物語は突然に

かなめ

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神とは

神様?

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閻魔様に仕えてた日本人。いたよね、そんな人。名前が思い出せないけど。誰だっけ?オノタカムイ、オノタカムイ、絶対間違ってるよね、これ。何処が間違ってるのか解らないところが困る。でもこれで古代魔術言語日本語の謎は解けた。昔の──オノタカムイさん?が日本語を教えたって事で──ってそしたら、何でこの世界に来てたんだって話だよ!いや、それ以前に。その人って平安時代とかそんな感じの人じゃなかったっけ?平安時代って確か…700…700…泣くよ鶯、平安京?だったっけ?そんな大昔の人がこの世界に来てたの?
「アイリンさん?どうかしましたか?」
「えっ!あ…えと、何でもないです…」
何でもないって言ったのに。
「もしかして…オノタカムイはニンゲン族の……?」
何、この人ー!?何でバレたし!?いや、まだバレた訳では無い、かも!
「い、いや、私ももしかしてとは思いましたけど、オノタカムイなんて名前の人は知らないし、たぶん勘違い、いや、気のせいじゃないかな~って…」
「本当に?!」
「え、たぶん……」
あ、ダメだ。メッチャ疑ってる。信じてないと言うより信じられないって顔してる。あ~、顎に手をやって考え込み始めた。あかんヤツだ。絶対、何か盛大な誤解が生じてるヤツだ、これ。
どうしよう?どうしたらイイの、これ?
誰だか知らんが、何してくれちゃってるんだ、オノタカムイめ!冥府の神の使者とか言っちゃってる場合か!…でも本当にそうだったらゴメンね。呪わないでね!
そんな事をツラツラと頭の中で考えていたら
「あの…」
何かメッチャ控え目な雰囲気で話しかけてくるジリスさん。どうしちゃったの。
「わ、私達は、私達イスタル族は、貴女達ニンゲン族に対して何かしようなどとは思っていません。本当に。絶対に、です」
「あ~……はい……」
盛大な誤解が良くない想像をお友達にして脳内に飛来したらしい。まぁ、(誰だか解らんけど)オノタカムイさんっていう、神様扱いされてるソレと同種族かもしれない私(達?)に喧嘩売る気なんて無いよって言っときたいんだろうな…。
まぁ、100パーどうもならんと思うけど。こちとら普通の人間ですから。
「えと…と、取り敢えず、そのオノタカムイが時空魔法を使ってたんじゃないかって事でイイですか?」
「えっ、あ、はい。恐らく、そうではないかと言う話です。歴史書でも千数百年ほど存在していたと言われていますし…。あの…ところでニンゲン族の寿命はどれくらいなのでしょう?」
「70~80歳くらいです」
やや被せ気味に即答してみた。そのオノタカムイとやらと一緒にされても困るし。と思ったんだけどメッチャ考え込んでる…。うーん…これ絶対、オノタカムイはニンゲンだとか思ってるよね。どうしよう。想像通りであるなら、確かに人間だろうけど、確実って訳じゃないし、もしかしたら全然別の誰かかもしれないし。そうだよ、人間は千数百年も生きないし、きっと別人。似た他人。そうに違いない。
でも…ジリスさんの様子から考えると誤魔かせそうにないなぁ…。どうしよう。そんな神様扱いされちゃってるのと一緒とか思われても困るんですけど。どうしたらイイもんだろうか。
───あれ?
まさかとは思うけど……とか…?同じニンゲンなら何でもイイみたいな?
いや。いや、まさかね。
だってジリスさん達は人間を知らなかった。そんな状態で召喚なんて出来る訳ない。
…ん?
じゃあオノタカムイはどうやって此処に来た?いや。此処に来た方法は兎も角、オノタカムイの存在は此処の世界の人にも知られている。人間という種族は知らなくても、そのオノタカムイと同種族の者は皆同じような能力ちからをもっていると考えたら?
いや。古代竜。さっき話題に出てた古代竜は少なくともオノタカムイと交流があった。日本語を教わるくらいには。人間って生き物を全く誰も知らない訳じゃないって事か。問題はどんな生き物だと思ってるのかだ。
オノタカムイは此処で何をやったのか。
神と呼ばれるような何か。
ふと視線を巡らせると、ジリスさんと目が合った。ジッと此方を見ている。明らかに
暢気にも「変なの」って、そう思った。だって私自身は何も出来ない普通の娘で、神様って呼ばれてるオノタカムイが何をしたのかは知らないけど、それが事実人間のあの…過去の誰だかだったとしても、私自身は〝人間〟という種族が同じなだけの唯の小娘なのに。
知らないって事はなんて怖い事なのか。
私も、ジリスさんも、恐らく私を召喚した呼んだ誰かも、お互いを知らなすぎなのだ。
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