転生したら何も無い廃れた村の長になりました。

松宮砂糖

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村との出会いと初仕事

村の長の初仕事

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 目を開けたそこでは、葬式が執り行われていた。遺影いえいと棺桶の前で潰れ、悲しみの涙を流す男性と女性。誰の葬儀なのか、と視線を上げてみる。

 ──僕?

 姫カットの長い髪、眼鏡をした地味な姿。その姿はまさに、前世の自分自身だった。この女性と男性は、紛れもなく僕の母親と父親だった。今回はどうやら誰かの体に移ったという訳では無いらしく、強いて言うならば「空気目線」と言ったところだった。周りを見渡せば、ズズ、と鼻をすすりながらハンカチで目元をぬぐう人が多く見受けられた。その中に、あの忌々いまいましい顧問まで居た。その隣で、大声で泣き喚く人物が一人いた。僕が担当していた楽器の後輩だ。

 ──京子ちゃん…。

 小さくつぶやくも、その声は届かず、近くに近寄り、触る事さえ不可能だった。

 その様子を見て、心を痛めていると、視界が切り替わって、葬儀場の外と思しき場所に変わる。

 そこでは、同じ制服の女子たち数名がゲラゲラと笑っていた。恐る恐る近づき、その話を聞こうと耳を傾ける。
 
 「まじ塩野が死んだのザマー過ぎるでしょ!」

 ──え?
 突然耳に届く、自分に対する罵倒ばとうの声。

 「いやお前がったんでしょ?」

 ──え、嘘。やだ。
 自分の拒む気持ちを無視し、嫌がらせをするかのようにその声は段々ハッキリと耳に届くようになっていく。

 「あんた殺人犯じゃん!!」
 「やばっ!!」
 「いや彼奴、自殺ってことにされてるから問題ないっしょ~」

 ──誰なの?誰?

 「ね、──」

***

 そこで目が覚める。その夢は恐らく、自分の死後の世界なのだろう。最後、自分をあやめたであろう人物の名前は、聞き取ることが出来なかった。それが何より悔しい。犯人を知るチャンスだったと言うのに。否、知れたところでどうということはないのは事実だ。が、やはり気持ちがスッキリしない。もう少しだったのに。
 もう一度眠りにつき、この夢の続きを見るか、はたまた次の睡眠まで放置か。頭の中でその2つの思考を持った軍隊が戦争を繰り広げている。そんな中、突然その戦争は、1人の呼び声によって終わりを告げた。
 「ラヴィ。起きて。」
 この大人びた大人しい声は…と思い、その声の方に目を向ける。相変わらずボロボロの服を身につけたマリアだ。僕の頬をぺちぺちと小さな音が鳴るほどの弱い勢いで叩いていた。
 「えっと…マリアちゃん、だよね?」
 名前を覚えるのはあまり得意ではないので、思わずそう聞いてしまった。マリアは小さく頷き、親指と人差し指で小さな丸を作った。ホッと安堵あんどしていると、マリアが小さく口を開く。
 「これから集会がある。シャーロリが呼んでる。行こう。」
 「スク、え、あっ……!」
 スクロッドさんが呼んでるなら早く行かなきゃ。そう伝えようとしたが、彼女は僕の腕を掴んで強引に引っ張った。少しだけ腕が傷んだが、外れたりはしてないだろう。いや、していたら大問題だ。
 とはいえ、建物はそう大きくないので、すぐに視界は眩しい太陽の光に照らされた。夜のほんのり不気味だと感じた村の雰囲気は──消えたと思いたい。改めて見る村は、ぽつりぽつりとかろうじてそこにいる事が出来ている2軒の建物のみだった。
 皆、何処で寝ているのかな…
 『皆さんは野宿ですよ。建物の中にて休息を取っているのは、塩野愛様とアルヴァデウス様のみです。』
 「えぇぇ!?とと、というか、おはよう!オリエンス!」
 「…?」
 しまった、と思わず口を押さえてしまった。若干じゃっかん引いたようで、二重アゴになってしまっていたマリアの姿を見れたのは、まぁ…流石に気の所為とは言えなかった。
 「あ、オリエンス、おはよう。」
 『はい!おはようございます!マリア様!』
 聞こえてないのに返事するんだ、この死神。と思っていると、マリアがほんのりと目に光を浮かべてこちらを見つめていることに気がついた。どうやら何を言ってるか、伝えて欲しいらしい…のだと思う。他人の気持ちなど分からないから、正直なんとも言えないのだが。
 「…え、えっとね、おはようございます、マリア様!って言ってるよ。」
 あまり上手くないモノマネモドキをしながら伝えてみた。
 「…うんっ。」
 今…少し、笑った?
 あまり笑顔を見せないクールな女の子というレッテルが、僕の中で彼女に張り付いていた為、ほんのりと上がった口角は、新鮮味を帯びていた。そんな中、よろよろとこちらへ向かってくる一人の男性が視界に映る。
 「おはようございます、ソルティア様。」
 「うん、おはよう。スクロッドさん。」
 腰を押えながら軽く会釈えしゃくをしてくれるシャーロリに対し、こちらも深々と頭を下げる。
 『おはようございます!シャーロリ様!』
 (…オリエンス、聞こえてないこと分かってるよね……?)
 『…。』
 オリエンスが黙り込んだあたり、どうやら忘れていたようだ。ふふ、馬鹿な奴め。
 「あの、ソルティア様、今後の村ですが…」
 「あ、うん。えっとね…今後はまず…建物を優先かな?ずっと野宿なんて、流石に僕の心が痛むし…」
 シャーロリの言葉を遮って、僕が言葉を紡ぐ。
 「お言葉ですが、もあります。その点はどう致しましょう?」
 コレラが綺麗に腕を伸ばし、こちらに真っ直ぐと視線を向けてきている。なんか僕、睨まれてる?
 「あ~…確かに、食糧も大切…」
 顎に手を添え、考えるポーズをとる。食糧も住居も大切なポイントだ。どちらを優先すべきか、判断が難しい。そう思っていると、アルヴァデウスの小さな声が耳に届く。
 「そ、そそうですね…ま、ずは…をそ、ろえるのがいぃぃいんじゃないですかぁ…?」
 震えた声でよく聞き取りにくかったけれど、衣食住を整えなければいけないという主張は聞き取れた。そんな緊張しなくても大丈夫なのに…もしかして、ビビられてたりするのかと、少し不安な気持ちになり、眉を下げる。
 「…はアルヴァデウス。私も、手伝う。」
 マリアが呟くような声と目で僕に訴えかけてくる。また睨まれてる気がするけど、気の所為気の所為。
 「OK!じゃあ、住に関しては、マッチョ組に頼んでもいい?」
 「マッチョ組…とは?」
 ドレイアズから質問が投げられる。そりゃあそれだけ言っても伝わらないかと、少し苦笑いを浮かべて手を合わせる。
 「ごめんごめん、僕の中で勝手にそう呼んでた2人組のこと。えっと…ノーランさんとマラルラさんの2人。結構筋肉あるし。」
 そう言いながら、自分のほっそりとした二の腕をぽん、と叩く。すると、不安げにマラルラがこちらを見つめてきた。
 「僕は薬草や農業の方に精通している。食糧の方にも参加していいかな?」
 「そう…だね。にもってことは、もしかして両方掛け持つ感じ…?」
 少し苦笑いを見せながら、彼の返事がどう来るか、少し期待していると──
 「問題ない。食糧は僕達家族とイーデリックに任せれば何とかなるだろう。」
 …なかなかとんでもないこと言うんだね、この人。
 ぽかんとする数名に対し、「無茶言ってごめんね」と、爽やかイケメンスマイルを披露。その直後、イーデリック以外──ミリアル家族──は、笑顔を浮かべて快く承諾した。渋々ではあるが、イーデリックも小さく頷いた。
 「スクロッドさんは、住の方に携わって貰えるかな?」
 「かしこまりました。老いぼれではありますが、できる限りの事は致しましょう。」
 と、こちらもほんのり笑顔を浮かべて承諾してくれた。僕は、皆が役割を持ったことを頭の中で確認し、大きく頷く。
 「よし!今日からがんばろー!」
 そう言って、拳を天に突き上げた。
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