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オマケの章5
128 此の空を飛ぶ
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其の世界の大地は全てが空を飛んでいる。
大きな大陸も、小さな島も、皆空を飛んでいて、下がどうなっているかは誰も知らない。
落ちれば、別の世界に放り出されるとも伝えられるが、其れを確かめて戻った者は誰もいないのだ。
だから当たり前の話だけど、島も大陸も、互いの行き来は不便だった。
他の島や大陸へと渡る手段は唯一つ。
世界の始まりから存在するとされる、ガルムラの大鳥の背に乗る事のみ。
大魔術師が飛行の魔術で大陸間を移動したなんて伝説も数多く存在するが、その殆どは眉唾だとされている。
ガルムラの大鳥は、此の世界に浮かぶ島や大陸を、一日に一つだけ移動する巨大な幻獣だ。
人を背に乗せ次の島や大陸へと渡ったならば、其処で翌日まで翼を休め、また次の島や大陸へと人を運ぶ。
此の世界に浮いてる島や大陸の総数は二十一個なので、ガルムラの大鳥は二十一日に一回やって来る。
故に此の世界の人々は二十一日を一周期と呼び、十五周期を一年としていた。
其れ位に此の世界にとっては、ガルムラの大鳥は大事な存在とされていたのだ。
つい先日までの話ではあるが。
全ての発端は、浮遊大陸の一つに異世界の人間がやって来た事。
運悪く世界の裂け目に落っこちて、奇跡的な確率で此の世界に引っ掛かって助かったのか、もしくは自力で世界を移動したのか、或いは何者かに送り込まれたのか、其れは定かではない。
因みに此の世界の神性は創世後に眠りに付いているので、此方側から招いたって可能性は先ず無いだろう。
いずれにせよ、此の世界にやって来た異邦人はこう言った。
「……何て不便な世界なんだ」
そう、彼の目には三週間に一度しか、其れも決まった流れでしか移動が叶わないガルムラの大鳥は、とても不便な輸送システムに映ったのだ。
異邦人の発言や考え方は、彼が迷い込んだ浮遊大陸の人間達に衝撃を与える。
ガルムラの大鳥が当たり前だった此の世界の人間は、其れ以外の移動手段なんて考えた事もなかったし、ましてや周期の流れに逆らって移動するなんて発想はどうやっても出て来ない物だったから。
異世界の物の考え方に影響を受けた人々は、異邦人の手を借りながらも試行錯誤を始めた。
掛かった期間は二十数年。
其の浮遊大陸の人々は、ガルムラの大鳥の力を借りない移動手段、飛行船を生み出す。
だが最初は不便を克服する為だけに研究され始めた其れは、完成が近付くにつれて大きく目的を変えていた。
何しろ此の世界で、其の浮遊大陸にしか存在しない革新的な技術だ。
其れを上手く使えば、此の世界を制する事だって決して不可能じゃないだろう。
元々其の浮遊大陸は、此の世界に浮かぶ大陸の中でも一、二を争う程の大きさだったので国力も高い。
彼等は自分達の住む大陸を『王の大陸』と呼び、世界の制覇を目指して動き始める。
飛行船と、其れに搭載する魔術の大砲をも完成させた王の大陸一派が最初に行ったのは、ガルムラの大鳥の排除。
ガルムラの大鳥さえ居なければ、他の大陸から王の大陸に移動する手段は無くなり、一方的に他所の大陸を攻める事が出来るからだ。
二十一日に一回の其の日、王の大陸を飛び立つガルムラの大鳥には一人の人間も乗り込まず、大鳥の向かう先には十数隻の飛行船が待ち受けていた。
自分以外に空を飛ぶ存在を見て、僅かに驚いたガルムラの大鳥だったが、取り敢えずは何時もの通りに先の大陸を目指そうとし、……そして一斉に放たれた砲撃をその身に受ける。
無数に浴びせられる砲撃に、ガルムラの大鳥は成す術も無く傷付いて行く。
否、正確には成す術が無かった訳じゃなく、飛行船の上に人が乗っているのを見て反撃出来なかったのだ。
もし仮にガルムラの大鳥がその気になれば、巨大な質量での体当たりは飛行船を一撃で沈めただろう。
だが其れをしてしまえば、飛行船に乗り込んだ多くの人間は確実に死ぬ。
自分以外に同類の居ないガルムラの大鳥は、此の世界が生まれてからずっと背に乗せて来た人間と言う生き物に深い愛着を持っていたから、反撃を躊躇う間に其の翼は傷付き過ぎて、自らの巨体を支え切れなくなってしまった。
飛ぶ力を失って落下して行くガルムラの大鳥。
飛行船に乗り合わせた人間達は、其れを見て歓声を上げる。
下に落ちてしまったなら、世界から放り出されて、もう誰も戻れない。
其れはガルムラの大鳥であろうとも同じだ。
けれどもガルムラの大鳥は、創世の時、力を使い果たして眠りに付く前の神性に、密かに教えられた呪文があった。
生まれて初めて感じる強い痛みと、落下の恐怖に震えながら、悲鳴の様に呪文を念じて鳴くガルムラの大鳥。
其の呪文で呼び出された僕は、呼ばれて直ぐに召喚主が落下して行ってしまうと言う事態に少し焦りはしたけれど、何とか掴んで落下を止める。
魔法で傷を癒してやれば、大喜びで次の大陸に向かおうとするガルムラの大鳥を必死で宥め、少し僕は思い悩む。
だってまだ何も解決していない。
どうやら彼は覚えてない様だが、実は僕がガルムラの大鳥と会うのは此れが二度目だった。
一度目は三千年前、此の世界が生まれた創世期。
未だ眠りに付く前の神性に呼び出された僕は、此の世界の創世を、もっと詳しく言えば大陸を浮遊させ続ける為の、魔力循環のシステム構築を手伝ったのだ。
故に神性はガルムラの大鳥に、僕を指定して呼び出す呪文を教えていたのである。
其の際に前払いで対価だって支払われているのだから、問題を解決しないままにサヨウナラって訳にはいかない。
ガルムラの大鳥の願いは、神性が目覚める其の日まで、此の世界の空を決められた通りに飛ぶ事だ。
だけど今のまま其れをしても、もう一度王の大陸の飛行船に襲われるだけだろう。
王の大陸を粉々に打ち砕く事位は簡単だけれど、恐らくガルムラの大鳥は其れを望まない。
そんな解決策で良いのなら、ガルムラの大鳥は飛行船に対して反撃していた。
仮に飛行船と技術のみを消した所で、王の大陸の人間は、必ずもう一度飛行船を開発する。
一度進んだ時計の針は、悪魔の力でも戻らないから。
故に取るべき解決策は、時計の針を更に進める事だ。
僕は神性の名を借り、王の大陸の人間達に神罰を下す。
友人とは呼べないけれど、全く知らない仲でも無いのだから、名前を借りる位は許される。
『空を渡る手段を求めるのは構わないが、我が眷属たる大鳥を傷付けし事は許せぬ。よって王の大陸を僭称せし汝等に罰を下す』
其の言葉を世界中に響かせて、僕は先ず全ての飛行船を王の大陸から取り上げて、他の大陸へとばら撒いた。
空を渡る手段は残すが、独占はさせない。
他の大陸も現物があれば飛行船を解析し、開発技術を手にする筈。
飛行船は正しく当初の目的通り、便利な移動手段となる。
無論全ての人が飛行船の恩恵に与れる訳じゃ無いだろうから、ガルムラの大鳥に乗る人だって居なくなったりはしないだろう。
けれども此れだけでは、罰としては軽過ぎだった。
人が空を飛ぶ手段を手に入れても、二度とガルムラの大鳥を傷付けようとは思わなくなる程の、大きな神罰、大きな脅しが必要なのだ。
だから僕は、上に乗った人間達が巻き込まれないように注意をしながら、王の大陸を真っ二つに割る。
そして簡単には行き来出来ない様に二つになった大陸の距離を離す。
他の誰かが同じ事をすれば浮遊力を失った大陸は落下してしまうだろうけど、僕は創世を手伝ったから、浮遊大陸の浮かぶシステムは把握していた。
少しばかり思い出すのに時間は掛かってしまったが、大陸が落下する前には思い出せたのだから問題は無い。
そうして、世界の時計の針は少し進んだ。
神罰と称して大陸を割ってから、一年程は様子を見たが、ガルムラの大鳥は今日も元気に空を飛んでる。
二つに割れてしまった王の大陸に関しては、何方に行けば良いのか偶に迷う様だが、其の時の気分で決めてるらしい。
周期は変わらず二十一で、二つに割れてしまった大陸は、其の日にならないとガルムラの大鳥が来るか来ないかわからないって状況だけど、まあ其れも含めて罰って事で良いだろう。
空を行き来する飛行船も、少しずつだが開発に成功する大陸が増えて来た。
降って湧いた力だから、今の所は其れを使って悪さをしようって者は現れてはいない。
勿論ずっとそうではないだろうけれど、ガルムラの大鳥に並んで空を飛ぶ飛行船の姿は僕の心を和ませる。
まるでおっかなびっくり後を付いて飛ぶ小鳥の様で。
後はまあ、早目に寝坊助の神性が起きる事を願う位で、僕の役目は終わりだろう。
大きな大陸も、小さな島も、皆空を飛んでいて、下がどうなっているかは誰も知らない。
落ちれば、別の世界に放り出されるとも伝えられるが、其れを確かめて戻った者は誰もいないのだ。
だから当たり前の話だけど、島も大陸も、互いの行き来は不便だった。
他の島や大陸へと渡る手段は唯一つ。
世界の始まりから存在するとされる、ガルムラの大鳥の背に乗る事のみ。
大魔術師が飛行の魔術で大陸間を移動したなんて伝説も数多く存在するが、その殆どは眉唾だとされている。
ガルムラの大鳥は、此の世界に浮かぶ島や大陸を、一日に一つだけ移動する巨大な幻獣だ。
人を背に乗せ次の島や大陸へと渡ったならば、其処で翌日まで翼を休め、また次の島や大陸へと人を運ぶ。
此の世界に浮いてる島や大陸の総数は二十一個なので、ガルムラの大鳥は二十一日に一回やって来る。
故に此の世界の人々は二十一日を一周期と呼び、十五周期を一年としていた。
其れ位に此の世界にとっては、ガルムラの大鳥は大事な存在とされていたのだ。
つい先日までの話ではあるが。
全ての発端は、浮遊大陸の一つに異世界の人間がやって来た事。
運悪く世界の裂け目に落っこちて、奇跡的な確率で此の世界に引っ掛かって助かったのか、もしくは自力で世界を移動したのか、或いは何者かに送り込まれたのか、其れは定かではない。
因みに此の世界の神性は創世後に眠りに付いているので、此方側から招いたって可能性は先ず無いだろう。
いずれにせよ、此の世界にやって来た異邦人はこう言った。
「……何て不便な世界なんだ」
そう、彼の目には三週間に一度しか、其れも決まった流れでしか移動が叶わないガルムラの大鳥は、とても不便な輸送システムに映ったのだ。
異邦人の発言や考え方は、彼が迷い込んだ浮遊大陸の人間達に衝撃を与える。
ガルムラの大鳥が当たり前だった此の世界の人間は、其れ以外の移動手段なんて考えた事もなかったし、ましてや周期の流れに逆らって移動するなんて発想はどうやっても出て来ない物だったから。
異世界の物の考え方に影響を受けた人々は、異邦人の手を借りながらも試行錯誤を始めた。
掛かった期間は二十数年。
其の浮遊大陸の人々は、ガルムラの大鳥の力を借りない移動手段、飛行船を生み出す。
だが最初は不便を克服する為だけに研究され始めた其れは、完成が近付くにつれて大きく目的を変えていた。
何しろ此の世界で、其の浮遊大陸にしか存在しない革新的な技術だ。
其れを上手く使えば、此の世界を制する事だって決して不可能じゃないだろう。
元々其の浮遊大陸は、此の世界に浮かぶ大陸の中でも一、二を争う程の大きさだったので国力も高い。
彼等は自分達の住む大陸を『王の大陸』と呼び、世界の制覇を目指して動き始める。
飛行船と、其れに搭載する魔術の大砲をも完成させた王の大陸一派が最初に行ったのは、ガルムラの大鳥の排除。
ガルムラの大鳥さえ居なければ、他の大陸から王の大陸に移動する手段は無くなり、一方的に他所の大陸を攻める事が出来るからだ。
二十一日に一回の其の日、王の大陸を飛び立つガルムラの大鳥には一人の人間も乗り込まず、大鳥の向かう先には十数隻の飛行船が待ち受けていた。
自分以外に空を飛ぶ存在を見て、僅かに驚いたガルムラの大鳥だったが、取り敢えずは何時もの通りに先の大陸を目指そうとし、……そして一斉に放たれた砲撃をその身に受ける。
無数に浴びせられる砲撃に、ガルムラの大鳥は成す術も無く傷付いて行く。
否、正確には成す術が無かった訳じゃなく、飛行船の上に人が乗っているのを見て反撃出来なかったのだ。
もし仮にガルムラの大鳥がその気になれば、巨大な質量での体当たりは飛行船を一撃で沈めただろう。
だが其れをしてしまえば、飛行船に乗り込んだ多くの人間は確実に死ぬ。
自分以外に同類の居ないガルムラの大鳥は、此の世界が生まれてからずっと背に乗せて来た人間と言う生き物に深い愛着を持っていたから、反撃を躊躇う間に其の翼は傷付き過ぎて、自らの巨体を支え切れなくなってしまった。
飛ぶ力を失って落下して行くガルムラの大鳥。
飛行船に乗り合わせた人間達は、其れを見て歓声を上げる。
下に落ちてしまったなら、世界から放り出されて、もう誰も戻れない。
其れはガルムラの大鳥であろうとも同じだ。
けれどもガルムラの大鳥は、創世の時、力を使い果たして眠りに付く前の神性に、密かに教えられた呪文があった。
生まれて初めて感じる強い痛みと、落下の恐怖に震えながら、悲鳴の様に呪文を念じて鳴くガルムラの大鳥。
其の呪文で呼び出された僕は、呼ばれて直ぐに召喚主が落下して行ってしまうと言う事態に少し焦りはしたけれど、何とか掴んで落下を止める。
魔法で傷を癒してやれば、大喜びで次の大陸に向かおうとするガルムラの大鳥を必死で宥め、少し僕は思い悩む。
だってまだ何も解決していない。
どうやら彼は覚えてない様だが、実は僕がガルムラの大鳥と会うのは此れが二度目だった。
一度目は三千年前、此の世界が生まれた創世期。
未だ眠りに付く前の神性に呼び出された僕は、此の世界の創世を、もっと詳しく言えば大陸を浮遊させ続ける為の、魔力循環のシステム構築を手伝ったのだ。
故に神性はガルムラの大鳥に、僕を指定して呼び出す呪文を教えていたのである。
其の際に前払いで対価だって支払われているのだから、問題を解決しないままにサヨウナラって訳にはいかない。
ガルムラの大鳥の願いは、神性が目覚める其の日まで、此の世界の空を決められた通りに飛ぶ事だ。
だけど今のまま其れをしても、もう一度王の大陸の飛行船に襲われるだけだろう。
王の大陸を粉々に打ち砕く事位は簡単だけれど、恐らくガルムラの大鳥は其れを望まない。
そんな解決策で良いのなら、ガルムラの大鳥は飛行船に対して反撃していた。
仮に飛行船と技術のみを消した所で、王の大陸の人間は、必ずもう一度飛行船を開発する。
一度進んだ時計の針は、悪魔の力でも戻らないから。
故に取るべき解決策は、時計の針を更に進める事だ。
僕は神性の名を借り、王の大陸の人間達に神罰を下す。
友人とは呼べないけれど、全く知らない仲でも無いのだから、名前を借りる位は許される。
『空を渡る手段を求めるのは構わないが、我が眷属たる大鳥を傷付けし事は許せぬ。よって王の大陸を僭称せし汝等に罰を下す』
其の言葉を世界中に響かせて、僕は先ず全ての飛行船を王の大陸から取り上げて、他の大陸へとばら撒いた。
空を渡る手段は残すが、独占はさせない。
他の大陸も現物があれば飛行船を解析し、開発技術を手にする筈。
飛行船は正しく当初の目的通り、便利な移動手段となる。
無論全ての人が飛行船の恩恵に与れる訳じゃ無いだろうから、ガルムラの大鳥に乗る人だって居なくなったりはしないだろう。
けれども此れだけでは、罰としては軽過ぎだった。
人が空を飛ぶ手段を手に入れても、二度とガルムラの大鳥を傷付けようとは思わなくなる程の、大きな神罰、大きな脅しが必要なのだ。
だから僕は、上に乗った人間達が巻き込まれないように注意をしながら、王の大陸を真っ二つに割る。
そして簡単には行き来出来ない様に二つになった大陸の距離を離す。
他の誰かが同じ事をすれば浮遊力を失った大陸は落下してしまうだろうけど、僕は創世を手伝ったから、浮遊大陸の浮かぶシステムは把握していた。
少しばかり思い出すのに時間は掛かってしまったが、大陸が落下する前には思い出せたのだから問題は無い。
そうして、世界の時計の針は少し進んだ。
神罰と称して大陸を割ってから、一年程は様子を見たが、ガルムラの大鳥は今日も元気に空を飛んでる。
二つに割れてしまった王の大陸に関しては、何方に行けば良いのか偶に迷う様だが、其の時の気分で決めてるらしい。
周期は変わらず二十一で、二つに割れてしまった大陸は、其の日にならないとガルムラの大鳥が来るか来ないかわからないって状況だけど、まあ其れも含めて罰って事で良いだろう。
空を行き来する飛行船も、少しずつだが開発に成功する大陸が増えて来た。
降って湧いた力だから、今の所は其れを使って悪さをしようって者は現れてはいない。
勿論ずっとそうではないだろうけれど、ガルムラの大鳥に並んで空を飛ぶ飛行船の姿は僕の心を和ませる。
まるでおっかなびっくり後を付いて飛ぶ小鳥の様で。
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