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16歳の章
帰還と夢の中の追憶4
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結局馬車の件に関しては、一番安く付く手段である職人を連れて来て修理して貰うを取った為に、想定の5日よりももう少し長く村に留まる事になる。
そしてセラティスはあの後、僕に素直に今後の事に関しての相談を願って来た。
勿論そうして欲しかったからこそ彼女に付き合い遠出をしたわけで、僕に否やは無い。
チャリクルやキールが村に帰ってくるまでは森の動物を相手に狩りと戦い、そして追跡の練習をして注意力を養った。短い時間じゃ基礎の基礎しか出来なかったけど。
更には帰って来たチャリクルからは投擲術を、キールからは近接戦闘における鎧の活用法を教わっていた。
何でも軽装の鎧を用いる場合でも、所々を分厚くしたり金属での補強をしておく事で、避け得ぬ咄嗟の場合に其処で受けて被害を減らすと言う技術があるそうだ。
近距離で殴り合わなきゃいけない戦士の方は本当に大変である。真似は到底できないし、勿論真似する気も毛頭無いけど。
だがそれも数日の間だけだ。馬車が直れば村を立つ日がやって来る。
「本当に乗って行かないの?」
見送りのセラティスに僕は問う。
結局彼女は僕の勧め通りに王都の冒険者ギルドで1から学ぶ事を選んだ。
自分を知り、敵を知り、境遇に意固地になっていた事を恥じたセラティスは実に素直だった。
多分もう大丈夫だろう。後は彼女の持つ、冒険者としての運次第だ。
「いいの、そこまでして貰ったらずっと甘えてただけになっちゃうから。私は私の力で王都を目指すよ」
そう言って笑うセラティス。彼女の笑顔はやっぱり明るい。
数日間の訓練に付き合ってたチャリクルとキールは心配げだ。
どうやら情が移ったらしい。実にお人よしの過保護である。あとは本人次第なのだから、心配しても仕方ないのに。
馬車に誘ったのも向かう先が同じならと、ついでだったからに過ぎない。ホントだよ?
「それに師匠にこの短剣を返さなきゃだし、父さんの剣も返してもらわないとだから、頑張らないと」
そう、結局あの後短剣は彼女に取られたままだ。そうなる気は薄々してたけど、でもちょっと悲しい。
だが今の自分には長剣が身の丈に合わない事に気づいた彼女に渡せる武器は他に無かったので、本当に仕方が無かったのだ。
いつかこの、やっぱり父の形見だったらしい長剣を扱えるまでに自分を鍛えれたら取りに行くからと、彼女はそれを僕に預けた。
僕は何も言ってないのに、僕は短剣を返して貰おうと思ってたのに!
それがセラティスにとって最善の道である事も判るし、何時か返して貰えるのも楽しみに出来るから良いけれど。
でも師匠呼びに関しては解せない。僕に剣を教える事は不可能なのだ。
惜しみながらも、馬車はゆっくり動き出す。
「師匠、何時か一人前になってその剣を使えるようになったら、また私と組んでよ。今度はお試しじゃなくて正式に……」
別れ際に言われた最後の言葉は……、僕に宮廷魔術師を止める予定は全然ないので非常に困ったものだった。
…………うぇ。
「はっ、……うぇ、寝てた?」
口元を拭ってベッドから身を起こせば、そこは馬車じゃなくて王城にある僕の私室だ。
窓から入る光は既に赤みがかかっている。
そして頭を振って眠気を払いながら部屋を見渡せば、そこには椅子に座って本を読んでいるエレクシアさんが居た。
「おはよう、フレッド。少し痩せたわね。寝るのは良いけど鍵はちゃんとかけなさい。不用心だわ」
膝の上の本を閉じ、こちらを見たエレクシアさんは久しぶりに見るエレクシアさんで、やっぱりいきなり説教をされる。
頭がよく回っていない。
……不用心なのは不用心だけど、何でエレクシアさんが居るんだろう?
部屋の鍵をかけずに寝てたから?
なるほど、確かに不用心だ。んんん、何かがおかしい?
「まだ寝ぼけてるのね。ほら、入れてあげるから水を飲みなさい」
いつの間にか用意されてた水差しからグラスに水を移し、エレクシアさんが渡してくれた。
水を飲む。美味しい。熱に包まれていたような感覚が、少しだけすっきりとして来る。
ああ、お土産渡さないと。階層ボスの魔石を1種類ずつ貰って来たのだ。特にヒューマンスコルピオの魔石は珍しいからエレクシアさんもきっと喜ぶはず。
「後良いから、落ち着くまでゆっくりしなさい。あと久しぶりの再会ならもう少し気の利いた事も言いなさい」
でもこの優しく叱られる感じも久しぶりで、何だか少し嬉しい。
帰ってきた感じがする。
「何でニヤニヤしてるのよ。遠出の間に可笑しくなったの? ああ、でも私も言い忘れてたわね。フレッド、お疲れ様と、お帰りなさい」
ああ、うん、やっぱり帰って来たんだ。王都に。
ただいま、エレクシアさん。ただいま、皆。
フレッド・セレンディル、只今王都に帰還しました。
本日のお仕事自己評価0点。きもちよくねむれました。
そしてセラティスはあの後、僕に素直に今後の事に関しての相談を願って来た。
勿論そうして欲しかったからこそ彼女に付き合い遠出をしたわけで、僕に否やは無い。
チャリクルやキールが村に帰ってくるまでは森の動物を相手に狩りと戦い、そして追跡の練習をして注意力を養った。短い時間じゃ基礎の基礎しか出来なかったけど。
更には帰って来たチャリクルからは投擲術を、キールからは近接戦闘における鎧の活用法を教わっていた。
何でも軽装の鎧を用いる場合でも、所々を分厚くしたり金属での補強をしておく事で、避け得ぬ咄嗟の場合に其処で受けて被害を減らすと言う技術があるそうだ。
近距離で殴り合わなきゃいけない戦士の方は本当に大変である。真似は到底できないし、勿論真似する気も毛頭無いけど。
だがそれも数日の間だけだ。馬車が直れば村を立つ日がやって来る。
「本当に乗って行かないの?」
見送りのセラティスに僕は問う。
結局彼女は僕の勧め通りに王都の冒険者ギルドで1から学ぶ事を選んだ。
自分を知り、敵を知り、境遇に意固地になっていた事を恥じたセラティスは実に素直だった。
多分もう大丈夫だろう。後は彼女の持つ、冒険者としての運次第だ。
「いいの、そこまでして貰ったらずっと甘えてただけになっちゃうから。私は私の力で王都を目指すよ」
そう言って笑うセラティス。彼女の笑顔はやっぱり明るい。
数日間の訓練に付き合ってたチャリクルとキールは心配げだ。
どうやら情が移ったらしい。実にお人よしの過保護である。あとは本人次第なのだから、心配しても仕方ないのに。
馬車に誘ったのも向かう先が同じならと、ついでだったからに過ぎない。ホントだよ?
「それに師匠にこの短剣を返さなきゃだし、父さんの剣も返してもらわないとだから、頑張らないと」
そう、結局あの後短剣は彼女に取られたままだ。そうなる気は薄々してたけど、でもちょっと悲しい。
だが今の自分には長剣が身の丈に合わない事に気づいた彼女に渡せる武器は他に無かったので、本当に仕方が無かったのだ。
いつかこの、やっぱり父の形見だったらしい長剣を扱えるまでに自分を鍛えれたら取りに行くからと、彼女はそれを僕に預けた。
僕は何も言ってないのに、僕は短剣を返して貰おうと思ってたのに!
それがセラティスにとって最善の道である事も判るし、何時か返して貰えるのも楽しみに出来るから良いけれど。
でも師匠呼びに関しては解せない。僕に剣を教える事は不可能なのだ。
惜しみながらも、馬車はゆっくり動き出す。
「師匠、何時か一人前になってその剣を使えるようになったら、また私と組んでよ。今度はお試しじゃなくて正式に……」
別れ際に言われた最後の言葉は……、僕に宮廷魔術師を止める予定は全然ないので非常に困ったものだった。
…………うぇ。
「はっ、……うぇ、寝てた?」
口元を拭ってベッドから身を起こせば、そこは馬車じゃなくて王城にある僕の私室だ。
窓から入る光は既に赤みがかかっている。
そして頭を振って眠気を払いながら部屋を見渡せば、そこには椅子に座って本を読んでいるエレクシアさんが居た。
「おはよう、フレッド。少し痩せたわね。寝るのは良いけど鍵はちゃんとかけなさい。不用心だわ」
膝の上の本を閉じ、こちらを見たエレクシアさんは久しぶりに見るエレクシアさんで、やっぱりいきなり説教をされる。
頭がよく回っていない。
……不用心なのは不用心だけど、何でエレクシアさんが居るんだろう?
部屋の鍵をかけずに寝てたから?
なるほど、確かに不用心だ。んんん、何かがおかしい?
「まだ寝ぼけてるのね。ほら、入れてあげるから水を飲みなさい」
いつの間にか用意されてた水差しからグラスに水を移し、エレクシアさんが渡してくれた。
水を飲む。美味しい。熱に包まれていたような感覚が、少しだけすっきりとして来る。
ああ、お土産渡さないと。階層ボスの魔石を1種類ずつ貰って来たのだ。特にヒューマンスコルピオの魔石は珍しいからエレクシアさんもきっと喜ぶはず。
「後良いから、落ち着くまでゆっくりしなさい。あと久しぶりの再会ならもう少し気の利いた事も言いなさい」
でもこの優しく叱られる感じも久しぶりで、何だか少し嬉しい。
帰ってきた感じがする。
「何でニヤニヤしてるのよ。遠出の間に可笑しくなったの? ああ、でも私も言い忘れてたわね。フレッド、お疲れ様と、お帰りなさい」
ああ、うん、やっぱり帰って来たんだ。王都に。
ただいま、エレクシアさん。ただいま、皆。
フレッド・セレンディル、只今王都に帰還しました。
本日のお仕事自己評価0点。きもちよくねむれました。
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