少年と白蛇

らる鳥

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 冒険者の朝は早い……、と言う訳でも無いけど僕の朝は早い。おはようございます。
 何故なら宿の手伝いがあるからだ。まだ窓の外は薄暗いが、気合を入れて、エイヤと身を起こす。
 見れば左腕に蛇の形をした入れ墨の様な文様が浮かんでる。どうやら今日はそこを寝床にしたらしい。
 意識を向けてみると、何となく寝息みたいな、寝ている気配がしたので起こさないようそっと動く。
 昨晩組んでおいた水桶で顔を洗い、口をゆすいでうがいをする。寝起きで少しぼんやりしていた頭が、はっきりと動き出して来た。
 櫛で髪を漉いて寝癖を直す。抜けた茶色の毛を拾って屑入れに。
 此れは小まめにやっとかないと、後になれば面倒臭くなってしまう。
 ちなみに朝の早い冒険者は駆け出しか、直近の仕事で予想通りの収入を得られなかったか、或いは流れ者が多い。
 ギルドに持ち込まれた依頼は、即時対応が必要とされる物以外は次の日の朝にランク分けをして公開される。
 なので少しでも割りの良い仕事を選ぼうと考えるなら、朝からギルドに行くのが一番良いからだ。
 それなりの成果を出した冒険者は打ち上げで潰れるまで飲んだりする事が多いので、昼位まで起きて来ないのがざらである。

「おう、おはよう。ユー、早速でスマンがこの芋を頼む。あとこれはお前さん宛だ」
 部屋を出て階段を下りれば、宿のおじさんに、籠に山盛りになった芋と、一枚の手紙を渡された。
 手紙は多分指名の依頼だろう。ギルドに常宿を知らせておけば、指名依頼に関しては宿に直接届けてくれる。
 まあ僕に来る指名の依頼と言えば採取以外に無いので、確認は後でも大丈夫なのだ。
 僕は手を清めるとナイフで芋の皮を剥き始めた。量は多いが、急ぐ必要があるのは朝食分だけなのでそれだけはさっさとやってしまおう。
 芋をくるくる回しながら、皮を綺麗に剥いて行く。芽が出てたら芽も抉り、芋を水の入った桶に放り込む。
 この作業も随分と手慣れた。二年も宿の手伝いをしていれば当然である。
 二年と言えば、この二年で文字も読める様になったのだ。書くのは未だ名前以外は苦手だが、読み書きの一切出来なかった村に居た頃を思えば随分な進歩の筈。
 横目でチラと確認すれば、おじさんはフライパンを温めていた。
 どうやら朝食は炒め物らしいので、僕はもう一度手を洗うと剥いた芋の一部を細切りにしておく。
 おじさんは僕を見て一つ頷くと、切った芋を持って行く。朝食分は終了だ。
 後は急ぐ必要は特にないのだ。のんびりと剥いて、水に浸けておけばそれで良い。
 今日一日で使う芋を先に準備するのが僕の朝の仕事である。急ぎの依頼が無い場合のみと、拘束力が強くないのが有り難い。
「なぁ、ユー。すまんが空いてる時で良いんだが、また肉を狩って来てくれんか。あと3~4日はもつんだが、最近肉の消費が激しくてな……」
 貯蔵室から朝食に使う肉塊を取り出して来たおじさんに頼まれる。
 何でも一週間くらい前から新しく宿に泊まっている中級の冒険者が随分と大食漢なのだそうだ。
 指で輪っかを作り了承の意を示す。
 僕も食べてる所に一度出くわしたが、決して下品な食べ方では無いのに信じがたい勢いでテーブルの食事が次々と消え行く様は見物だった。
 しかも食べていたのが少しほっそりとした綺麗な女性だったので驚きは猶更だ。何でも宿のおじさん曰く食の神の神官戦士らしい。
 あの食べっぷりだと兎を数匹では足しにもならないだろうから、鹿や猪でも狩ろうかな。
 小動物を狩るなら兎も角、鹿等を狙うとなるとそれなりの準備が必要になる。

 ベーコンと芋の炒め物にパン、そして昨日の夕食の残りのシチューが朝食のメニューだ。
 臭いを嗅ぎつけたのか、左腕を寝床にしていたヨルムが起き出した気配がしたので、服の中に召喚する。
 腕に巻き付いてチロチロと手の甲を舐めて来るので、フォークに刺した芋を差し出すが、ぺチぺチと頭を僕にぶつけて来た。
 どうやらお気に召さないらしい。
 僕が今度は大きめにベーコンを切って差し出すと、今度は大きく口を開けてごくりと飲み込む。
 噛まないで飲み込むのに何で味にこだわるのかはちょっと不思議だ。僕は千切ったパンをシチューに浸してから口に放り込んだ。
 うん、美味しい。よく噛んでから飲み込むと、空っぽだった胃に染み込む様に満足感が広がる。
 羨まし気な気配を感じたので、同じ様にシチューに浸したパンを差し出すと、やはりヨルムは一口で飲み込む。
 時間を置いた方が具材の旨味が汁に熔けるのだろうか?
 昨日の晩食べたシチューよりもさらに美味しくなってる気がする。
 僕は水で口の中の味を一旦消すと、次は芋にフォークを刺した。いやだって僕が剥いたんだもの。ヨルムが食べなくても僕は食べるよ。
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