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しおりを挟む今現在、オリガの町が持ち堪えれているのは、初戦が凌げて防衛体制の構築が間に合ったからだ。
もし仮に国境付近の砦守備隊長が撤退せずに、砦の死守に拘って兵員を損耗していたなら、戦力の不足で死者の群れを防げる防衛体制は築けなかった。
ミステン公国が元々魔物との戦いに慣れていた事も大きいだろう。
アンデッドを用いた侵攻なんて、奇策であり奇襲である。
その奇襲を受けた結果、シルバル公国は大きく攻め込まれてしまっているのだ。
此処からはパラクスさんが語ってくれた事だけど、恐らくシルバル公国はもう持たない、滅ぼされてしまう公算が高い。
他国からの援軍は間に合わないと思われた。
ミステンは人と異なるモノへの戦闘の経験を多く積んでいたので、奇策にして奇襲を打ち破り、侵攻に対して持ち堪える事が出来ている。
しかしだ。
持ち堪えている状態とは、言い換えれば膠着状態に陥ったとも言えてしまう。
敵は膨大な数と疲労なんて言葉を知らないアンデッドの群れ。引き換え此方は城壁を利用しようと、心も身体も徐々に疲弊して行く人間だ。
どちらが有利かなんて事は言うまでもない。
「ん~、じゃあこの町は陥ちる可能性が高いって事か?」
質問はクレンからでは無く、いつの間にか周りに集まって熱心に僕の話を聞いていた他の冒険者からだった。
公共の場なのに、少し語り過ぎてしまったようである。久しぶりの友人との再会と、浴場の熱気で知らず知らず気分が高揚していたらしい。
とはいえ今更話を無かった事には出来やしないだろう。
僕は首を横に振る。
「いえ、このまま行けば他国からの援軍が充分間に合うので陥ち無いと、僕も僕の仲間も思ってます。けれどもしかしたらもう一つ山を越える必要はあるかも知れません」
さっきクレンにガストの出現を聞いたが、間違いなく攻め手のアンデッドは種類が増えている。
つまりアンデッドの創造主たる、邪教徒達が此処の戦線に注力し始めたって事だろう。
アンデッド達だけなら、ダラダラと力攻めが続いたかもしれない。でもアンデッドの後ろに居るのは人間なのだ。
ただ単に、此方側に新しい戦力、他国からの援軍がやって来るのを待つ筈が無い。
当然何らかの手を打って来ると考えるのが自然だった。
例えば、ほぼ決着が付いてしまったシルバル公国を攻めていたアンデッドナイトを此方に向ける等。
いや以前の僕ならこんな事は考えもつかなかっただろうが、今のチームのメンバーと過ごす様になって、パラクスさんとのお喋りする機会が増えてからは色々考えさせられてる。
何せトーゾーさんはこの手の話に興味が無いし、カリッサさんも割と前しか見ない性格だ。
自然とパラクスさんと難しい話をする担当は僕になった。
まあ最近はアーチェットさんも交えての三人での会話が多かったけど、そんな彼女も今はライサで錬金薬の作成に励んでると事だろう。
さて置き、実際にアンデッドナイトが再びミステンへの戦線に加わった場合、戦況は大分厳しくなると思われる。
その戦闘力以上に、指揮官として全体を統率された場合が厄介なのだ。
ゾンビにデスハンド、そしてワイトだけでもアンデッドナイトが統率すれば恐ろしい軍隊になったのに、今は更にグールやガストやゴースト、その他のアンデッドが加わっていた。
纏まりの無い攻めだからこそ様々なアンデッドにも対処を行えているが、纏まりを得て軍として攻められたならば、例え町の防壁があっても苦戦は免れないだろう。
勿論前回と同じ手段は通用しないだろうし、今も攻められているであろうシルバルには悪いが、アンデッドナイトは出来れば此方側の戦場に回って来て欲しくない相手である。
しかし意気の下がる話ばかりをするのも良くは無い。
此処で話を終えたなら、もしかすればアンデッドナイトが来るかもという嫌な噂だけが流れる可能性があった。
けれどだからこそ、僕は一番明るい話題を最後の最後に取っている。
今までの嫌な話を全て塗り潰す為に。
「でも大丈夫ですよ。トルネアスからの軍はいち早く動いて既に此方に向かっていると聞きますし、ハルサウスの冒険者ギルドは軍より先に身軽な冒険者を纏めて派遣してくれるそうですよ」
この付近でも有数の力を持つトルネアスは、他のどの国よりもミステンからの救援要請に軍を動かしたそうだ。まるで事前に準備していたかと思われるほどの速度で。
多分だが、実際に事前に準備してくれていたんだと思う
あの国の将軍の一人、弓姫のフィオさんは『ミステンからの要請無しには私達は動けない』と言ってたけど、要請が来るまで準備をしないとは言って無かったから。
本当にあの人には幾ら感謝しても足りなかった。
そしてハルサウスだが、あの国は古代都市ミズルガを擁する為に冒険者の数が非常に多いし質も高い。
軍も治安維持の為に実力は高いと聞くけれど、兎に角冒険者だけでも先に援軍として来てくれると言うのは非常に心強い話なのだ。
熱い浴場の中で語り過ぎた為に少しのぼせ気味になりながら、僕は貸し出された家への道を歩く。
茹った身体に冷たい水を浴びるのはとても気持ちが良かったし、今も涼しい風が心地よい。
ヨルムも機嫌が良さそうに、頭の上で風に体を晒してる。
僕やクレンが抜けた後も浴場の中では話が盛り上がっていたけれど、あの人達は大丈夫なんだろうか。
クレンとはまた話をしようと約束して、今日の所は別れた。
でもクレンやあの人達と話していて一つ思いだし、そして危機感を感じた事がある。
アンデッドの軍隊の衝撃ですっかり忘れてしまっていたが、以前にオリガを攻め落とそうと工作していたのは『惑乱と犠牲の邪神』に仕える神官だった。
確かに犠牲として捧げられた人々の身体がアンデッドになっていると考えれば、彼の邪神の信者が関与している事は疑う余地も無い。
だがアンデッドの軍勢による力押しが行き詰まったなら、もう一つの特性である惑乱を行使してくる可能性は高いと思う。
この町は今、アンデッドは最大限の注意を向けているが、同じ人間に対しての警戒はとても低い状態だ。
勿論こんな話をおいそれと言って回ったりは当然出来やしない。
けれど仲間達には、夕の食事の時に話すとしよう。
パラクスさんは冒険者ギルドに請われて本部での仕事もしているし、きっと対策を考えてくれる筈。
不安要素は多いけど、僕は今回の戦いが嫌じゃない。
いや正直に言えば、少し不謹慎だとは思うけど、僕はこの戦いを楽しんでさえいた。
オリガの次にあるライサの町を守ると言う分かり易い目的があって、存分に自分の力も活かせている。
少しは恐怖も感じていが、それよりも高揚が勝った状態だ。
何より生きてるって実感出来るから、武器を振う事に躊躇いは無い。
けれど戦場で調子に乗るとあっさり死ぬとも聞いているし、冷静に、落ち着いて、成すべきをこなそう。
さしあたっては、そう、夜に備えて睡眠を取る事が先決かな。
クレン・ライシルト(guest)
age16
color hair 茶色 eye 青色
job 戦士 rank5(中級冒険者)
skill 両手槍5 片手槍5 片手剣2 盾3 格闘術3 槍投擲4 野外活動3 応急手当4 その他
unknown なし
所持武装 鋼鉄製のロングスピア―(高) 祝福された銀のロングスピア―(並) 鉄のジャベリン×2(並) 鉄のチェインメイル(並)
ゴースト(enemy)
rank3~4
生きる者を襲う怨霊。
実体を持たない為に物理攻撃が意味を成さないので神聖魔法や魔術等での対処が推奨される。
例外として銀やミスリル等で作成された武器は一定の効果があり、祝福や魔術付与を受けた武器ならば劇的な効果を発揮する。
グール(enemy)
rank3
食屍鬼とも呼ばれるアンデッドの一種。
姿形はゾンビに似るが、ゾンビよりも素早く動け、且つ接触攻撃で相手に麻痺を与える力を持っている。
また僅かだが知能も持つ。
ガスト(enemy)
rank5
グールの上位種とされるアンデッド。
姿形はグールと比べてより人に近しい姿を持ち、力も動きの素早さもグールより高い。
接触攻撃で相手に麻痺を与える力もより強力になっており、更に知能も高く狡猾である。
クレン・ライシルトのステータスが更新されました。
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