パパには言わない

田中潮太

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少女たちの深まる仲

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 結論から言えば、パパとふたりでのお出かけは楽しいものになった。

 ショッピングモールについてまず初めに映画のディスクを買ってもらった。翠はその作品の原作は一冊で完結しているものだと思っていたのだがどうやら原作は何冊も続いていたようで、映画のディスクもそれに合わせていくつも展開されていた。それを見たパパは最初から最後まで、映画の全八作品を全て購入してくれた。原作も買うかと聞かれたが翠は断った。買ってもらえるという事実は嬉しかったがあまりにたくさん買ってもらうのは気持ち的に納得がいかなかったか。申し訳ないという気持ちがあったのだ。

 次に、テナントの一角にあるレストランで中華料理を食べた。食事中はパパが翠に学校生活のことを尋ね、翠は教室で起きた出来事やクラブ活動の話などをいつものように話した。話が途切れて気まずくなることが怖く翠はいつもより努めて明るく、詳しく学校生活のことを話した。パパは無表情だったが、きちんと相槌を打って話を聞いていた。翠はほっとした。話をすることに必死になってしまいこの時に食べていた小籠包の味はあまり記憶に残っていない。

 次に学校で必要な文房具を買ってもらった。鉛筆と定規、ノート。それからペンケースまで。ペンケースを買う事は断ったが、以前買ったのは二年前なのだからそろそろ新しくした方が良いと言われ緑と白のストライプ柄の小さめなペンケースを選び購入した。

 最後に服を買いに行った。ショッピングモールという場所は服を売っている店が多く、翠はパパと並んで歩きながらどの店に入れば良いものかと考えていたが途中、牧瀬愛とコラボしている小中学生向けブランドの店を見つけその店へと入った。そこで服を数着買い、その時点で翠の気持ちはかなり上向きだった。服を選んでいる最中、パパは翠に黙ってついていたが翠が服を手に取り悩む素振りを見せるとすぐにその服を選び取って店員へと手渡してくれた。パパが自分の買い物に付き合ってくれる事、嬉しくて堪らなかった。

 楽しかった。今まではパパにどこかへ連れて行ってもらえる事もほぼ無いに等しく、パパの言いつけで葛がたまに電車で動物園や科学館のような施設に連れだしてくれてはいたが、翠はそれでもどこか寂しい気持ちを感じていた。翠の中で葛は家族ではなくあくまで家政婦だ。本当はパパに連れて行ってほしいと思っていた。それが実現したのだからこんなにも嬉しいことはなかった。

このままずっとこんな風に翠の理想とする親子関係を続けていけないかと――帰りの車内でずっと考えていた。
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