宮廷魔術師のお仕事日誌

らる鳥

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16歳の章

フレッド・セレンディル先生の冒険者講座2

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 はい、皆さんこんにちは。本日も臨時講師として招いていただきました。
 前回は冒険者とは何かや魔物やランクのお話をしましたが、今回はこの王国やその地理、周辺国についてやろうと思います。
 一般常識の範疇ですけど、意外と大事ですから。あと他国での冒険者の扱いに関してもふれましょう。
 ただ注意して欲しいのは、特定の国に対してはどうしても私見が混じってしまいます。
 なので僕の話を全部そのまま鵜呑みにするのでなく、色々とご自分で調べて判断してください。
 では今日もいつも通りに、よろしくお願いします。


『王国』

 まずこの国の事をお話ししましょう。
 数百年の歴史を持つ、この周辺では一番古い国ですね。
 この近隣では大国の一つとされています。他の大国は北の帝国と東の共和国になりますが、まあこちらは後でお話します。
 王国で一般的な宗教は大地の女神への信仰です。
 別に他の宗教の信仰が禁止されてる訳では無いですが、大地の女神の加護が強いとされるこの国で他の宗教はあまり根付かないですね。
 大地の女神の加護と言いましたが、この国の土地の力は本当に強くて、食糧の生産量が他国に比べて圧倒的に多いんですよ。
 また大地の女神の教え的に、亜人への差別と奴隷の数が一番少ないのもこの国になります。
 亜人も等しく大地の子。糧に困れば自らの手で大地を耕しましょう。さすれば女神は必ず報いてくれます。
 とありますからね。残念な事に差別や奴隷が皆無ではありませんが、本当に一部の貴族家くらいしか奴隷は持ってない筈です。

 さてこの国は王制で、以前は貴族の力が非常に強かったのですが、今は王家が力を取り戻しています。
 またヴィクトレッド様の改革以降、宮廷魔術師が国政を差配しているのもこの国の特徴だと言えますね。
 周辺には幾つもの勢力があり、東方には共和国と小国家群、北部には帝国、西部には未開拓地と遊牧民の国があります。
 南部は海に面します。北西の未開拓地は、その向こうに魔族の居る魔領があるとも言われています。
 まあ未開拓地は未踏破なので本当の所がどうなのかは不明なんですけどね。
 それに対して王国は四方に辺境伯領を置いています。東方辺境伯、北方辺境伯、西方辺境伯、そして南方辺境伯こと海洋伯です。
 辺境伯は独自裁量が他の貴族よりも多く許された地域の纏め役であり、他国からの侵略や大規模な魔獣災害の時には近隣貴族を招集して独自軍を興せます。
 そうやって王都からの援軍が来るまで、他国の軍や魔獣の群れからの防衛を担う訳です。
 では王都を含む王家直轄領と、各辺境、辺境伯領に関して少しお話しましょう。

『中央』

 まず王都周辺、王家直轄領は王国の中央部にあり、莫大な食糧を生み出す豊かな土地です。
 莫大って言ってもどれだけか判り難いと思いますが、北の強国である帝国が食糧輸出止められるのが嫌で攻めて来ないんだろうって言われる位です。
 西の遊牧民の国や北の帝国、東の小国連合と海の向こうの国にまでこの地域の農産物は輸出されてますね。
 他にも嗜好品の茶や、ワインにする葡萄やらも大量に作ってますし。
 それと四方への辺境伯領への街道が大分整備されてるので、各地の品も入って来て王都では商業も栄えています。

『東部』

 では東方辺境伯領から行きましょうか。此処は王国の中で一番荒れている地域だと言えるでしょう。
 共和国と王国は長い間敵対関係にあり、小競り合い程度のぶつかり合いは頻繁に起きているそうです。
 東部は共和国だけでなく小国家群にも接してますので、そちらとは商業も行ってはいます。
 が、共和国が噛みついて来るのでやはり安定はしてないですね。
 王国で一番問題を抱えるのが東部域であるのは間違いないと思います。
 他には南東部に人があまり踏み入らない山脈があります。
 この地域では冒険者としての仕事も他の地域とは質が異なりますので、行かれる際は慎重に。

『北方』

 次に北方辺境伯領ですが、帝国への食糧輸出の拠点であると言うのがまず第一に来ます。
 人の行き来が物凄く多い土地ですよ。
 帝国との関係は今の所穏当な物ですが、強国に対する備えとして兵力は整えられていますね。
 他に特徴的なのは、北部には雪が降ると言う事でしょうか?
 北部の山地の近くには温かい湯の沸く、温泉と言うのがあるのでその周辺は観光地としても人気です。
 先程兵力が多いと言いましたが戦争状態ではないので治安維持が主な任務となり、割と北部は治安も良いんですよ。
 また鉱物資源も豊富だと言う話です。
 あまり冒険者の出番が多い地域では無いですね。
 
『西方』

 西方は田舎ですねって言うとあそこの辺境伯に怒られますが、他に比べると商業の発展度合いは低いです。
 土地を治める貴族達も武人が多いと言うか、ああ、武を重んじる土地柄ですね。
 以前は西の遊牧民の国と仲が悪くて略奪したりされたりを繰り返していたそうですが、今の辺境伯家に変わってからは関係が改善したそうです。
 なんでも先代が遊牧民の国の族長と殴り合って仲を深めたとか言ってましたが……、まさかですよね。
 未開拓地が近いだけあって森が多いです。いやまあ王国はどこも森で一杯ですけど、特に深い森が多いです。
 魔物や魔獣も西方の、特に北西部では出現率が高いと言われますね。
 冒険者に対しても偏見無く歓迎してくれるのがこの地域の良い所だとも思います。

『南方』

 南方辺境伯は海洋伯とも呼ばれます。つまりこの地域の特徴は何と言っても海です。
 あの地域の中心地である海都は商業と美食の都と言われてますし、規模もまあ王都に次ぐ規模です。
 海の向こうの国々と交易をしていて、町には異国の人や、ハーフの人も多く見かけます。
 観光地としても人気ですし、まあ当然トラブルも多いので冒険者の仕事もかなりあります。 


 では次に他国の事をお話ししましょう。
 まずは、そうですね。やはり順番通り東方の国から。

『共和国』

 王国東部にあります。正確には東部でも南寄りですね。
 共和国は議会制と言う政治形態を取る国で、王家が存在しません。
 その代わり貴族による議会によって国が動いています。一応は貴族から選出される任期付きの代表はいるそうですね。
 王国との仲は非常に悪いです。
 以前は寧ろ近しい関係だったのですが、王国の改革時に多くの貴族が共和国に亡命ました。
 そしてその貴族達があちらで地位を築いて参政し、王国は魔術師に乗っ取られた悪の国として叫んでます。
 以降ずっと敵対関係にありますね。
 国の特徴としてはお金が物を言う国で、冒険者の仕事も多いですよ。王国との戦争にも傭兵が結構出てきますね。
 他には奴隷も多いですし、亜人も居辛い国だそうです。
 一応小国家群を経由すれば入国は可能ですが、王国民だとバレれば意味の判らない罪に問われて奴隷にされる可能性もあるのでお勧めはしません。
 まあ王国民でなくとも貴族の目に留まるとその可能性はあるんですけどね。
 あと他の国では手に入らない品物もこの国の闇市でなら入手が可能だって言われています。

『小国家群』

 王国の東、共和国の北にある小規模な国の集まりです。
 小さい国になると一都市で国を名乗ってたりもしますよ。結構複雑に同盟や連合を組んでますので、下手に一国を敵に回すと周辺全部が敵対化したりします。
 王国との仲は然程悪くない、或いは良好な国が多く、特にドワーフの国との関係を王国は重視しています。
 本当に色んな国がありますね。比較的余裕のある国もあれば、困窮してる国も。
 王国と共和国との戦いで生まれた脱走兵なんかが野盗になって荒らしまわってる場所なんかもあるので、そんな所の治安は王国東部よりさらに悪いです。
 冒険者としての仕事は、多いかも知れませんが見合う報酬が得れるかどうかは判りません。
 見どころとしてはドワーフの国は山を掘って存在するので、一度は見て損は無いと思います。

『帝国』

 王国の北にあって寒いです。
 近隣では一番国力のある強国です。権力が中央に集中してるので軍の動きも素早いのが特徴ですね。
 正直冒険者の仕事は本当にない国です。賊や魔獣にも軍が素早く動いて対処しますし。
 西側を大きく未開拓地と接しているので、魔物の侵攻が多いらしいのですが、同時に東側でも他の国と戦争していたりします。
 力のある戦争好きって性質が悪過ぎですね。
 王国との関係は悪くないです。
 以前一度関係が悪化しかけた事があったらしいんですが、実は帝国って食糧供給の王国への依存率が高いんですよ。
 なので王国と戦った場合、戦いが長引くと帝国が丸ごと飢えて死ぬ可能性が大なので、仲良くする事を選んだと言われてますね。
 今後がどうなるかはわかりません。

『遊牧民の国』

 王国の西にあります。
 国と言っても、遊牧民の部族が幾つもあって、たまに集まって大号令を出す指導者を決めるって感じらしいです。
 遊牧民は馬の扱いと弓の扱いが非常に上手く、友と認めた人間以外が縄張りに侵入した際はすぐさま殺しにかかってきます。
 なのでどうしても行きたい場合は遊牧民に伝手のある人に紹介して貰い、儀式等を受けたりして友と認められることが大事ですね。
 そうで無く行くなら自殺と然程変わりません。最低でも矢避けの術は反射的に施せる様にならないと、相手を視認した次の瞬間には死んでます。
 本当にその位に遊牧民達は戦いに長けてますから。
 冒険者の仕事ですが……、彼等にとっては冒険者の存在自体が不可解だと思います。魔物が出るなら部族で狩ろうって人達なので。


 海の先の国々には残念ながら行った事が無いのでお話し出来ません。
 印象としては良い国悪い国あるんですが、自分の目で見ずに語るのはあまり好きではないので……、あ、はい、周辺国は全部回りましたよ。
 小国家群は流石に全部とは行きませんが、少しだけは。その帝国や共和国の向こう側にも残念ながら行って無いので、そちらもお話出来ないですね。
 そうですね。遊牧民の国が危ないとかも、実体験なので自信を持って本当に危ないって言ってますよ。
 というか、正直僕は王国が一番良いです。故郷だからと言うのもありますが、此処が一番不安なく穏やかですから。
 さて少し長くなってしまったのでこの辺にしましょうか。
 本日はお疲れ様でした。また次の機会に。



 本日のお仕事自己評価65点。くにのはなしはながくなっちゃいますね。
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