少年と白蛇

らる鳥

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 しかし結論から言えば、村長との話は徒労に終わる。
 村長は森の状況の危うさには一定の理解を示したけれど、僕の言葉を報酬の吊り上げだと考えたのだ。
 仕方のない事なのかも知れないけれど、遂に対策を取るとの言葉を引き出せないまま、村長との話し合いは終わってしまった。
 そしてこの先どうするか頭を悩ませながら、宿に向かう僕に更なる追い打ちが降りかかる。
「おいお前! 探したぞ。我々は今から森に入るんだが、お前も来い。昨日の事はそれで水に流してやる」
 嫌々ながらも振り返れば、やはり昨日の冒険者の女性が仁王立ちで僕を見て居た。
 この人は酔って無くてもこんな感じなのか……。
 仲間の男性が申し訳なさそうにぺこぺこと此方に頭を下げているけれど、そうする位なら止めて欲しいと思ってしまう。
 暴走する仲間を止めないのなら、態度がどうあれ所詮は同類でしかない。
 それにしてもこの人に目は付いて無いのだろうか。僕は今、村長宅に置いておく訳にも行かなかった暴れ猿を担いでる。
 つまりは森から帰って来たばかりだと一目でわかる姿なのだ。
 まあ多分ではあるが、この冒険者達は恐らくギルドの制止を無視して、背伸びをして此処に来たのだろう。
 所作を見た所、3人ともが駆け出しであろう事は間違いようが無かったから。
 そして駆け出しであるが故に背伸びはしてみた物の、いざ現場に辿り着いてみれば不安に駆られ、少しでも頭数を集めたくて僕を誘っているのだ。
 ……もし暴れ猿の群れが村を襲って来たのなら、僕はこの駆け出し冒険者達と村の防衛に当たらなければならないのか。
 よし、決めた。このままでは無駄死にする可能性が高い。ライサの町に帰えるとしよう。
 状況を冒険者ギルドに報告すれば、事態を解決可能な人材が派遣される可能性はある。
「見ての通り今帰って来た所なんでお断りします。入って直ぐに5匹くらいに襲われましたし、森、今結構危ない状態みたいなんで、出来ればやめとく事をお勧めします」
 告げるだけ告げて、僕は相手の返事を聞かずに背を向けた。
 後ろで何か言っているけど、聞かずにさっさと歩き去る。だって相手をしている時間が無いもの。
 忠告位は出来るけど、彼等の行動を縛る権利は僕には無いから。

 歩く事数分で目的地である宿屋が見えて来る。
 辿り着いた時、宿の主人は表の掃除をしていて、やって来る僕に気付いて顔を上げた。
 この宿はとても良い宿だっただけに、少し申し訳無さがこみ上げる。
 でも僕が残るよりも、町のギルドに報告をして、中級の冒険者辺りを派遣して貰った方が確実にこの村の為にもなる筈だ。
「ん、随分深刻そうな顔をして、一体どうした?」
 僕が宿泊のキャンセルと、この村を去る事を決めたと告げると、宿の主人は首を傾げて問う。
 無駄に心配をさせる事になるかと思って少し迷ったが……、でもこの主人はどうも元冒険者か、或いは兵士か、何れにせよ戦いを知ってる人種だろう筈だったので、森の状況は寧ろ知っていて貰うべきだと考えた。
 担いだ、痩せた暴れ猿を見せながら、僕は今日森で見た事、感じた事をつぶさに語る。
 暴れ猿の数は異常に多そうなのに、森の獣や森の恵みが少なく、暴れ猿が飢えていて狂暴性を増してた。
 奴等が人里を襲うかどうかはわからなくとも、この状況の解決には下級冒険者では無く中級以上の冒険者が必要であろう。
 だから僕は町に戻り、ギルドへ報告しようと考えてる事も。
 ただしこの暴れ猿の骸を担いだまま町まで移動するのは困難なので、此れ無しでどこまで僕の言葉が信用して貰えるかは不安でしかないのだけれど。
 宿の主人は僕の言葉に真剣な顔になり、じっくりと暴れ猿の骸を観察した後、大きく頷く。
「ああ、お前の判断は的を得ている可能性は高いな。村長の判断も立場からすれば仕方は無いのかも知れんが、まったく……。少し待ってくれないか? 一つ依頼を頼みたい」

 待たされた時間はほんの僅かだった。
 恐らく宿の主人も急いでくれたのだろう。蜜蝋で封印された手紙を一通渡される。
「すまないが、この手紙をライサ、オリガ、どちらでも良いから町のギルドに急ぎで届けて欲しい。私の名前で中級以上の冒険者の派遣を依頼してある」
 成る程、そうしてくれるのなら僕にとっても都合が良い。
 少なくとも猿を担いでギルドに駆け込むよりは、この手紙の方が間違いなく信用度は高いだろう。
 つまり暴れ猿の骸をいちいち運ぶ必要が無くなるのだ。
 寧ろ宿の主人は、荷物になるであろうその骸を引き取るとさえ提案してくれた。……まあその分急いで欲しいのだろうけど。
 それに何よりも、ギルドへの報告だけで済ますよりも、僕の気持ちも少しは収まる。
 僕とて危険に陥るかも知れない村を離れる事に何も感じない訳では無いのだ。
 でも僕の力ではこの状況は覆せない。無駄とわかって死ぬ危険性が高い道を選ぶのは、僕の生き方では無かった。
 それよりも、出来る事を一生懸命に。
 今から、丸一日寝込む覚悟で体力を使い果たす勢いで急げば、何とか今日中に町に辿り着ける筈。
 勿論その覚悟と努力は無駄になるかも知れない。
 僕の懸念は的外れで、別に急がずとも村が無事である可能性だってある。
 逆に僕が急ごうと急ぐまいと、全ては手遅れである可能性だって。
 でもそれは僕が頑張らない理由にはならないから。
 ヨルムの頭を一つ撫で、僕は村を後にする。


 それから一週間後。
 僕はあの村があれからどうなったかを、ギルドの受付嬢、エミリアさんに教えられていた。
 ギルドの対応は素早く、僕が夜にギルドに駆け込んで力尽きた次の朝には、ガジルさんを含む中級冒険者のチームがアクサナ村に向かって派遣される。
 村ではあの宿の主人がやって来るであろう冒険者の受け入れ態勢を作っていたので、事はスムーズに進んだそうだ。
 何でもやっぱりあの宿の主人は元冒険者で、中位の、それもランク6まで上がった人なのだとか。
 森の状況は、やはり僕の予想通り暴れ猿達が暴走する寸前だったらしい。
 何でも此処数年は気候が安定した状態が続いた為に、森の恵みが豊富で暴れ猿が爆発的に増えたにも関わらず、村に討伐に出向く冒険者が少なかった事が原因だと推察された。
 そして今年はまるでそれまでの反動の様に森の恵みは少なかったのだ。
 そう言えば今年は魔物の動きが活発であるとの話を良く聞くし、僕自身もそう思う。
 まあ結局は如何に暴走寸前まで狂暴化して増えようとも、下位の魔物である暴れ猿が中級冒険者に敵う筈も無く駆除され、村に被害が出る事は無かったそうだ。
 ただし中級冒険者達が村に辿り着く前に滞在していた下級冒険者のチームが、森に入ったまま全員行方不明になったらしい。
 あの時、僕にあれ以上出来る事は無かったし、判断も間違ってなかったと思うけど、でも矢張り少し後味は悪かった。



 ユーディッド
 age13
 color hair 茶色 eye 緑色
 job 狩人/戦士 rank3(下級冒険者)
 skill 片手剣3 盾2 格闘術2 弓5(↑) 野外活動3(↑) 隠密1 気配察知3 罠1 鍵知識1 調薬1
 unknown 召喚術(ヨルム)
 所持武装 鋼のブロードソード(高) 鋼のショートソード(高) 革の小盾(高) 弓(並) 中位魔獣の毛皮マント(高) 革の部分鎧(高)


 ヨルム
 age? rank6(中位相当)
 skill 縮小化 巨大化 硬化 再生 毒分泌 特殊感覚
 unknown 契約(ユーディッド)


 此れまでの経験と訓練により弓と野外活動が上昇しました。
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