家族から苛められていた私が、大会の賞品に選ばれてしまった結果

しきど

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 「領地内で剣術大会を開催しようと思う。優勝者には、ルミーナを妻に与えよう」

 思わず、口に運びかけていたカブのスープをこぼしそうになってしまいます。

 私は義父を穴の開くほど見つめました。

 義父──ゲイル・ワードバーン男爵は、よく軽口を叩かれる方です。こうして家族が集まるディナーではなおの事、度々冗談か本気かも分からないような事をおっしゃって、空気を悪くする事もしばしば。

 クスクスと、隣から笑い声が聞こえました。義姉のシンシアです。

 「いいのじゃない? どうせこんな粗暴な子、ロクな婚約相手も見つからないでしょうし」

 「一人の女を巡って男達が争う……この上ないスペクタクルだわね」

 義理の母は無表情ですが、言葉面は全く否定していていません。

 「そうだろう、面白そうだろう!」

 義父は上機嫌でワインを口へと運びます。

 「じょ、冗談じゃありません!」

 私はたまらずテーブルを叩いて飛び上がりました。

 「どうして私が優勝賞品なんですか!?」

 「それは勿論、大会を盛り上げる為だ。男爵令嬢を妻に娶れるとあらば、腕に覚えのあるものがこぞって集まるだろう」

 と、しがない田舎領地の主に過ぎない義父。資金難に喘いでいるからこそ儲け話にすがりたいという魂胆は透けて見えます。

 「領土内で参加者を募ったって、ならず者のような方しか集まらないでしょう!? そんな方と結婚だなんて、私嫌です!」

 「嫁に行き遅れるよりいいんじゃなくて?」

 私より三つ年上で、既に行き遅れている感のある義姉が笑っております。大体私にロクな話が回ってこないのも、目の上のたんこぶである彼女が尽くお付き合いを失敗なさっている事にも原因があるのです。

 「しかし大々的にルミーナを賞品にすると触れ込むのは、些か問題もありますね」

 義母の指摘に義父は、ふうむと考え込みます。

 「そうだな、賞品の事は参加見込みのある者にのみ知らせる事としよう。参加者さえ集まれば、後はどうとでもなる!」

 「名案だわ、お父様!」

 手を合わせてはしゃぐ義姉。

 これが家族の会話なのですから、頭を抱えてしまいます。

 いや、そこまでショックではありません。この家に養子として迎えられた自分が、家族から良く思われていない事などずっと承知しておりましたから。

 私ももう今年で十七。嫁入りに何かとお金のかかる歳です。剣術大会は、疎ましい私を家から追い出す事が出来て、お金も儲けられる。正しく一石二鳥の良策なのでしょう。彼等にとっては。

 「おや、どうしたルミーナ?」

 もうこれ以上は何を言っても無駄です。私は耐えかねて、食事の最中ではありますが席を立ちました。

 「放っておきなさい。何を言ったって聞かない子よ」

 ケラケラと下品な笑い声を背に受けながら、私は勢い良く扉を閉めてやりました。

 人権も何も、あったものではありません。

 ──くやしい。

 苛立ちを隠そうともせず、 私はずんずんと倉庫への道を歩きました。

 「お嬢様? っ──」

 途中ですれ違った従者フットマンが、そんな私の剣幕を見て思わず後ずさってしまいます。

 視界には入っていましたが、私は爆発しそうな感情を抑えるのに精一杯で、彼の事に構っている余裕などありません。

 いいでしょう。ああよろしいのでしょうとも。

 家族がそんな手段に出るというのなら、私にだって考えというものが御座います。

 ──久々に立ち入った屋敷の倉庫は埃っぽく、全く清掃が行き届いちゃいませんでした。

 私は、我ながら呆れるほど荒ぶりながらゴミの山から目的のものを探します。

 「──あったわ」

 見つけたのは、古ぼけた甲冑と剣。

 昔義父が戦場で使っていたものと聞きます。サイズはまぁ、当たり前にブカブカではありますけれども、鍛冶屋にいけば簡単に改造出来るでしょう。

 伊達にこの家で虐げられ続けてきたわけでは御座いません。先生もつけて貰えず、知識も教養も並の令嬢以下という自覚はありますが、その分子供の頃から野を駆け回ってきました。

 体力には自信があります。

 顔さえ隠れる兜さえ着込めば、誰も私の事は分かりません。

 これを身につけ、私自身が大会に参加して、優勝する──そうすれば全部解決。

 私に与えられた運命は、私の腕で切り開いてみせるのです。
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