少年と白蛇

らる鳥

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 台座を拭き、床を履き清めて行く。雑用依頼で清掃は偶にやるので、別にそんなに苦では無い。
 でも周囲に神の像が一杯あると、ちょっと視線と言うか、不思議な圧力を感じてちょっと居辛かったりもする。
 ヨルムは少し機嫌が良いようで、顔を出して頭を振り、偶にシャーシャー言っていた。
 指で撫でてやりたいが、今は掃除中で手が汚れてるから洗うまでの我慢だ。
 トーゾーさんとパラクスさんにヨルムが幻獣であるとは話したが、2人ともヨルムがただの蛇じゃないと元から察していた様子である。
 まあ明らかに人の言葉理解してる節は何度も見せていたし、賢い2人にバレてたのは仕方ないとは思う。
 此れまでずっと聞き出そうとしないでいてくれた事、幻獣であろうともヨルムを含めて僕を仲間として見てくれてる事には感謝しかない。
「この辺りで蛇の幻獣と言うと、ヨルムンガンドの子孫か眷属なのかな」
 何て風にパラクスさんは言ってたけど、どうなんだろうか。
 正直ヨルムって名前は、出会った時に僕が咄嗟に頭に浮かんで付けたので、あんまり参考にならないと思うのだけれど……。
 ちなみにヨルムンガンドとは戦神に殺された大蛇の名前だそうだ。殺される間際に戦神に喰らい付き、毒でその片腕を奪ったとされる。
 その傷を負ったせいで戦神は神々の戦いで満足に戦う事は出来なかったらしい。
 故に秩序の神を奉ずる地域では悪魔の蛇として忌み嫌われてるし、逆に中立や魔の神を奉ずる地域では逆に世界を守ったとの伝承が残るとか。
 無秩序に戦神が暴れて居たら、神々の戦いは秩序の神の陣営が勝利し、そして世界が負った傷はもっと深かっただろうと……。
 うん、何にせよヨルムはヨルムだ。寂しがりで甘えん坊な僕の相棒。
 考え事をすると手が止まってしまう。此れは良くない。
 今すべき事は考え事でなく、掃除である。
 今回の清掃は、オリガの教会を血で汚したお詫びなのだから、ちゃんとやろう。
 

「よし、ユー君。そろそろ終わりにしよう。付き合ってくれてありがとう。此処の教会は広いからまだまだ綺麗にしたい場所は沢山あるけど、でも気分は晴れたよ」
 正直、僕は然程信仰心があつい人間では無いので、教会を戦場にした事に対する罪悪感はそこまで大きい物じゃない。
 だって悪いのはどう考えても神官達を皆殺しにしてあそこに巣食ってた傭兵達だし。
 でもカリッサさんはそんな風に簡単には割り切れなかったみたいで、気に病んでいる様子だった。
 そこで教会の清掃に誘ってみたのだけれども、どうやら僕の考えはお見通しだったらしい。少し照れくさくなる。
 ちゃんと手を洗ったので、改めてヨルムの顎を指で撫でた。
「元々巻き込んだのは僕なんだし、それより早くお祈りしよう。他にも明日の準備はあるしね」
 お祈りを急ぐと言うのも不敬かも知れないが、照れ隠しに僕はカリッサさんを急かす。
 カリッサさんも笑ってくれたので多分大丈夫だろう。
 そして改めて、己の信じる神の像の前へと向かう。カリッサさんは食神で、僕は森の女神様。
 2度目になるが、僕は然程信心深くは無い。色々見たので神様の存在を疑いはしないが、けれど別に助け導いてくれると言われてもそんなにピンと来ないのだ。
 森の女神様を信じているのも、僕の生まれた家が狩人の家で、当たり前の様に信仰の対象となって居たからである。
 僕にとって狩人の掟と森の女神様への信仰はごっちゃになってて不可分だった。
 狩った獲物を捧げるのも、子連れの獲物は狩らずに見逃すのも、そうするのが当たり前だからであって深く意味を考えたりしない。
 獲物を狩れたのは女神様が恵んでくれたんじゃ無くて、自分が頑張って狩ったのだし。
 多分きっと僕は熱心な信者の人から見たらとても不敬者なのだろう。
 しかしそんな僕だが、信心は浅くとも森の女神様は大好きである。
 其れには理由が2つあり、1つ目の理由は神像の彼女はとても美人だからだ。他の女神様も美人が多いけど、心を一番惹かれるのは森の女神様の神像だった。
 そしてもう1つは、僕をヨルムと出会わせてくれたから。あの時森で、僕をヨルムの所へ導いてくれたのは、きっと森の女神様だろうって信じてる。
「少し出かける事になりました。忙しくなかったら、また良きお導きをお願いします」
 神像に捧げる祈りの言葉は適当だ。だって狩った獲物を捧げる時の祈りは兎も角、こんな改まった場だと何を言えばいいか良くわからない。
 でも気持ちはちゃんと込めてると思う。暇があって、気が向いたら、見守ってくれたら嬉しいなって位の気持ちだけれど。
 基本的には自分で頑張るから良いのだ。
 カリッサさんは食神の後に、道の神にも祈りを捧げてた。
 高位の神官なだけあってカリッサさんの祈る姿はとても綺麗で、見て居て飽きない。
 道の神と言えば旅の安全を見守ってくれるとされ、行商人や旅人に広く信仰されている。
 他の場所に比べれば街道に魔物が少ないのは、この道の神が見守ってくれているからだと言う話だった。
 特に道の傍らにこの神の小さな祠が設けられてる場所の付近は安全だとされ、物語等でも旅人が迫り来る魔物の気配に怯えながらも道の神の祠まで何とか辿り着き、其処で一晩を過ごして九死に一生を得る展開は定番だ。
 けれど実際には、魔物は確かに出難いのだけど、魔物を避けて野営する人を狙った野盗が出たりするので、気を抜けない事には変わりない。
 神様の好意も、人間の悪意に掛かれば台無しになってしまう。

 祈りを終えたカリッサさんと一緒に、教会を後にした。
 鍛冶屋により、修繕に出していた武具を受け取り、ついでにもう一本短剣を購入する。
 向かう先にも武器は売ってるだろうけど、出来れば僕の癖を知ってくれてる店で買う方が色々と安心だ。
 僕等が目指す先は、以前にマイレ王国の東都に行った際にも話題に上がった、西側小国家群の中で闘技場を持つ国、トルネアス。
 彼の国はミステン公国から北東に馬車で一週間程行った場所にあり、四大国程では無いが比較的規模の大きな国らしい。
 武を重んじる事で有名な国で、10年程前に起きたロイド帝国と西側小国家群連合の戦争で名を上げた将軍が居ると言う。
 トルネアスの闘技場では年に2度ほど大きな闘技会があるのだが、その開催が時期が迫っている。
 そして闘技会にトーゾーさんが興味を示し、出来れば参加したいと言い出したので僕等の目的地となった。
 カリッサさんも参加を考えてるそうなので、うちのチームの2人と戦う相手は大変だなあと思う。
 でももしかしたら、カリッサさんやトーゾーさんでも手古摺ったり、或いは勝てない人も参加するんだろうか。
 だとしたらもう、僕には想像も出来ない世界の話だ。
 ちなみに僕も参加してみたらどうかってトーゾーさんに言われたけれど、まわりが強い人ばかりだと恥をかきそうであんまり気は進まない。
 弓の大会も同時開催みたいなのでそっちの方がまだ良いかなあ。
 何にせよ、色んなものが見れる事は多分間違いないだろうから、明日の旅立ちは楽しみだった。



 ユーディッド
 age13
 color hair 茶色 eye 緑色
 job 狩人/戦士 rank4(中級冒険者)
 skill
 片手剣5 盾4 格闘術4 弓6 短剣3 逆手武器2
 野外活動5 隠密5 気配察知6 罠3 鍵知識2 調薬2
 unknown 召喚術(ヨルム)
 所持武装 
 鋼のブロードソード(高) 鋼のショートソード×2(高) 複合弓(高) 
 革の小盾(高) 中位魔獣の毛皮マント(高) 革の部分鎧(高) デススパイダーシルクの手袋(最高)


 ヨルム
 age? rank7(上位相当)
 skill 縮小化 巨大化 硬化 再生 毒分泌 特殊感覚 脱皮
 unknown 契約(ユーディッド) 感覚共有(ユーディッド)



 ユーディッドの所持武装が更新されました。

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