物語は突然に

かなめ

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日々早々

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「アイリンさん」
「ふひゃあいっ!」
考え事に集中しすぎててメッチャびっくりした!ビックリしすぎて変な返事になっちゃったよ。
「おかわり貰ってきましょうか?」
「ほえ?」
おかわりとは?
「いえ…お菓子、気に入ったのかと思いまして」
お菓子?あ、スコーンか。スコーン…?あ?!私ってば、いつの間にか一個まるっと食べちゃってた!え?!マジか、私。一個まるっとって…何処に入ったんだ…?人体の不思議ってヤツですか?!
「イイエ、結構デス…」
どんだけだよ、私ー!?
いやいや、アレよ、脳みそ使うと糖分欲しくなるっていうアレ!きっとそう!たぶん間違いない!そういう事にしておく!異論は認めない。よし。
て言うか。ジリスさん、お仕事してたのに、よくそんな事に気が付きますね。ビックリですよ。

コンコン

───!
これは…。
[ジリス様、いらっしゃいますか?]
誰か来た!これは試すにはナイスなタイミング!
[はい。どうぞ]

ガチャッ

[失礼致します]
今…今の会話。たぶん、ジリスさん、いやジリス様か?いるかどうかの確認か、もしくは入っていいかとうかの確認。それに対してジリスさんのはおそらく許可。更にその返答としてありがとうございますか、失礼しますとかそんな所…かな?よし、これを…

『原語変換』

コッソリと小さな声で唱える。どうだろう…?
「コレにもサインお願いイタします」
「はい。そちらにオイテいってくだサイ」
成功!!何か発音が微妙におかしいところがあるけど、ちゃんと日本語に聞こえる。よっしゃああ!思わずガッツポーズ…してるところを入ってきた人に見られた。目ぇ丸くしてるし。何よ。
ジロリと軽く睨むとサッと視線を逸らしてソソクサと出ていってしまった。しまった。もう少しこの魔法の効果を見たかったのに…。まぁ、いいか。
それよりも言語理解の魔法が使えたっていうのが大きい。これで今後が色々と便利になるはず。
魔法の発動には気付かれなかったらしく、ジリスさんは本当におかわり貰わなくて大丈夫ですかとか聞いてくる。いくら何でもそんなに食べません。まるっと一個食べちゃった後に言っても、その信憑性はないかもだけど。そのジリスさんが机のほうに戻る前にまたも扉がノックされる。

コンコン

「ジリス、イルカ」
「ハイ、どうぞ」
まだ魔法は発動中だったらしい。いつ切れるんだろうか。まぁ、今は別にいいや。部屋に入って来たのはウォードさんだった。私と目が合うと軽く手を上げて挨拶してくる。
「どうヤラ大丈夫みたイダナ」
私に笑顔を見せながらも、そのままジリスさんと会話を続けている。
「えぇ。最初ハ少し混乱していたヨウですが、すぐ落ち着いてクレました。それニ彼の事も心配してましたヨ」
「りおの事カ?」
彼?リオって誰?
「ナゼ、彼女がりおの心配ヲ?大丈夫だゾ?ちゃんとアノような事が二度とないヨウに、ガツンと言って聞かセタからな」
それはアレですか?もしかしての裏の方に呼び出してのゴラァッて感じのヤツですか?
「ア~…、それナンですが…」
ジリスさんが言い淀んでる。
「何だ?」
「誤解みたイですヨ?」
「誤解?」
「ハイ」
「何がだ?」
「彼女の話ニよると、彼女が驚いテ自ら落ちてしまったノだと言う事です…」
「えっ!?」
「彼が彼女に乱暴ヲして怪我を負わせた訳でハないという事です…」
「そうなのか!?」
「まぁ…彼女の話でハそういう事みたいです」
何故か申し訳なさそうな顔してるジリスさん。その横で微妙な顔してるウォードさん。
「あ~~…っと、そう、だなぁ…。後で……一応、謝っておこウ…」
心配してくれたっていうのに、自分のポカで済みません。ウォードさんは頭を掻きながら視線を逸らしてる。気不味いよね、本当に済みません。
「まぁ、しかしだ。怪我が彼女自身のせいであったとしてモ、怪我をしている者をあのように乱暴に掴み上げるのはどうかと思ウが」
それは私も同感です。思わず頷きそうになって止める。ヤバかった。そんなんしたらバレるやん。気を付けなきゃ。ていうか、ん?あれ?
「それは確かに。それに関しては注意すべきかと思います」
神官ともあろう者が…とか何とか。ジリスさんも怒るんだね。ウォードさんも頷きながら全くだとか何とか言い合ってる。仲良いのかな、この二人。いやそれよりも。二人の会話が違和感なく聴き取れるようになってきてる。原語変換に慣れてきたって事かな?
「ところで…」
ん?何だろう?
私のほうをチラリと見てまた笑顔を見せる。
「少し気になる事を耳にしたのだが」
「気になる事…ですか?」
「ああ」
私の頭を撫でる。
「ニンゲンに関しての情報は入ってきてない。が、外で魔物が活発化していてな。それが此処周辺だけでは無いらしい」
「それは…この周辺以外もという話は知りませんでしたが…それが何か?」
「噂ではという者がいるらしい」
「──古代竜が、ですか?!」
「ああ」
「有り得ません…」
「ジリス。表情を抑えろ。彼女が不安がるだろう」
そう言われて、ジリスさんが見た。そして何事も無かったかのようにいつもの笑顔をこちらに向けたままウォードさんと会話を続ける。
「彼女…古代魔術言語を使うと言っていただろう?」
「えぇ…って、まさか」
「勘違いするなよ?彼女が何かをしていると言ってる訳じゃない。その逆だ。彼女が巻き込まれたのが、この古代竜の件に関係している可能性もあるんじゃないかって事だ」
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