11 / 55
少女たちの深まる仲
2
しおりを挟む
結論から言えば、パパとふたりでのお出かけは楽しいものになった。
ショッピングモールについてまず初めに映画のディスクを買ってもらった。翠はその作品の原作は一冊で完結しているものだと思っていたのだがどうやら原作は何冊も続いていたようで、映画のディスクもそれに合わせていくつも展開されていた。それを見たパパは最初から最後まで、映画の全八作品を全て購入してくれた。原作も買うかと聞かれたが翠は断った。買ってもらえるという事実は嬉しかったがあまりにたくさん買ってもらうのは気持ち的に納得がいかなかったか。申し訳ないという気持ちがあったのだ。
次に、テナントの一角にあるレストランで中華料理を食べた。食事中はパパが翠に学校生活のことを尋ね、翠は教室で起きた出来事やクラブ活動の話などをいつものように話した。話が途切れて気まずくなることが怖く翠はいつもより努めて明るく、詳しく学校生活のことを話した。パパは無表情だったが、きちんと相槌を打って話を聞いていた。翠はほっとした。話をすることに必死になってしまいこの時に食べていた小籠包の味はあまり記憶に残っていない。
次に学校で必要な文房具を買ってもらった。鉛筆と定規、ノート。それからペンケースまで。ペンケースを買う事は断ったが、以前買ったのは二年前なのだからそろそろ新しくした方が良いと言われ緑と白のストライプ柄の小さめなペンケースを選び購入した。
最後に服を買いに行った。ショッピングモールという場所は服を売っている店が多く、翠はパパと並んで歩きながらどの店に入れば良いものかと考えていたが途中、牧瀬愛とコラボしている小中学生向けブランドの店を見つけその店へと入った。そこで服を数着買い、その時点で翠の気持ちはかなり上向きだった。服を選んでいる最中、パパは翠に黙ってついていたが翠が服を手に取り悩む素振りを見せるとすぐにその服を選び取って店員へと手渡してくれた。パパが自分の買い物に付き合ってくれる事、嬉しくて堪らなかった。
楽しかった。今まではパパにどこかへ連れて行ってもらえる事もほぼ無いに等しく、パパの言いつけで葛がたまに電車で動物園や科学館のような施設に連れだしてくれてはいたが、翠はそれでもどこか寂しい気持ちを感じていた。翠の中で葛は家族ではなくあくまで家政婦だ。本当はパパに連れて行ってほしいと思っていた。それが実現したのだからこんなにも嬉しいことはなかった。
このままずっとこんな風に翠の理想とする親子関係を続けていけないかと――帰りの車内でずっと考えていた。
ショッピングモールについてまず初めに映画のディスクを買ってもらった。翠はその作品の原作は一冊で完結しているものだと思っていたのだがどうやら原作は何冊も続いていたようで、映画のディスクもそれに合わせていくつも展開されていた。それを見たパパは最初から最後まで、映画の全八作品を全て購入してくれた。原作も買うかと聞かれたが翠は断った。買ってもらえるという事実は嬉しかったがあまりにたくさん買ってもらうのは気持ち的に納得がいかなかったか。申し訳ないという気持ちがあったのだ。
次に、テナントの一角にあるレストランで中華料理を食べた。食事中はパパが翠に学校生活のことを尋ね、翠は教室で起きた出来事やクラブ活動の話などをいつものように話した。話が途切れて気まずくなることが怖く翠はいつもより努めて明るく、詳しく学校生活のことを話した。パパは無表情だったが、きちんと相槌を打って話を聞いていた。翠はほっとした。話をすることに必死になってしまいこの時に食べていた小籠包の味はあまり記憶に残っていない。
次に学校で必要な文房具を買ってもらった。鉛筆と定規、ノート。それからペンケースまで。ペンケースを買う事は断ったが、以前買ったのは二年前なのだからそろそろ新しくした方が良いと言われ緑と白のストライプ柄の小さめなペンケースを選び購入した。
最後に服を買いに行った。ショッピングモールという場所は服を売っている店が多く、翠はパパと並んで歩きながらどの店に入れば良いものかと考えていたが途中、牧瀬愛とコラボしている小中学生向けブランドの店を見つけその店へと入った。そこで服を数着買い、その時点で翠の気持ちはかなり上向きだった。服を選んでいる最中、パパは翠に黙ってついていたが翠が服を手に取り悩む素振りを見せるとすぐにその服を選び取って店員へと手渡してくれた。パパが自分の買い物に付き合ってくれる事、嬉しくて堪らなかった。
楽しかった。今まではパパにどこかへ連れて行ってもらえる事もほぼ無いに等しく、パパの言いつけで葛がたまに電車で動物園や科学館のような施設に連れだしてくれてはいたが、翠はそれでもどこか寂しい気持ちを感じていた。翠の中で葛は家族ではなくあくまで家政婦だ。本当はパパに連れて行ってほしいと思っていた。それが実現したのだからこんなにも嬉しいことはなかった。
このままずっとこんな風に翠の理想とする親子関係を続けていけないかと――帰りの車内でずっと考えていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる