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第二章「躍動」
第四話「覚悟」
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「あなたももうわかってるはずよ。この世界は弱肉強食なの。この盗賊もいずれ誰かに処刑されるわ。おそらくだけど、このイチマツって盗賊は、これまで一貫して戦いを避けてきたみたいだからね。」
「でも、処刑って、殺せ、っていうんでしょう?アイーダさん。覚悟が…」
するとアイーダは目をカッと見開いて、
「このまま敵と戦わずにすむと思うの?トシオ様。長いゲーム生活、まず最初に、トシオ様の覚悟が見たいわ。ねぇ、みんなもそうでしょう?」
すると、酒場の客たちーー。
「おお~、やれやれ、神の初仕事だぁ~」
「みんなが賛成してるわ。ね、トシオ様。ライバルは倒す。見込みのある者は仲間にする。これがこの世界のならわしよ。その剣でイチマツを処刑しなさい」
トシオはしばらく黙っていたが、決心したようで
「わかった。やります!」
するとアイーダは歓喜の声をあげ
「さすが!トシオ様!それじゃなくちゃ!」
「イチマツ、悪い、ごめんな」
「いやだぁ~、神、コンビニバイトには戻りたくない!嫌だ~、やめて~」
「ザクッ」
トシオの剣がイチマツの心臓を突き刺した。
「か、神…、あぁ…」
周りは大歓声
「おお~、トシオ様が 漢になったぞォー」
アイーダも嬉しそうで、
「やった!トシオ様。これであなたはこの世界の戦士になったわ」
イチマツは剣が抜かれると、ポツポツと、白い、いくつもの玉になって消えていった。
「トシオ様、目をつぶってセンサーを見て!」
トシオは目をつぶる。
「あ、現在、ゲームしている人数が777人から776人になった。」
「そう、イチマツの分ね。減ったのは…」
「ちなみに、敵を倒すと、ゲームシステム経由で、この店、テクノガジェットから、賞金が出るわ。今回は、下の下の敵だから50ギラーね。あ、ギラーっていうのはこのゲーム世界の通貨のことよ。」
アイーダはカウンターの奥の棚からギラーを持ってきて、
「はい、お給料」
「は、はぁ…」
「最初は少ないけど、上玉を倒したら、ガッポリ入るから大丈夫よ。それにふつう、プレイヤーは手に入れたギラーを自己投資、つまり、武器や戦闘能力の向上に使うんだけど、トシオ様の場合は全部完璧だからギラーも役に立たないわね。おいしいもの食べたり、…、そうね、おこがましい話だけど、この店、テクノガジェット999に寄付でもしてくれたなら嬉しいわ」
するとトシオは全く躊躇せず、
「全額、寄付します。」
「トシオ様~~、神、本当にありがとうございます!これで、いずれこの店で、高級な酒や珍味を仕入れることができるようになるわ。本当にありがとうね」
そして、トシオは少し黙ったあと、
「改めて聞きますが、このゲームの目的は、カンタンに言っちゃえば、(この世界での)世界征服ですか?」
「そうね、基本的には。」
「今、トシオ様がイチマツ(ザコだけど…)を殺したことで、他の776人のセンサーにも報告がいっているはずよ。まず87万年振り新人登場に皆驚いてるんじゃないかしらね。この87万年、ほとんど、どのプレイヤーも一定の陣地を得て、それ以上他人を侵略していない平和な状態が続いたからね。トシオ様の登場で、このゲームのパワーバランスが87万年振りに崩れるわ。あなたは革命を起こすのよ。」
「つまり、皆、今の地位、待遇に満足していたわけよ。」
「俺が現れると、何か変わるんですか?」
「今の安息を奪われると、危惧している強者たちがたくさんいるハズよ。イコール、最も危険な存在である、トシオ様を殺しに来る、というわけよ。」
「何か、話だけ聞いてると、最初のゲームの説明で言われた「楽しすぎて帰れない」の意味がさっぱり分からないのですが…」
「あ、それは心配しないで。この世界で名を上げていくうちに、自分の欲望が満たされる処置がちゃんと施されるから。酒、タバコ、女、ギャンブル…etc。トシオ様の場合は、リアル世界で廃盤になった映画のDVDや、CD、プレミア本などが支給される、みたいな…。戦いのたび、その都度ね。「欲」は満たしてくれるわ。この世界は」
「確かに魅力的だ。」
アイーダは顔をほころばせて、
「でしょーー!?」
「でも、」
「ん?」
「それは僕がこの世界にいることの対価にはならないな…」
アイーダは驚いて
「ええ?」
続く
「でも、処刑って、殺せ、っていうんでしょう?アイーダさん。覚悟が…」
するとアイーダは目をカッと見開いて、
「このまま敵と戦わずにすむと思うの?トシオ様。長いゲーム生活、まず最初に、トシオ様の覚悟が見たいわ。ねぇ、みんなもそうでしょう?」
すると、酒場の客たちーー。
「おお~、やれやれ、神の初仕事だぁ~」
「みんなが賛成してるわ。ね、トシオ様。ライバルは倒す。見込みのある者は仲間にする。これがこの世界のならわしよ。その剣でイチマツを処刑しなさい」
トシオはしばらく黙っていたが、決心したようで
「わかった。やります!」
するとアイーダは歓喜の声をあげ
「さすが!トシオ様!それじゃなくちゃ!」
「イチマツ、悪い、ごめんな」
「いやだぁ~、神、コンビニバイトには戻りたくない!嫌だ~、やめて~」
「ザクッ」
トシオの剣がイチマツの心臓を突き刺した。
「か、神…、あぁ…」
周りは大歓声
「おお~、トシオ様が 漢になったぞォー」
アイーダも嬉しそうで、
「やった!トシオ様。これであなたはこの世界の戦士になったわ」
イチマツは剣が抜かれると、ポツポツと、白い、いくつもの玉になって消えていった。
「トシオ様、目をつぶってセンサーを見て!」
トシオは目をつぶる。
「あ、現在、ゲームしている人数が777人から776人になった。」
「そう、イチマツの分ね。減ったのは…」
「ちなみに、敵を倒すと、ゲームシステム経由で、この店、テクノガジェットから、賞金が出るわ。今回は、下の下の敵だから50ギラーね。あ、ギラーっていうのはこのゲーム世界の通貨のことよ。」
アイーダはカウンターの奥の棚からギラーを持ってきて、
「はい、お給料」
「は、はぁ…」
「最初は少ないけど、上玉を倒したら、ガッポリ入るから大丈夫よ。それにふつう、プレイヤーは手に入れたギラーを自己投資、つまり、武器や戦闘能力の向上に使うんだけど、トシオ様の場合は全部完璧だからギラーも役に立たないわね。おいしいもの食べたり、…、そうね、おこがましい話だけど、この店、テクノガジェット999に寄付でもしてくれたなら嬉しいわ」
するとトシオは全く躊躇せず、
「全額、寄付します。」
「トシオ様~~、神、本当にありがとうございます!これで、いずれこの店で、高級な酒や珍味を仕入れることができるようになるわ。本当にありがとうね」
そして、トシオは少し黙ったあと、
「改めて聞きますが、このゲームの目的は、カンタンに言っちゃえば、(この世界での)世界征服ですか?」
「そうね、基本的には。」
「今、トシオ様がイチマツ(ザコだけど…)を殺したことで、他の776人のセンサーにも報告がいっているはずよ。まず87万年振り新人登場に皆驚いてるんじゃないかしらね。この87万年、ほとんど、どのプレイヤーも一定の陣地を得て、それ以上他人を侵略していない平和な状態が続いたからね。トシオ様の登場で、このゲームのパワーバランスが87万年振りに崩れるわ。あなたは革命を起こすのよ。」
「つまり、皆、今の地位、待遇に満足していたわけよ。」
「俺が現れると、何か変わるんですか?」
「今の安息を奪われると、危惧している強者たちがたくさんいるハズよ。イコール、最も危険な存在である、トシオ様を殺しに来る、というわけよ。」
「何か、話だけ聞いてると、最初のゲームの説明で言われた「楽しすぎて帰れない」の意味がさっぱり分からないのですが…」
「あ、それは心配しないで。この世界で名を上げていくうちに、自分の欲望が満たされる処置がちゃんと施されるから。酒、タバコ、女、ギャンブル…etc。トシオ様の場合は、リアル世界で廃盤になった映画のDVDや、CD、プレミア本などが支給される、みたいな…。戦いのたび、その都度ね。「欲」は満たしてくれるわ。この世界は」
「確かに魅力的だ。」
アイーダは顔をほころばせて、
「でしょーー!?」
「でも、」
「ん?」
「それは僕がこの世界にいることの対価にはならないな…」
アイーダは驚いて
「ええ?」
続く
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