79 / 113
79
しおりを挟む台座を拭き、床を履き清めて行く。雑用依頼で清掃は偶にやるので、別にそんなに苦では無い。
でも周囲に神の像が一杯あると、ちょっと視線と言うか、不思議な圧力を感じてちょっと居辛かったりもする。
ヨルムは少し機嫌が良いようで、顔を出して頭を振り、偶にシャーシャー言っていた。
指で撫でてやりたいが、今は掃除中で手が汚れてるから洗うまでの我慢だ。
トーゾーさんとパラクスさんにヨルムが幻獣であるとは話したが、2人ともヨルムがただの蛇じゃないと元から察していた様子である。
まあ明らかに人の言葉理解してる節は何度も見せていたし、賢い2人にバレてたのは仕方ないとは思う。
此れまでずっと聞き出そうとしないでいてくれた事、幻獣であろうともヨルムを含めて僕を仲間として見てくれてる事には感謝しかない。
「この辺りで蛇の幻獣と言うと、ヨルムンガンドの子孫か眷属なのかな」
何て風にパラクスさんは言ってたけど、どうなんだろうか。
正直ヨルムって名前は、出会った時に僕が咄嗟に頭に浮かんで付けたので、あんまり参考にならないと思うのだけれど……。
ちなみにヨルムンガンドとは戦神に殺された大蛇の名前だそうだ。殺される間際に戦神に喰らい付き、毒でその片腕を奪ったとされる。
その傷を負ったせいで戦神は神々の戦いで満足に戦う事は出来なかったらしい。
故に秩序の神を奉ずる地域では悪魔の蛇として忌み嫌われてるし、逆に中立や魔の神を奉ずる地域では逆に世界を守ったとの伝承が残るとか。
無秩序に戦神が暴れて居たら、神々の戦いは秩序の神の陣営が勝利し、そして世界が負った傷はもっと深かっただろうと……。
うん、何にせよヨルムはヨルムだ。寂しがりで甘えん坊な僕の相棒。
考え事をすると手が止まってしまう。此れは良くない。
今すべき事は考え事でなく、掃除である。
今回の清掃は、オリガの教会を血で汚したお詫びなのだから、ちゃんとやろう。
「よし、ユー君。そろそろ終わりにしよう。付き合ってくれてありがとう。此処の教会は広いからまだまだ綺麗にしたい場所は沢山あるけど、でも気分は晴れたよ」
正直、僕は然程信仰心があつい人間では無いので、教会を戦場にした事に対する罪悪感はそこまで大きい物じゃない。
だって悪いのはどう考えても神官達を皆殺しにしてあそこに巣食ってた傭兵達だし。
でもカリッサさんはそんな風に簡単には割り切れなかったみたいで、気に病んでいる様子だった。
そこで教会の清掃に誘ってみたのだけれども、どうやら僕の考えはお見通しだったらしい。少し照れくさくなる。
ちゃんと手を洗ったので、改めてヨルムの顎を指で撫でた。
「元々巻き込んだのは僕なんだし、それより早くお祈りしよう。他にも明日の準備はあるしね」
お祈りを急ぐと言うのも不敬かも知れないが、照れ隠しに僕はカリッサさんを急かす。
カリッサさんも笑ってくれたので多分大丈夫だろう。
そして改めて、己の信じる神の像の前へと向かう。カリッサさんは食神で、僕は森の女神様。
2度目になるが、僕は然程信心深くは無い。色々見たので神様の存在を疑いはしないが、けれど別に助け導いてくれると言われてもそんなにピンと来ないのだ。
森の女神様を信じているのも、僕の生まれた家が狩人の家で、当たり前の様に信仰の対象となって居たからである。
僕にとって狩人の掟と森の女神様への信仰はごっちゃになってて不可分だった。
狩った獲物を捧げるのも、子連れの獲物は狩らずに見逃すのも、そうするのが当たり前だからであって深く意味を考えたりしない。
獲物を狩れたのは女神様が恵んでくれたんじゃ無くて、自分が頑張って狩ったのだし。
多分きっと僕は熱心な信者の人から見たらとても不敬者なのだろう。
しかしそんな僕だが、信心は浅くとも森の女神様は大好きである。
其れには理由が2つあり、1つ目の理由は神像の彼女はとても美人だからだ。他の女神様も美人が多いけど、心を一番惹かれるのは森の女神様の神像だった。
そしてもう1つは、僕をヨルムと出会わせてくれたから。あの時森で、僕をヨルムの所へ導いてくれたのは、きっと森の女神様だろうって信じてる。
「少し出かける事になりました。忙しくなかったら、また良きお導きをお願いします」
神像に捧げる祈りの言葉は適当だ。だって狩った獲物を捧げる時の祈りは兎も角、こんな改まった場だと何を言えばいいか良くわからない。
でも気持ちはちゃんと込めてると思う。暇があって、気が向いたら、見守ってくれたら嬉しいなって位の気持ちだけれど。
基本的には自分で頑張るから良いのだ。
カリッサさんは食神の後に、道の神にも祈りを捧げてた。
高位の神官なだけあってカリッサさんの祈る姿はとても綺麗で、見て居て飽きない。
道の神と言えば旅の安全を見守ってくれるとされ、行商人や旅人に広く信仰されている。
他の場所に比べれば街道に魔物が少ないのは、この道の神が見守ってくれているからだと言う話だった。
特に道の傍らにこの神の小さな祠が設けられてる場所の付近は安全だとされ、物語等でも旅人が迫り来る魔物の気配に怯えながらも道の神の祠まで何とか辿り着き、其処で一晩を過ごして九死に一生を得る展開は定番だ。
けれど実際には、魔物は確かに出難いのだけど、魔物を避けて野営する人を狙った野盗が出たりするので、気を抜けない事には変わりない。
神様の好意も、人間の悪意に掛かれば台無しになってしまう。
祈りを終えたカリッサさんと一緒に、教会を後にした。
鍛冶屋により、修繕に出していた武具を受け取り、ついでにもう一本短剣を購入する。
向かう先にも武器は売ってるだろうけど、出来れば僕の癖を知ってくれてる店で買う方が色々と安心だ。
僕等が目指す先は、以前にマイレ王国の東都に行った際にも話題に上がった、西側小国家群の中で闘技場を持つ国、トルネアス。
彼の国はミステン公国から北東に馬車で一週間程行った場所にあり、四大国程では無いが比較的規模の大きな国らしい。
武を重んじる事で有名な国で、10年程前に起きたロイド帝国と西側小国家群連合の戦争で名を上げた将軍が居ると言う。
トルネアスの闘技場では年に2度ほど大きな闘技会があるのだが、その開催が時期が迫っている。
そして闘技会にトーゾーさんが興味を示し、出来れば参加したいと言い出したので僕等の目的地となった。
カリッサさんも参加を考えてるそうなので、うちのチームの2人と戦う相手は大変だなあと思う。
でももしかしたら、カリッサさんやトーゾーさんでも手古摺ったり、或いは勝てない人も参加するんだろうか。
だとしたらもう、僕には想像も出来ない世界の話だ。
ちなみに僕も参加してみたらどうかってトーゾーさんに言われたけれど、まわりが強い人ばかりだと恥をかきそうであんまり気は進まない。
弓の大会も同時開催みたいなのでそっちの方がまだ良いかなあ。
何にせよ、色んなものが見れる事は多分間違いないだろうから、明日の旅立ちは楽しみだった。
ユーディッド
age13
color hair 茶色 eye 緑色
job 狩人/戦士 rank4(中級冒険者)
skill
片手剣5 盾4 格闘術4 弓6 短剣3 逆手武器2
野外活動5 隠密5 気配察知6 罠3 鍵知識2 調薬2
unknown 召喚術(ヨルム)
所持武装
鋼のブロードソード(高) 鋼のショートソード×2(高) 複合弓(高)
革の小盾(高) 中位魔獣の毛皮マント(高) 革の部分鎧(高) デススパイダーシルクの手袋(最高)
ヨルム
age? rank7(上位相当)
skill 縮小化 巨大化 硬化 再生 毒分泌 特殊感覚 脱皮
unknown 契約(ユーディッド) 感覚共有(ユーディッド)
ユーディッドの所持武装が更新されました。
1
あなたにおすすめの小説
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~
みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。
何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。
第一部(領地でスローライフ)
5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。
お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。
しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。
貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。
第二部(学園無双)
貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。
貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。
だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。
そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。
ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・
学園無双の痛快コメディ
カクヨムで240万PV頂いています。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる