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動き出した未来
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その日はママとパパの結婚記念日だった。
当たり前のようにママとパパは二人で出かけて行って、わたしは家にひとりきり。
最後にやらなければならないことがあった。わたしはクローゼットの奥の奥に隠していた荷物でいっぱいの大きなリュックを引っ張り出して、それから落ち着かない心地でベッドに腰掛けてスマホを開く。
『今までありがとう。渡瀬くんが大学を卒業しても時々一緒に遊ぶことができて楽しかったです。前から話していたようにわたしは全部を捨てて彼と遠くへ行きます。行先は伝えられないしもう二度と会うことはないと思う。だけど、どうかお元気で。本当に今までありがとう。もしも彼と知り合っていなければわたしは渡瀬くんとこの先も一緒にいたかもしれない。でもやっぱりわたしは彼と行くよ、ばいばい。ありがとう』
そんな文章を打っていると不思議と涙が溢れてきた。そう、とーまお兄さんと出会っていなければわたしは渡瀬くんとどうなっていたのかな?
だめだ、こんな時に不安定になってる……でもいいのかな。今夜でわたしは全てを捨てるから。
スマホの電源を完全に切ってからわたしはスマホを手にキッチンへ向かった。
適当なボウルに水を溜めて、それからそこにスマホを沈めた。どのくらい浸していれば壊れるかな? そう思いながらぼぅっとそれを眺めていた。でも多分、ほんの二、三分くらい。スマホを水の中から取り出して電源ボタンを長押ししてみる。電源は入らない。これだけだと不安だから次いで包丁を取り出した。
振りかぶって、突き刺す。
嫌な音がしてスマホの液晶が割れた。
絶対にデータを復元できないように完璧に壊した。割れたパーツを振るい落としてから部屋に戻ろうとリビングを通る。
いっそ、家じゅうをぐちゃぐちゃにしていこうかな? なんて考えが浮かび上がる。だけどそれじゃあ大ごとになりそうだ。よくない。
二十一時に空港で待ち合せ。そろそろ家を出なくては。
部屋に戻ってリュックをせおった。予め用意しておいた失踪宣告書を自室の机の上にわかりやすいよう置いた。
家を一歩出て振り返る。小さなうさぎちゃんとはここでお別れで、これからはみゃうがこの先へ進む。今までママにされたことやパパに感じていた違和感、それらに対して復讐をする権利は十分にある。家をぐちゃぐちゃにすることはやめた。
だけど、少しぐらいなら。
わたしは家の中に戻って物置の中からバケツを取り出した。それに水をたっぷりいれて、よろよろと廊下を進む。ママとパパの寝室に入った。ここへ入ったのはほとんど初めてだ。そしてわたしは一旦バケツを置くとタンスを開けてママとパパの服を全部抱えてベッドの上に放り投げる。ついでにママのドレッサーの上にある化粧品も。パパが趣味で集めている高価なカメラたちも。
「ああああああああああああああああ!」
そんな絶叫と共にバケツの中の水をベッドにぶちまけた。わたしの頭の中ではこの水はガソリンだ。ガソリンをママとパパの寝室にまいたわたしはママがこっそりポーチに隠していた煙草の箱の中からライターを取り出して、このガソリンまみれの部屋に火をつける。そんな妄想。
ぜんぶなくなっちゃえ。
そうして逃げるように家を飛び出した。空港行きのバスに乗らなくちゃ。途中にあったコンビニのゴミ箱にスマホの残骸を捨てる。
もうこれで誰もわたしを追いかけてこられない。
早く、とーまお兄さんのところへ行かなくちゃ。
当たり前のようにママとパパは二人で出かけて行って、わたしは家にひとりきり。
最後にやらなければならないことがあった。わたしはクローゼットの奥の奥に隠していた荷物でいっぱいの大きなリュックを引っ張り出して、それから落ち着かない心地でベッドに腰掛けてスマホを開く。
『今までありがとう。渡瀬くんが大学を卒業しても時々一緒に遊ぶことができて楽しかったです。前から話していたようにわたしは全部を捨てて彼と遠くへ行きます。行先は伝えられないしもう二度と会うことはないと思う。だけど、どうかお元気で。本当に今までありがとう。もしも彼と知り合っていなければわたしは渡瀬くんとこの先も一緒にいたかもしれない。でもやっぱりわたしは彼と行くよ、ばいばい。ありがとう』
そんな文章を打っていると不思議と涙が溢れてきた。そう、とーまお兄さんと出会っていなければわたしは渡瀬くんとどうなっていたのかな?
だめだ、こんな時に不安定になってる……でもいいのかな。今夜でわたしは全てを捨てるから。
スマホの電源を完全に切ってからわたしはスマホを手にキッチンへ向かった。
適当なボウルに水を溜めて、それからそこにスマホを沈めた。どのくらい浸していれば壊れるかな? そう思いながらぼぅっとそれを眺めていた。でも多分、ほんの二、三分くらい。スマホを水の中から取り出して電源ボタンを長押ししてみる。電源は入らない。これだけだと不安だから次いで包丁を取り出した。
振りかぶって、突き刺す。
嫌な音がしてスマホの液晶が割れた。
絶対にデータを復元できないように完璧に壊した。割れたパーツを振るい落としてから部屋に戻ろうとリビングを通る。
いっそ、家じゅうをぐちゃぐちゃにしていこうかな? なんて考えが浮かび上がる。だけどそれじゃあ大ごとになりそうだ。よくない。
二十一時に空港で待ち合せ。そろそろ家を出なくては。
部屋に戻ってリュックをせおった。予め用意しておいた失踪宣告書を自室の机の上にわかりやすいよう置いた。
家を一歩出て振り返る。小さなうさぎちゃんとはここでお別れで、これからはみゃうがこの先へ進む。今までママにされたことやパパに感じていた違和感、それらに対して復讐をする権利は十分にある。家をぐちゃぐちゃにすることはやめた。
だけど、少しぐらいなら。
わたしは家の中に戻って物置の中からバケツを取り出した。それに水をたっぷりいれて、よろよろと廊下を進む。ママとパパの寝室に入った。ここへ入ったのはほとんど初めてだ。そしてわたしは一旦バケツを置くとタンスを開けてママとパパの服を全部抱えてベッドの上に放り投げる。ついでにママのドレッサーの上にある化粧品も。パパが趣味で集めている高価なカメラたちも。
「ああああああああああああああああ!」
そんな絶叫と共にバケツの中の水をベッドにぶちまけた。わたしの頭の中ではこの水はガソリンだ。ガソリンをママとパパの寝室にまいたわたしはママがこっそりポーチに隠していた煙草の箱の中からライターを取り出して、このガソリンまみれの部屋に火をつける。そんな妄想。
ぜんぶなくなっちゃえ。
そうして逃げるように家を飛び出した。空港行きのバスに乗らなくちゃ。途中にあったコンビニのゴミ箱にスマホの残骸を捨てる。
もうこれで誰もわたしを追いかけてこられない。
早く、とーまお兄さんのところへ行かなくちゃ。
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