感覚。空気の中を舞う私の身体。
 後ろが見れなくて、犯人はわからなかったけれど、私は突き飛ばされたんだ、と悟った。それと同時に、私は死ぬということを実感した。本来、こういう時は犯人を恨むのだろうが、私は安心していた。「そっか、これで終わりか。」みたいな感じで。
 迫り来る電車の運転手さんと目が合うと、運転手さんが可哀想だったので、私は運転手さんを見ないように視線を逸らして、安堵の笑みを浮かべた。私は晴れて自由の身──!そう思った時、視界に映像が流れた。
 小さい時は、私の事を大切にしてくれた両親。今となれば、話をすることは愚か、顔を思い出す事すら嫌気がさす。いつからこうなったのだろうか、私でも、きっと両親にも分からないのだろうな。
 
 嗚呼。これが走馬灯か。そう思う間もなく、次の映像が流れる。

 入部当初は優しかった先輩や顧問。1ヶ月もすれば、まるでスパルタ教育となった。全員の顔なんて覚えてなかった。いつも私を怒鳴った彼女の顔だけ、思い出したくなくても思い出せた。怒り狂った彼女らに対する恐怖だけが、私の心に残った。
 机にシャープペンシルで描かれた悪口。登校すると共に目に入り、思わずカバンを落とす私を見て、愉悦に浸る男子や女子達。教室に響く声に、何かを確信した今日の昼。
 こんな人達とおさらば出来ると思えば、嬉しさのあまり頬に涙が伝う。そして、満面の笑みと電車の音で、塩野愛という1人の少女の人生は幕を閉じた。

 次に目が覚めたのは、何も無い真っ白な空間。私の中でひとまず、「無限空間むげんくうかん」と名付けることにする。私は前世?のセーラー服姿のままだった。
 きょろきょろと当たりを見渡すも、何も無い。何をするべきか考えていた。
 「塩野愛様…。」
 …!私の名前!どこかで聞いたことある声が、脳に響く。辺りを見渡すも、人の姿など1人として見つからなかった。
 「塩野愛様。貴女あなたは悲しい事に、部活の先輩方に背後から突き飛ばされ、お亡くなりになってしまわれました。」
 悲しい事ではな──ん?
 「ま、待って。部活の先輩に?」
 「貴女様にとって死…え?えぇ、そうでございます。貴女の事をウザがっていた先輩方が、貴女の境遇等を調べあげた上で、自殺と見せかけるために線路から突き落としたみたいです。」
 「はぁぁぁぁぁ?!」
 怒りのままに叫ぶ私。調べあげた上、というのが1番腹立たしい。状況を変えようとはしてくれなかったのだろうか。それとも、先輩らなりに考えてくれていたのだろうか──絶対に違う。いじめにしては度が過ぎているではないか。
 「まぁ良いですけど…死ぬつもりではいましたし。」
 「左様でございますか…あ、申し遅れました。死者を導く神こと、死神が1人、オリエンスと申します。私は貴女を見ていました。なので」
 「見ていたなら早く次の段階に行って貰えますか?」
 私の転生ライフはまだ始まらないのか、と、少し苛立ちを感じ初めて、死神オリエンスに対して怒鳴る。その言葉に驚く様に息を吸う声が聞こえてきたが、多分気の所為。
 「申し訳ありません!では、貴女はどのような死後をお過ごしになられますか?異世界転生コースでしょうか?天界コースでしょうか?それとも、地球転生コースでしょうか?」
 やっぱりコース料理みたいな言い方だなぁ。心の中で突っ込むが、答えは1つに定まっていた。

 「勿論!転生コース!!」

 自分の顔は見えないが、きっと目は輝いていたと思う。
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