物語は突然に

かなめ

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神の書を求めて

問題解決…?

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「一人で戻るつもりですか?竜だって居たのですよ?幾ら何でも危険です。許可出来ません」
とんでもない、とでも言いそうな顔のジリスさん。
そりゃそうだよね。ここまでの道のりで出てきた魔物の数を思えば、普通に一人じゃ無理でしょ。レオンがそれなりに戦えるっていうのは、見てて解るけど、だからと言って一人で大丈夫かと言われたらノーだろう。
魔法剣士らしいが、正直、剣士の部分がほとんどダメダメなのだ。魔法の威力はまぁまぁだったけど、魔術師ほど魔法が使える訳でもないらしいし…ガイさんやジリスさんが強いから、余計に大した事なく見えてるのかもしれないけど、それでも一人で帰すってのは無いなと思う。ガイさん辺りならまだイケるかもしれないが。
「大丈夫です。魔物とは戦わずに報告に帰るだけにしますので」
「貴方が戦わないと言っても魔物は襲ってくるものですよ?」
ですよね。どうするつもりなのか。
「不可視の呪文を使いますので大丈夫です」
不可視?見えなくなるとかいうアレ?え、レオンってそんなの使えるんだ?
「大丈夫なのですか?」
「ウィンディアを連れていけば、呪文の持続力も精度も上がりますし、問題はありません」
レオンがチラリと視線を送ると、薄緑色の服を着た方の妖精が任せてーと言いながら、クルクルと回っている。
ウィンディアって名前だったんだ…。赤い服着てる方の名前は何て言うんだろう。
「ねーねー、ワタシは~?」
そう思ってたら、赤い服の方が自己主張してきた。
「お前はジリス様達と一緒に行くんだ。そうすれば、もしもの時にも連絡が取りやすいからな」
ん?どういう事?
「え~」
赤い妖精の方はプクーッと頰を膨らませて不服そうだね。何故か隣で薄緑の妖精がドヤ顔してるし。
「そんな顔するなよ。エンドレアにもそのうちに何か頼むかもしれないだろ」
「そう!そうだよね!」
レオンのこの言葉に、赤い妖精がピンっと身体を伸ばす。赤い妖精はエンドレアね、よし、覚えた。
「つぎはワタシだもんね!」
「つぎもワタシ~!」
上の方でキャアキャア言い出した二人を見て、そんなに役に立ちたいもんなのだろうかと思う。それとも、それが祝福のギフトとやらの効果なんだろうか。妖精から見たらレオンってどう見えてるんだろう。ちょっと聞いてみたいけど、聞いたらダメだよね。
チラッとジリスさんのほうを見ると顎に手を当てて考え込んでいる。
まぁ、仮に見えなくなる魔法を使ったところで、それで本当に大丈夫なのかと聞かれたら…微妙なところなんじゃなかろうか。よくある話で言うなら、音や匂いはどうなんだって話。もしもその不可視の魔法でダメだった場合はどうするのか。
ジリスさんが私を優先しようとしてくれてるのは、事情があるとはいえ素直に嬉しい。でもだからと言って、無理に急いで他の誰かに危険が及ぶかもしれないっていうのは…正直、気が引けるどころの話ではないのでヤメてほしい。まして命に関わるかもしれないなら尚の事だ。
死んでしまったらそこで終わりなのだから。
無理はしてほしくない。
それぐらいなら皆で戻ればイイ。
そう思っていたのだが。
意外にもジリスさんがOKを出した。
何でー!?
イイの!?
大丈夫なの!?
マジで!?
絶対に無理はしないようにと念を押してから、何やら耳打ちまでしている。
何だろう。もしもの時の秘策かなんかですか?……ジリスさんなら、そういうのもありそう。でもでも本当に大丈夫なんだろうか。
不安が顔に出てたらしい、レオンが親指を立てて大丈夫、とか言ってきた。…その軽いノリが余計に不安になるんですけど。
表情が変わらないと見るや、今度は妖精達がフォローしてきた。
「だーいじょうぶー!」
「大丈夫ー!」
「風の妖精だもん」
「逃げ足は早ーいよー」
「逃げ足じゃないー」
「はやいよー」
逃げ足って。まぁ、風の妖精なら素早さとか高いんだろうし、逃げの一手となればイケる…のか?まぁ、本人達がこれだけ大丈夫と言ってるんだから、あまり疑っても仕方ないか…。
そう思いながらも、つい言葉が出る。
「本当に、本当に、気を付けてね。怪我とかしないでね」
何故か、私のこの言葉に妖精達が一瞬、ポカンとした表情をして──直後、真剣な面差しで
「─やくそく、するの」
「やくそく、なの」
と、返答があった。
うん。これなら信じてもイイかも。て言うか、信じられる。
「約束だからね」
笑顔でそう返すと、向こう二人も笑顔で、うん、と返してきた。
よし、とばかりにジリスさんとレオンのほうへ目をやると、何故かこっちの二人まで呆気に取られた表情で私を見てて、もう本当にその反応は何なの?
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