転生したら何も無い廃れた村の長になりました。

松宮砂糖

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序章

塩野愛はお空から

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 「勿論!転生コース!!」
 「無限空間」に、私の少し低い声が響いた気がした。あまりの大声に、思わずオリエンスも黙り、目をぱちぱちと開閉していた。
 沈黙の数秒が過ぎ去れば、両手を合わせてパチンと鳴らし、
 「…あ、あぁ!うけたまわりましたっ!転生コースですね!転生コースは前世の記憶もありますし、オプションがあります。何か一つだけお望みを叶えられますよ?何が宜しいですか?」
 前世の記憶があるのは初耳だな。と、思いながらも、オプションという言葉に目を輝かせた。なんかサイドメニューみたい。
 「不死身がいい!不死身!あと今と同じ年齢のまま!」
 「1つと申したのですが…」
 困ったように眉を下げる彼女に、しゅんとした様子で視線を落とす。そんな様子に、彼女は、あわわわわ…なんて声を上げながら、次のように話した。
 「そ、そうですね!塩野愛様の最期は、何ともむごいものでしたし…今回だけですからね?死神天皇にはナイショですよ?」
 死神天皇…?とりあえず強そう。なんてぼんやり思いながら、激しい勢いで首を縦に振る。
 「それでは、塩野愛様…用意はよろしいでしょうか?」
 「用意するものなんて何1つとしてないじゃない!頼んだよ!」
 両手を広げて、満面の笑みを彼女に向けた。自分がみずから望んだ転生。それをこうも簡単な手順で行えるとは…と少しだけ感動していた。過去1番興奮していた。すると、彼女は詠唱を始めた。
 「死神天皇及び原初の死神よ、しかるべき時は来たれり。我が身に魔力を注ぎたまえ」
 異世界感溢れる詠唱は、私のテンションをより一層高めた。自分の周りには、金色こんじきに光る粒子が、ふわりふわりと舞っていた。
 「暗黒は塗り変わる。2つの世界は交わり、今その境界線を壊す時。イゼルナリヤへと我らをいざなえ…。」
 何だ、この詠唱。理解は出来ないけれど、何だかゲームとかアニメとか、小説とかの世界にあるような詠唱な気がした。
 舞い遊んでいた小さな粒子達は、脚元へと集合し、1つの魔法陣となって展開された。状況が掴めなかった自分は、ずっと間抜けな声で「え?え?」とひたすら言い続けていた。視界は白い光に呑まれ、意識を失ってしまった。

***

 次に見た世界は、レプリカのような街。赤レンガの三角屋根の家が、遠くに沢山建っていた。顔に受ける暴風。これで私は大体を理解してしまった。
 「私落ちてる…!オリエンス!どういうなの!」
 『も、申し訳ございません!どうやら、貴女様の条件が2つだった事や私の力不足などが重なってしまって…!』
 「えぇ…私のせいか…。というか、なんで声が聞こえてくるの?」
 『私は、貴女様直属の死神ですから!』
 理解できない理解が余計に出来なくなってしまった。脳に響くオリエンスの声。その声も相まって、考える力とやらが随分と下がってしまっているらしい。
 「ねぇ!オリエンス!」
 『何でしょうか!』
 「不死身効果はちゃんとついてるんだよね?!」
 『勿論でございます!』
 「じゃあ大丈夫!!」
 不死身効果があるなら、どんな落ち方しても大丈夫!と思った。そう思っていざ口に出せば、何が大丈夫か、一瞬にしてわからなくなった。そういえば服は…着てない…真っ裸…?
 「オリエンス~?」
 何かで見た言葉を借りると、私が浮かべた笑みは、暗黒微笑あんこくびしょうと言っても過言ではない表情だったと思う。それを見てなのか、別の理由があってなのか、私の脳にあの声が響かなくなった。視界のは数mに芝生が広がっていると言った状態で、これはどうしようも無いな、と目をつむった。
 巨大な爆発音と共に、私は何とか着地できたらしい。何故か、両足でしっかりと。
 「怖すぎ、二度と空なんて飛びたくない…。」
 『私は何ら問題ありませんがね。なんなら空からもう一度あの景色を見たいほどです!』
 「やだよ!怖い怖い!」
 高所恐怖症となってしまった。高いところは好きだったけど、あんな体験したらもうコリゴリだと言っていい。
 何がともあれ、全裸は嫌なので、周りを見渡すも、草原と──村のような建物のようなよく分からないオブジェクトがあった。絶望にぼーっとしていると、あの死神の声がまた脳に響く。
 『あ、すみません。転生コースは初めてのお方でしたよね。』
 「はじめまして以外っているの…?」
 『あ、居ますよ。私が存じているだけでも、7回は転生した方がいらっしゃいますね。まぁ、それはそうとして、私が貴女様直属の死神となったが故に、私が使える能力の1部は、塩野愛様も使用可能となります。あ、使えない9割の能力は、塩野愛様の身体をお借りした時に使用できます。その時は、私の意思で使うのですがね。」
 「とりあえず服くれないかな…恥ずかしい…。」
 『じゃあ少し身体失礼しても宜しいですか?人格交代のようなものです。』
 「私は多重人格じゃないからその辺分からないけど…」
 「無限空間」に意識を集中し、オリエンスの声を思い浮かべる。
 『…うけたまわりました!』

***

 刹那、私は「無限空間」へと飛ばされた。「え?えぇ…?」とまた間抜けな声を上げながら困惑していると、モニターのようなものが目の前に現れる。
 「ではでは~、他の人が着地時の大きな音に吸い寄せられてるので、ちゃちゃっと終わらせますか~。…これ………なのに……きい…………いな。」
 上手く聞き取れないほどの小さな声に、首を傾げていた。それよりも、胸を触られている感覚の方に意識が向いた。まさか…と思い、モニターに映った画面を見ると、オリエンスが私の胸を触っていた。
 『やめて…!早くしてくれないかな…!』
 大きな声で叫ぶと、肩をビクッと上げ、手を止める。
 「死神天皇及び原初の死神よ、我が詠唱に応えるならば、我に魔力を与え給え。」
 先程とは違う詠唱に、またも「え、え?」と声を上げる。声は詠唱にかき消され、私自身も聞き取れる感じではなかった。
 「時は来たれり。御身おんみから与えられし力よ。我が願いに応え、魔法を発動させよ…メイキング!」
 さぁさぁ…どんな詠唱なのか…って、能力の名前ださいね?どうしたのかな御身達?疲れていたの~?
 心の中で小さく野次やじを投げていたら、モニターのようなものが白い霧に包まれる。その視界は長くは続かず、元に戻った。その時は、何も変わっていないように感じた。
 「終わりましたよ。早く交代してください。」
 悲しそうな、辛そうな。交代を惜しむようなオリエンス。それに対して早く変わって欲しい私。
 異世界に来て初めて着る服。さぞ可愛いのだろう!!
 期待に胸を膨らませ、オリエンスの声と先程自分がいた場所を意識した。

***

 瞬きをした瞬間、視界は何も無い草原へとなっていた。さてさて、私の服は…
 「えぇ…!なんでセーラー服?!」
 まさかの転生前の服と全く同じだった。他の服が着たかった…フリフリレースのかわいい服が来たかった…そう思い、唇を噛んでしくしくと小粒の涙を流した。
 「あの…女神様。」
 「はぁ…」
 溜息が被り、上手く聞き取れなかったが、何やら老人の声が鼓膜を揺さぶる。もう先はない、と言われて納得できるほど、元気の無いしおれた声だった。その声の方角に振り返ると、涙を目に溜めた老人が、こちらをじっと見つめていた。
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