物語は突然に

かなめ

文字の大きさ
上 下
49 / 77
神とは

オノタカムイの書4

しおりを挟む
ペラペラとめくり直す。
これ、結構分厚いんだよねぇ…。読み直すには時間が無さすぎる。何かヒントみたいの無いかなぁ?
「あの…」
「ひょぇわおぅっ!?」
ジリスさん!?い、いつの間に…?
「あっと、済みません。あの、お茶…淹れたのですが如何しますか?」
「あ、あ、はい、頂きます…」
本に夢中になってて、ジリスさんが戻ってきてた事に気付かなかった…。ビックリしたぁ…。ビックリしすぎて変な声が出ちゃったよ、もう。
お茶を受け取って一口飲む。
「はぁ……」
「あの、如何でしたか?オノタカムイの書は?」
「ほぇふぁあいっ!?」
「え?」
ちょっ!そんな丁度一息ついて気が抜けた時に、そんなそんなオノタカムイとか言ってくるから、また変な声がぁあ!
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です…」
またお茶を一口飲む。はぁ、もう、ビックリした…。
「はぁぁぁあ………」
思いっきり溜息ついちゃった。いかんいかん。
「あの、大丈夫ですか?結構、厚い本ですし…、疲れちゃいましたか?」
「あ~…いや、まぁ…、疲れたと言えば疲れましたけど…」
思わず言葉を濁してしまう。さて、どう説明したものか…。
「アイリンさんでも読むのは難しかったですか?」
「あ~、そうですね、難しいっちゃ、難しい…」
ん?
「そうなのですね…。成る程、道理で。誰も読めないのはやはり大変に難しい書だからなのですね」
おや?
これはもしかして、上手く誤魔化せる?
「それで、どんな内容が書かれていたのかは解ったのですか?」
「あ~……、それが……」
ジリスさんの目がめっちゃキラキラしてる…。本をチラリと見る。う~ん…、どうする?
「その…、正直に言うと解らない…ですかね。何て言うか、これだけで読んでると意味があるような無いような、それでいて底のほうに深い意味が隠されているような、そんな…不思議な感じがあると言うか?」
「ふむ?」
「唯の日常的な事を書いているかと思えば、合間に何かその…何て言うか、文章自体はよくある説示と言うか、訓示と言うか、そんな物が書かれてたりして。でもそれが、文字の並びや、書き方などがおかしかったりするんです」
「ふむ…例えばどんな感じなのでしょう?」
「例えばこれ…
よはたがえど、かくやあらん
まどうはみち、あざへれよ
やがてはたいがと、わたりあり
文章は兎も角、並びがおかしいでしょ?」
そう言って、その頁を指差す。
「そうですね…。何故、斜めに流れるように書かれているのでしょう?」
「それが解らないんです…」
そう。この文は何故か縦書きの文が左斜めに寄っていくように書かれている。
「済みません…、因みにこれはどういう意味なのでしょう?」
簡単に説明する。まぁ、全部平仮名で書かれているので、この解釈で合ってるかどうかも微妙なところなんだけど。
「そのような意味なのですね…。何と深い言葉なのでしょう…」
深いかなぁ?
「しかし、他のもこの様に斜めに書かれていたりするのですか?」
「いえ、丸く書かれてたり、変な所に隙間を空けた状態で書かれてたり、色々なんですが」
「ふむ…」
あっ、ジリスさんがいつものポーズになってる。考えてる?考えちゃってる?ジリスさんて頭良さそうだもんねぇ。何かイイ知恵くれそう♫邪魔をしないように黙って待つ。
…二~三分ほど経ったか、待つのに焦れてしまって声をかけた。
「あの~…、どう思います?これ…」
「えっ。あぁ…」
う~ん、と唸りながらまた考え込んでしまうジリスさん。ジリスさんでも解らないのかぁ…。どうしよっかな、これ。
本の扱い内容に悩んでいるとジリスさんが言葉を続けてきた。
「済みません。私にはちょっと…解りかねます。但しですね、オノタカムイが書いたとされる本は他にもありまして、もしかしたら、其方に手掛かりとなる記述があるかもしれません」
「えっ!?本って他にもあるんですか!?」
忙しくてこんな仕事やってらんねーよ、みたいな愚痴が書いてあったのに、本を執筆する暇はあるとかビックリだ。本当にこの世界で何やってんの、小野篁。
「えぇ。ただ…その、それはこの国には無くてですね…」
「他の国にあるんですか?」
「ええ、まぁ…。本があると確認が取れていて、一番近いのはラスウル族が治めるガレシア神国ですね」
「ガレシア神国?」
神国ってスゴイな。小野篁が祭られてるのかな?
「神国と言うだけあって、神に纏わる様々な物が集まってもいるのですよ。まぁ、主には創造主たる女神エリュエリシアに関する物が殆どだと聞いていますが」
女神エリュエリシアって誰ー!?
いや、女神って言ってるけど!
「小野た…じゃなかった!オノタカムイじゃないんですか?!」
「え?…あぁ!
オノタカムイを崇拝する神としている者は多いですが、信仰している者はあまりいないかと思いますよ?」
おおぅ…。な、なるほどぉ…。崇拝ね、信仰してる訳じゃないと。なるほど、そうだよね、神様も色々いるもんね、そっか、なるほど、崇拝されてる神様ね。
だよね、いくらなんでも、小野篁を信仰してもご利益は無さそうだしね…。いや、ご利益云々で信仰するとかしないとかって話でもないだろうけど。
なんていうか…神様も一括りで考えられないところが侮れないね!?
しおりを挟む

処理中です...