物語は突然に

かなめ

文字の大きさ
上 下
51 / 77
神の書を求めて

ガルシア神国

しおりを挟む
ご飯が終わってかーらーのー!デザート♫今日はケーキですよ、ケーキ♫ここに来てからというもの、本当に食事が豪華だわぁ♡毎回デザートも付くし♫
し、か、も、大きい!デザートだけは毎回、ちゃんと一個くれるんだよね~♡
…………めっちゃ太りそうだ……。
いかん。ちょっと我に返ってしまった。目の前に美味しそうな物があるというのに、他に気を散らしてしまうとか!そんなことは太るかもなんて事は、見ざる、聞かざる、制止せざるだ!その時はその時に考えればイイ!私は人生を謳歌するぜ!
ふ……っ♫
いただきまぁーす♡
アーンと大きく口を開けて──

コンコン

んあっ!?
ちょっ、今まさに味わおうとした瞬間にノックとか!誰よ!

ガチャッ

!!!
ケーキの上に乗ってた(正体不明の)フルーツに齧り付こうとしているそのままの状態で。ジリスさんと目が合いました…。
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
なんっで、毎回毎回、ジリスさんにはこう、変なところばっかり目撃されるかなぁ!?
思わずガックリ膝を着いちゃったよ…。どうしてくれるんだ、私のオトメゴコロー!!!
「小さく切り分けましょうか?」
その気遣いは有り難いんですけど、今はちょっと凹みます…。
「お気になさらず…」
「そうですか?それなら良いのですが」
ジリスさんのほうは全然、気にしたふうじゃないけど、私の乙女心は大打撃ですよ。ふぎゃー。
「ところで昨夜の件なのですが…」
「昨夜の件?」
「ガルシア神国の本の話です」
ガバッと。膝を着いた状態から一気に正座しちゃいました。
「許可が下りました」
「本当ですか?!」
マジですか?!昨日の今日だよ?!どうやったの、それ?!
「但し、条件があります」
「条件…どんな、一体どんな条件ですか?」
ゴクリと唾を飲み込む。この国の本には書かれていなかったけど、もしかしたら向こうの国のには戻る方法が載ってるかも…そう思うと前のめりにさえなりたくなる。多少の条件なら頑張ってクリアしちゃるぜ!
「内容の翻訳だそうです」
「翻訳ぅ?!」
「ええ。読める者無き神の書ですから。読めるのなら翻訳してほしいと思うのは当然かと思われます」
「で、でも…」
気持ちは、いや、条件は納得だけど、問題はそこじゃない。
「大丈夫ですよ。私が行く事になりますし、口頭で伝えて頂ければ、私がそれを書き写しますので」
「えぇ…、まぁ、そうですね…」
問題はそこじゃない。内容だ。この国のアレみたいな内容だったら。あの、耳の尖った奴ら(多分ハイエルフ?)はあんな格好で恥ずかしくないのか、とか、この世界の鬼(多分魔族?)は自分達こそが最強とか言ってる礼儀知らずの脳筋だ、とか、図体ばかりデカい奴ら(多分古代竜?)は芸事に対する繊細さが足らん、とか、うっかり火山を噴火させてしまった事をこれもまた見事な眺めで良いじゃないかと言って誤魔化した、とか!そんなのを翻訳しちゃってもイイもんなの?!
……だめだよね…?
「あ、あの、全部をちゃんと読めるかは解らないんですけど…」
「あぁ。それは一部だけでも大丈夫だと思います。なにしろ今まで誰も読めなかった訳ですから、少しでも解れば幸い、となる事でしょう」
なるほど。それなら大丈夫かも!ちょっとマトモっぽい事を書いてるところも少しはあったし。
「解りました、頑張ります!」
「はい。頑張りましょう」
今度こそ、時空魔法載ってるといいな!
…とはいえ、あまり期待はしすぎないようにしとこう。この間のがアレだし。
「では準備が出来次第、出発という事でよろしくお願い致します」
「はい!こちらこそ」


この一週間後、ガルシア神国に向かって出国する事になった。


しおりを挟む

処理中です...