物語は突然に

かなめ

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種族を知ろう

人間(ニンゲン)

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取り敢えず、召喚云々の話も聞けたし。あと何か聞きたい事ってあったっけ?あ、ついでに魔法に関しても聞いちゃおうかなぁ。なんて考えていたら先を越された。
「あの、ニンゲン族に関して色々と質問してもよろしいでしょうか?」
何かまた目がキラキラしてるよ、ジリスさん。どうしよう。
「あ~…っと、えぇ…、まぁ、イイですけど…」
「よろしいですか?有り難うございます!」
何か期待されすぎてる気がビシバシするけど…ガッカリはさせないように気を付けよう…。
「えぇと…そうですね、先ずは…どんな所でどんな暮らしをしているのでしょう?妖精のように大樹の中で暮らしていたりするのですか?」
「へっ?大樹?いや…普通に、此処みたいに暮らしてますけど?」
「えっ!?」
「え?」
「普通…にですか?」
「はい。普通に」
「此処みたいに?」
「此処みたいに、です」
「えっ!?あの、此処のようにと言いますと…暮らしに必要なアレコレを売ったり買ったりの物流や通貨があって、石や木で人工的に作った家に住んだりですか?」
「そうですけど」
「えっ?あの、大変失礼かと思うのですが、その、その大きさで人工的に作った家に住んだりしてるんですか…?」
「してますけど」
「あのっ、物流や通貨もあるんですか…?」
「ありますよ?」
スッゴイ混乱した顔してる。まあ、そうだよね、サイズ的なモノを考えたら、家ってとか思うのかもしれないし、誰にも知られてないようなヤツらに物流とか通貨とか必要なのかよって思うんだろうね。
「あの…私達、人間はですね、多種多様な民族がいるんです」
「多種多様な民族?」
「例えば、私は人間の日本人って言う民族で、黄色人種って言う種類なんです」
「はぁ…」
「民族は…ちょっと数えきれないくらいいるので説明は省きますが、人種は黄色人種以外に白人種、黒人種がいます」
「…なるほど」
何かあまり納得はしてなさそうな。頭にハテナマーク飛ばしすぎて、ちょっと思考停止中な感じというか。大丈夫かな。
「ちなみに古代魔術言語日本語を使うのは私達、日本人だけです」
「えっ!!そうなのですか!?」
メッチャ驚いてる。そこまで驚かんでも。
「ほ、他の…えぇと民族?の方々はどんな言語を使っているのですか?」
「これまた色々とありすぎて把握出来ないくらいです」
「そんなに!?」
「はい。そんなに、です」
正にアングリって言い方がピッタリな顔してる…。小声で、あの、とかえぇと、とかやたらと呟いてるけど、言葉が出て来ないらしい。終いには
「す、済みません。あの、ちょっと。ちょっと、あの、頭の中を整理してもよろしいでしょうか…?」
って言いながら頭を抱えてしまった。
「どうぞ…」
間違いは言ってないと思うんだけど…そんなに悩ませてしまうとは思わなかった。どうしよう。
「あの…言語が違う民族ばかりでニンゲン族同士での意思疎通は出来るのでしょうか…?」
「出来ない人が殆どです」
「えっ?!」
「信仰とかもバラバラだから、よく諍いも起きます」
「えっ?!でも…でも、戦争はしないんですよね?法で決まってるんですよね?」
「日本人はそうです」
「えっ?!」
「それは日本人の法なので」
「え…っ?…まさか…法も民族ごとに違うんですか…?」
「違いますね」
「…っ、いや、いや、こ、細かい所の法は兎も角、大まかな法は一緒ですよね?」
「違います」
「え…え…そ、あの、それはその、ニンゲン族として成り立っているのでしょうか…?」
「まぁ、一応成り立ってます」
心の中で、たぶん、と付け加えておく。ジリスさんはもう何て言ったら良いのか解らないって感じだ。アレだな。こっちの世界では同じ種族間は主柱になる法に則って、それ以外にも…民族なのか、地域なのかでそれぞれ細々としたモノがあるって事かな。
「あの…、先程の〝戦争にはならない〟と言っていた事は、本当に大丈夫なのでしょうか…?」
そうきたか。ジリスさんがメッチャ心配そうな顔でこっちをみている。
「大丈夫です。戦争にはなりません」
世界が違いますから、とは言わないが。
「同じ人間として、とか何とかで他民族の事に口を出してくる民族もいるにはいますが、日本人の戦争しない法は他の民族にも知られているので問題ありません」
適当に話をしておく。嘘ではないから大丈夫!たぶんね!しかし、ジリスさんは半信半疑な感じだ。
「大丈夫です。絶対に戦争にはならないです」
と念を押しておく。様子を見ていると、少し迷ったような表情の後、深く息を吐いてから
「解りました。信じましょう」
と言った。まあ、理解出来ないって感じだし、半分、諦めの境地だったのかもしれないけど。実際、その可能性はゼロと言っても良いので、ぶっちゃけ心配しすぎだとも思う。ともあれ事情を知らないジリスさんからしたら簡単には頷けない事なんだろう。しかもお城に勤めてるって言ってたし、責任のある立場って大変なんだなと他人事のように思ったりして。
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