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しおりを挟む藪蛇って言葉がある。
藪を突いたら蛇が出て来て困った事になったって意味の比喩表現で、自らの迂闊な行いで厄介な事態を招いてしまった時に使うらしい。
この言葉を最初に聞いた時、出て来るのがヨルムなら別に良いじゃないかとか、少しお馬鹿な感想を抱いた覚えがあった。
でも実際に自分の行動で厄介事を招き寄せてしまうと、まあ溜息しか出ない物だ。
喉を狙って突き出された細剣を、僕は右手の剣で外に払い、剣を振った勢いのままに左足を、左手を、そして握った短剣を前に。
ずぶりと、覆面を被った男の腹に、突き出した僕の短剣が突き刺さる。
けれども明らかに致命傷となるであろう深手を負いながらも、男は腹に短剣を突き刺したまま、傷口が広がる事も厭わずに反撃に……、出ようとして僕に首を刎ねられた。
彼等が確実に息の根を止めるまで抵抗を止めない事は、幾度も相手にして既に充分知っていたから。
剣を振るって血を払えば、戦闘の終了を察した死体の処理班がやって来る。
確かに暖かな血が通っているのに、アンデッドとまるで変らぬ敵との戦闘を終え、僕はもう一度大きく溜息を吐く。
アンデッドを用いた侵攻が膠着状態に陥れば、アイアスは、正確にはアイアスを乗っ取ったであろう惑乱と犠牲の邪教団は次は人を使った手を打って来るだろう。
その僕の予想は的中する。
勿論その考えに至ったのは僕だけでは無く、僕が話を持って行った時は既にパラクスさんは既に本部に掛け合って人間に対しての警戒を行う人材の手配をしていたのだ。
まあでも僕が自分で其処に思い至ったのが嬉しかったらしく、パラクスさんにはとても褒められた。
しかしこの問題は簡単に公に出来る類の物じゃ無い。
膨大な数の敵との戦いに、オリガの町を守る人達は体力だけじゃ無く心も消耗させられている。
倒せど倒せど尽きぬ敵には、この戦いに終わりが来るのかという不安を抱かずにいられないだろう。
それでも尚、オリガを守る人達が団結して士気高く居られるのは、それは敵が明確でアンデッドという邪悪だからだ。
敵がアンデッドである以上話し合いの余地は無く、負ければ自分の命も大切な人の命も奪われ、それどころか骸はアンデッドとして甦らされ、人としての尊厳も踏み躙られるだろう。
だからこそ人は何とか不安を押し殺し、団結して敵に立ち向かってる。
戦いが続く現状に麻痺しつつはあるけれど、オリガの町の状態は決して余裕がある訳じゃ無い。
もし其処に、隣人に敵国の工作員が混じって居るかも知れないなんて噂が流れたら、疑心暗鬼、不信不安の種が蒔かれてしまう。
そうなれば敵だけを向いて戦えない人が、多かれ少なかれ出る筈だ。
そしてそれが更に疑心を呼び……、なんて事もあり得なくは無かった。特に今回の敵はその手の感情を操るのに長けた敵なのだから。
故にアイアスから送られて来るであろう人の工作員への対処は、確実に、速やかに、あまり大事にせず、毅然として行う必要がある。
「人海戦術は以ての外だ。そもそもそんなに人の余裕も無い。理想は機転の利く少数精鋭だよ。例えば自分でアイアスの次の手に気付けるような、ね」
尊敬する仲間のパラクスさんに、そんな風に言われてしまえば、僕に断る事なんて出来やしない。
この人は何時も、僕を子供扱いしないで冒険者として、こなせるギリギリの仕事を割り振って来るから。
藪を突いて出て来たのはヨルムじゃ無くて、厄介な仕事だったと言う話。
あまり胸を張れた事じゃないけど、僕はある程度だが盗賊としての技術も持っている。
そして他人には言えないけれど、ヨルムの目を借りれば邪教団に惑わされた人を見抜く事も出来るのだ。
アイアスからの工作員を発見するのに、僕とヨルムのコンビ程適した存在はそうそう居ないだろう。
多分僕から工作員の話を言い出さなくても、遠からずパラクスさんには頼まれた可能性はとても高い。
まあどの道、戦いに勝つ為にはやらねばならぬ事である。
アンデッドからの攻撃に注意が向けられた隙を突いて紛れ込もうとする工作員の処理を行いながらも、防壁の守備にも顔は出す。
防壁の守備隊には結構名前と顔が売れているので、あまり急に抜けると不信に思われかねないし、己惚れる訳じゃ無いけど僕が参加すれば戦いでの守備隊の犠牲者は確実に減ったから。
部隊長格は僕の事情を知っているので、ある程度の融通は利かせてくれているけれど、それでもとても忙しい。
夜だけでなく昼も、取り溢して町に侵入した工作員を探す為の見回りをする。
僕と班を組んでフォローしてくれるのは、オリガの盗賊ギルドのメンバー達だ。
以前にオリガの町での事件を解決した際に一度協力して貰った事があるので、既に顔は見知ってた。
この班以外にも工作員の対処に当たってる人達は居るらしいけど、今の所一番対処数が多いのは僕等らしい。
「ねぇヨルム。あの人多分そうだよね」
僕の言葉に視線の先をヨルムも目をやり、そして敵意を剥き出してシャーと鳴く。残念ながら確定だ。
見付けた工作員は、大胆にも、そして厄介にも出撃した突撃隊の帰還に混じって町の中に入って来てた。
見つかる事を全く怖れた風もない堂々とした様子に、僕は顔を顰める。
彼等は邪教団にとっては使い捨ての道具でしかない。
僕も当初は捕縛を試みた。
惑わされ、洗脳されているのなら、解呪すればアイアス国内の状況を知る情報源になると思ったし、何より救える可能性があるのなら救った方が良いと考えたから。
しかし直ぐに僕はその考えが甘かった事を思い知る。
基本的に彼等は、一度潜入が発覚したなら己の命が尽きるまで抵抗し、少しでも多くの人間を殺そうと試みるのだ。
仮に捕縛に成功しても、服毒しての自殺すら行う。
パラクスさん曰く、恐らく術だけでなく薬物等も用いての洗脳が施されてる可能性が高く、情報を引き出したり、ましてや救うなんて不可能に近いだろうとの事だった。
大事にせず、速やかに限られた人員で侵入者の処理をしている以上、無駄になる可能性が高い不必要な危険は冒せない。
自分の命や、班の人間の命を天秤にかければ、僕は直ぐに捕縛を諦めた。
本当に、色んな意味で疲れる仕事だ。
他国からの援軍が到着して戦況に余裕が出たなら、取り敢えずは休みが欲しいと切に願う。
僕は体力を回復させる錬金薬、ポーションを口に含み、味に辟易しながらも飲み下す。
パラクスさんより預かったポーションは、味は悪いが効果は凄い。
身体に活力が戻れば、沈みがちな気分も多少はマシになった。
さてじゃあ援軍が来るまで持たせる為にも、もう一仕事頑張るとしよう。
僕は心を殺して気配を殺して、紛れ込んだ侵入者の尾行を開始する。
ユーディッド
age14
color hair 茶色 eye 緑色
job 狩人/戦士 rank6(中級冒険者)
skill
片手剣6(↑) 盾4 格闘術4 弓7 短剣4 逆手武器3(↑)
野外活動6 隠密6 気配察知6 罠4 鍵知識3 調薬2 乗馬1
unknown 召喚術(ヨルム) 集中(射撃精度上昇、精密作業時の精度上昇)
所持武装
鋼のブロードソード(高) 鋼のショートソード×1(高) ドワーフ製の複合弓(最高)
革の部分鎧(高) デススパイダーシルクの手袋(最高)
ヨルム
age? rank8(上位相当)
skill 縮小化 巨大化 硬化 再生 毒分泌 特殊感覚 脱皮
unknown 契約(ユーディッド) 感覚共有(ユーディッド) skill共有(硬化・ユーディッド)
此れまでの訓練と経験によりユーディッドの片手剣、逆手武器が上昇しました。
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