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神とは
神様
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少しの間、顎に手をやって考えていたジリスさんだったが、どうやら話してくれるらしい。
「伝説と言うか…お伽話と言うか…まぁ、そんな話ではあるのですが」
そんな前置きの後、話は始まる──
昔、自分達の神であるオノタカムイ神がまだ神では無かった頃、世界は混沌としていて至る所で覇権をめぐる争いが起きていた。多くの種族がいる中で、最も激しい侵攻を見せていたのが魔族。その頃の魔族は自らの意思を全て魔王に捧げていて、自身の死すら恐れず只々、残虐の限りを尽くしていた。それがもう魔族以外の全ての種族の存在を許さぬが如くというようなものであった為、他種族の代表達は争っている場合ではないと一堂に会し、どうするべきかを話し合った。
しかし魔族は強靭な身体に強大な魔力をも持っていたので、対抗する術を見つけられぬまま、ただ時が経つばかり。このままでは被害が大きくなるばかりだと悩んだ末、ラスウル族の者がその集まりに参加していなかった古代竜に知恵を借りに行くと告げ、向かったところ、そこにオノタカムイが居たのだと言う。
オノタカムイがその時に現存していたどの種族にも属しておらず、またこの世界の最高峰の知恵者である古代竜に新たな知恵を授けた者だと言う話を聞き、それを好機と読んだラスウル族の者がオノタカムイと古代竜の両方に魔族を何とかしてほしいと願ったところ、オノタカムイ自らが魔族の侵攻を止めてやっても良いと言ったらしい。そしてそれが成った暁には1つだけ代償を払うように告げられ、ラスウル族の者はそれを了承したのだと。
そしてオノタカムイは事実、魔族の侵攻を止め、その証拠として魔族の代表である魔王を連れて、他種族の代表が集まるその場所に来たのだと言う。
そして魔族を含む全ての種族に、代償として1つの言葉を教えとして遵守するように告げた。
全ての者を個として認め、
その分をおかす事なかれ
これにより全ての戦争が終わったのだが、問題となったのは魔族を退けた方法。魔王は齢400を超えた者であったと言う。オノタカムイは過去に数度、その魔王に逢いに行っていたらしい。何と10歳、20歳、30歳、50歳、100歳、150歳、200歳、300歳の計8回。そして今回9回目にして『つまらぬ事は止めろ。次は無い。意味が解らぬと言うなら、それこそ今、お前の命は終わる事になる』と告げられ、事実一度死んだのだと言う。そして死を量るメイフの神の前に立たされ、先の教えを遵守する事を誓約とし、蘇生されたのだと。
この時に魔王の前に現れたオノタカムイの姿に変化が無かった為、またこの後も登場したと言われる伝承、全てにおいても変化が無かった為に、時を超える方法を持っているのでは、と言われる事になったのです。
「冥府の神にオノタカムイ…?」
「えぇ。まぁ、実際に時空魔法を使用していたところを見たというような事は無かったらしいですが」
それは本当に時空魔法なんだろうか。それにジリスさんはと言うと、何と言うかねぇ、自分達の神の事なのですが、何と言うか神らしくないと言いますか…などとまだ言葉を濁している。
「オノタカムイって…」
「…遵守の言葉も本当は
〝戦争なんざ、やろうって言い出した奴等が殴り合いでもしてりゃあいいんだ。関係の無い下っ端なんぞ巻き込んでるんじゃねぇよ〟
とかだったらしいですし…」
スゴイ神様もいたもんだなぁ。
「何ていうか、史実として書かれた歴史書のほうでは、かなりクセのある人物に記されていまして…」
「歴史書のほうが、ですか?」
「えぇ…まぁ…」
「それ、本当に神様なんですか?」
「あ、でも!口は悪いですけど…、いや態度もアレですけど…、その行動方針というか、起こした奇跡は素晴らしいものなのですよ?」
本当なのですよと必死で言い募るジリスさん。まぁ、自分の信仰している神様だしね…そうでなきゃ、何故信仰してるんだって話だし。
「そ、そうだ!古代魔術言語!これもオノタカムイによって伝えられた言葉なのですよ!?古代竜に授けた知恵と言うのが、これだとされているのです」
その伝えられた経緯は賭け事からだったらしいですがとか何とか言ってるが、問題はそこじゃない。古代魔術言語を伝えたのがオノタカムイだって?!
「ちょっ、ちょっと待ってください!それ本当ですか?!」
「ええ。そう伝えられてます」
「え…ちょっ、待って待って。待ってください。そのオノタカムイってどんな人、いや神様?なんですか?」
「どんなと言われましても…」
う~んと唸りつつ考え込むジリスさん。
「元々は謎多き人物でして、最終的に私達の先祖がオノタカムイを神と崇める事を許してほしいと懇願した結果、神となった人なのです」
「謎多き?」
「はい。彼はこの世界に存在した全ての種族と異なる者で、またその知識は万物に通ずと言われた程です。彼自身は自分はメイフの神の使者であると言っていたと伝えられています」
何か引っかかる。冥府ってアレだよね、死んだ人がいく国。で、そこの神様って事は閻魔様とかそういう…?マジか。閻魔様とか本当にいるの?!いや、それよりその閻魔様の使者。何かいたよね、日本人でそんな感じの人が。誰だっけ?オノタカムイ…小野田かな?……そんなんだったっけ?何か微妙に違う気がする。何だったっけ?!安倍晴明?違うな。それは陰陽師やん。あーー、思い出せん!オノタカムイ…オノタカムイ…カムイか!って、それ名前じゃなくね?!誰だよ、オノタカムイーー!
「伝説と言うか…お伽話と言うか…まぁ、そんな話ではあるのですが」
そんな前置きの後、話は始まる──
昔、自分達の神であるオノタカムイ神がまだ神では無かった頃、世界は混沌としていて至る所で覇権をめぐる争いが起きていた。多くの種族がいる中で、最も激しい侵攻を見せていたのが魔族。その頃の魔族は自らの意思を全て魔王に捧げていて、自身の死すら恐れず只々、残虐の限りを尽くしていた。それがもう魔族以外の全ての種族の存在を許さぬが如くというようなものであった為、他種族の代表達は争っている場合ではないと一堂に会し、どうするべきかを話し合った。
しかし魔族は強靭な身体に強大な魔力をも持っていたので、対抗する術を見つけられぬまま、ただ時が経つばかり。このままでは被害が大きくなるばかりだと悩んだ末、ラスウル族の者がその集まりに参加していなかった古代竜に知恵を借りに行くと告げ、向かったところ、そこにオノタカムイが居たのだと言う。
オノタカムイがその時に現存していたどの種族にも属しておらず、またこの世界の最高峰の知恵者である古代竜に新たな知恵を授けた者だと言う話を聞き、それを好機と読んだラスウル族の者がオノタカムイと古代竜の両方に魔族を何とかしてほしいと願ったところ、オノタカムイ自らが魔族の侵攻を止めてやっても良いと言ったらしい。そしてそれが成った暁には1つだけ代償を払うように告げられ、ラスウル族の者はそれを了承したのだと。
そしてオノタカムイは事実、魔族の侵攻を止め、その証拠として魔族の代表である魔王を連れて、他種族の代表が集まるその場所に来たのだと言う。
そして魔族を含む全ての種族に、代償として1つの言葉を教えとして遵守するように告げた。
全ての者を個として認め、
その分をおかす事なかれ
これにより全ての戦争が終わったのだが、問題となったのは魔族を退けた方法。魔王は齢400を超えた者であったと言う。オノタカムイは過去に数度、その魔王に逢いに行っていたらしい。何と10歳、20歳、30歳、50歳、100歳、150歳、200歳、300歳の計8回。そして今回9回目にして『つまらぬ事は止めろ。次は無い。意味が解らぬと言うなら、それこそ今、お前の命は終わる事になる』と告げられ、事実一度死んだのだと言う。そして死を量るメイフの神の前に立たされ、先の教えを遵守する事を誓約とし、蘇生されたのだと。
この時に魔王の前に現れたオノタカムイの姿に変化が無かった為、またこの後も登場したと言われる伝承、全てにおいても変化が無かった為に、時を超える方法を持っているのでは、と言われる事になったのです。
「冥府の神にオノタカムイ…?」
「えぇ。まぁ、実際に時空魔法を使用していたところを見たというような事は無かったらしいですが」
それは本当に時空魔法なんだろうか。それにジリスさんはと言うと、何と言うかねぇ、自分達の神の事なのですが、何と言うか神らしくないと言いますか…などとまだ言葉を濁している。
「オノタカムイって…」
「…遵守の言葉も本当は
〝戦争なんざ、やろうって言い出した奴等が殴り合いでもしてりゃあいいんだ。関係の無い下っ端なんぞ巻き込んでるんじゃねぇよ〟
とかだったらしいですし…」
スゴイ神様もいたもんだなぁ。
「何ていうか、史実として書かれた歴史書のほうでは、かなりクセのある人物に記されていまして…」
「歴史書のほうが、ですか?」
「えぇ…まぁ…」
「それ、本当に神様なんですか?」
「あ、でも!口は悪いですけど…、いや態度もアレですけど…、その行動方針というか、起こした奇跡は素晴らしいものなのですよ?」
本当なのですよと必死で言い募るジリスさん。まぁ、自分の信仰している神様だしね…そうでなきゃ、何故信仰してるんだって話だし。
「そ、そうだ!古代魔術言語!これもオノタカムイによって伝えられた言葉なのですよ!?古代竜に授けた知恵と言うのが、これだとされているのです」
その伝えられた経緯は賭け事からだったらしいですがとか何とか言ってるが、問題はそこじゃない。古代魔術言語を伝えたのがオノタカムイだって?!
「ちょっ、ちょっと待ってください!それ本当ですか?!」
「ええ。そう伝えられてます」
「え…ちょっ、待って待って。待ってください。そのオノタカムイってどんな人、いや神様?なんですか?」
「どんなと言われましても…」
う~んと唸りつつ考え込むジリスさん。
「元々は謎多き人物でして、最終的に私達の先祖がオノタカムイを神と崇める事を許してほしいと懇願した結果、神となった人なのです」
「謎多き?」
「はい。彼はこの世界に存在した全ての種族と異なる者で、またその知識は万物に通ずと言われた程です。彼自身は自分はメイフの神の使者であると言っていたと伝えられています」
何か引っかかる。冥府ってアレだよね、死んだ人がいく国。で、そこの神様って事は閻魔様とかそういう…?マジか。閻魔様とか本当にいるの?!いや、それよりその閻魔様の使者。何かいたよね、日本人でそんな感じの人が。誰だっけ?オノタカムイ…小野田かな?……そんなんだったっけ?何か微妙に違う気がする。何だったっけ?!安倍晴明?違うな。それは陰陽師やん。あーー、思い出せん!オノタカムイ…オノタカムイ…カムイか!って、それ名前じゃなくね?!誰だよ、オノタカムイーー!
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