物語は突然に

かなめ

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今、ここにいる疑問

召喚?

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今が夜だと言う事を考えても、もうあまり時間がない。眼鏡さんも夜には帰ると言ってたし。
どうする?
頭の中でその言葉だけがグルグルと駆け巡る。答えを出そうにも情報が少な過ぎる。自分に出来る事は何?しなければいけない事は何?どうするのが一番正解なの?
落ち着け。何もまだ決まってない。
よく、思い返してみよう。眼鏡さんに不審な点は無かったか?それに関しては…正体不明の私に対して親切すぎるのではないかってところか。それは確かに怪しいが。でも眼鏡さんは最初、私を疑っていたようにも思う。妖精だのエルフだの言っていたあの時の眼鏡さんの状態を考えれば、今の親切な行動はどちらかと言うと私の正体を探る為なのではないかと思う。………うん。むしろコレな感じだ。大体、犯人と言うか、召喚した本人であったなら、こんなに長時間放置するような事はしないと思う。するなら外は危険だからとか何とか言って逃げられないようにガッチリ閉じ込めたりしそうだし。魔法を使っているのを知っていて、逃げられないような措置を取らないのはそれが目的ではないからだ。と思う。たぶん。普通に考えればそうよね。違うって事もあるかな?でも眼鏡さんの行動は色々とおかしいもん。犯人とは思えないんだよね…。

コンコン

「ひぃっ!」
思わずカーテンに隠れる。しまったぁぁっ!つい隠れちゃった。どうしよう。そのままカチャリとドアが開く音が聞こえて直ぐに

「ただいま帰りました。お腹は…って、おや?」

眼鏡さんの声。そして何かを擦るような音がして、その後ポスポスと何かを叩く音が聞こえてくる。

「…あの~…アイリンさん?済みません、アイリンさん?」

何処か申し訳なさそうな声の眼鏡さん。しかし!どうしよう?何もなかったように「ばあっ」とか言って出ていく?このまま隠れて様子を見る?て言うか!どうして隠れちゃったかなぁ、私!
出ていくべきか悩んでいると、眼鏡さんが小声で
「眠っちゃったのかなぁ…?」
と呟いているのが聞こえた。
あれ?これって私があの箱部屋の中で寝てると思われてる…。隙間からソッと部屋の中を窺い見てみると、何やらペンを持って紙に何かを書こうとしている眼鏡さんがいる。そのままペンを走らせて、それを箱部屋の前に置き、そして机の上の引き出しから何かを取り出して、その横に置いたのが見えた。何だろう、アレ。眼鏡さんはそのまま部屋を出て行ってしまった。少し待って、ソロリとカーテンから出る。眼鏡さんが戻ってくる気配はない。何だろう?さっきのソレらを確認しに行く。紙には「夕飯にしようと思っていますので、これを読んだら、横の鐘に話しかけてください」と書かれていた。え?横のコレって鐘…?背の低いロウソクみたいな形のコレが鐘…?しかもコレに話しかけるとか。何ソレ。それは兎も角、今の眼鏡さんの反応からやっぱり召喚の犯人ではないと思った。わざわざ召喚してまで手に入れたモノが直ぐには見当たらないような状態になったら、普通は探す。仮に箱部屋にいるのかもと思ったところで、最低でも姿を確認しなければ安心できないと思うから。だって私だったら確認する。しちゃうと思う。気になるのは、どうしてそんなに親切なのか、だけど…これはもう本人に聞いちゃうのが一番良いかも。少なくとも、眼鏡さんは私をどうこうしようとは思ってないっぽいし。少なくとも。それを聞いてみてから…その返事次第で「召喚」の事も話してみよう。私に出来る事は少ない。そんな中で敵がいるとしたら。味方になってくれる人がほしい。…なってくれるかどうかは解らないけど。それでも出来る事はやっておかないと。気付かないフリしてる場合じゃない。覚悟を決めなきゃ。大丈夫。だってもう諦めないのは決めてあるんだから。

「で…、コレに話しかければ良いんだっけ?」


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