幸せだったのに

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第8話 妻の懐妊

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翌日、早々に産婦人科に行った。
医者から、妊娠していることを告げられた。最後の生理の日とか、聞かれていたが、僕も何となく心当たりがあるので、父親になると実感した。

「あなた」
まだ、全く面影も無いお腹を触りながら優香が、嬉しそうに僕を呼んだ。

数日後、気になる事があり、会社の帰りに産婦人科に寄った。事情を話し、胎児のDNA鑑定を依頼した。妻には、絶対に話さない事を約束して貰った。

一週間後、僕は一人で産婦人科を訪れた。
「九九.九九パーセントの確率でご主人の子供ではありません」

やはりという感は、あった。鑑定書類を貰い、家に戻った。

あれ以来、妻は、人が変わった様に、良き妻を演じている。

「ただいま」
「お帰りなさい。あなた。食事の用意が出来ています」

僕は、部屋に行って、着替えた後、リビングでスマホと産婦人科から貰った書類を手に妻を呼んだ。

「優香、話がある」
「はい」
「そこに座ってくれ」
僕の顔を見て、怪訝そうな顔をしながら座った。
「どうしたんですか」
「この資料を見てくれ。胎児のDNA鑑定だ」
「DNA鑑定」

私は、始め何のことか分からずに、その書類を手に取ると、目を見張った。
夫と胎児のDNAは、九九.九九パーセントで不一致と書かれていた。

「嘘です。嘘です。この子は、和樹の子供です。間違いありません。この鑑定が間違いです」
資料を手に握り締めながら、叫んだ。


彼は、冷たい目で私を見ると
「本当にそう言えるのか」
「言えます。絶対に言えます」

与野君との情事の事は、証拠はない。強気で言った。

「では、これはなんだ」
スマホの動画を私の目の前に出した。そこには、三か月前、与野君とシティホテルから嬉しそうな顔をして出て来る私が映っていた。
 
 まさに血が引くような思いだった。
「これは……」

「時期的にもぴったりだな」
確かにあの頃、与野君は、付けない事が多かった。私も大丈夫だろうと甘く見ていた。

「ここ、数か月間の優香の行動を見ていた。言い訳はあるか」

私は、夫の目が、まるで汚物でも見る様な目に変わって行ったのが分かった。

その目を見られずに、目を逸らし、下を向いて、カーペットを涙で濡らした。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」


妻は、顔をリビングのカーペットに埋めて泣き始めた。震えながらずっと泣いていた。僕はそれが終わるまでずっと待っていた。どの位時間が経ったのか分からない。

 涙が止まったのか、顔を上げて僕の顔を見る。怯えながら下を向いた。

「優香、泣いていては、何も分からない。いつからなんだ。何故なんだ。教えてくれないか」

顔を上げると静かに話し始めた。
「ごめんなさい。ごめんなさい」

妻は、話し始めた。大学時代の知り合いに偶然声を掛けられた事。昼食を何回か一緒にした事。会社の命令で行った意見交換会の後で、犯されたこと。

僕が出張を良い事に遊んだ事等、その後も彼との関係に溺れてしまったこと等、聞くに堪えない事を話した。

言葉が出なかった。ただ、これだけは聞いた。

「優香、僕に何の不満があった」

首を一生懸命横に振りながら
「何もありません」

「……では、なぜ」

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。・・」
ただそれしか言わなかった。


夫にばれてしまった。バレるはずがなかったのに。なぜ。
この時、私は、自分の不徳がなぜ知られたかしか、考えていなかった。直ぐに夫が家に戻り一緒に元の様に生活できると思っていたから。

 その日、夫は帰ってこなかった。翌日も、そして土曜も日曜も。私は、焦りを感じていた。ただの遊び。こんなこと誰だってしている。
だから私もちょっとしただけ。夫だって笑って許してくれると思っていた。ほんのちょっと怒られて。

 なぜ、帰ってこないの。和樹。

それから、更に数日たって、一通の郵便が届いた。中に有ったのは、彼からの離婚届だった。

 そんな。ちょっと遊んだだけなのに。急いで与野君に電話した。何度かけても出ない。十回を超えた頃、やっと出た。でもいきなり、

「優香、迷惑なんだよ。人妻だから楽しんでいたのに。僕は、結婚するんだ。だから、優香との遊びは終わりだ。もう連絡しないでくれ」

いきなり切られた。その後、連絡しても通話拒否された。

ごめんなさい。ごめんなさい。貴方。こんな事には。
何も考えられなかった。

うっ、急にお腹が痛くなった。強い痛みだ。急いでトイレに行った。

もの凄い重さが、お腹に来た。ゆっくりと降りて。えっ、お尻からではなかった。
「うーっ、うっ」

便器の中に出て来たものを見て、体が震えた。真っ赤な小さな物体が有った。
「そんな」

その後も見た事のないようなものがいっぱい出て来た。そのまま座って我慢していると、痛みがゆっくりと消えて行く。

物体を綺麗に救い上げた。涙が止めどもなく流れ出て来た。
「ごめんなさい。ごめんなさい。私が・・・」

ダイニングに行って、綺麗な箱を用意した。小さな箱。中に花瓶に入っていた花を入れてその上にそっと置いた。箱を蓋して……。
 涙が止まらなかった。

下半身がものすごく重い、段々意識が遠のいて行った。


―――――

火遊びが過ぎた挙句、捨てられ、そして・……。やっぱりこういうのだめですよね。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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