転生したら悪魔になったんですが、僕と契約しませんか?

らる鳥

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第三章『年を経た友』

23 再会と七つの月

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「友よ、素晴らしい成長だな。部下からも、召喚先からの評判も良いと聞く。君の良い噂を聞けるのは私も嬉しい」
 僕の固有魔界で優雅にお茶を口に運ぶ友人、悪魔王グラーゼンの言葉に、僕も口元が綻ぶ。
 派遣召喚を引き受けてるのは僕自身の為なのだが、其れでも友人が喜んでくれるなら、やっぱり僕も嬉しいのだ。
 恐らく割りの良い内容の召喚を回してくれているからだろうが、派遣召喚を幾つも幾つもこなす間に僕の力も大分増し、今や高位悪魔を名乗って問題ない程度の力を持ってる。
 ……まあ戦い下手は変わらないので、実際の戦闘になれば到底他の高位悪魔には勝てないだろうけれども。
 それに短期の派遣召喚は其れは其れで楽しいのだが、そろそろ普通の召喚もされたく思う。
 ベラと悪魔化に関しての相談や、貰ったピクシーの召喚石、更には食材の補充等、やりたい事が溜まってる。

「ふむ、なら少し長く滞在出来そうな召喚をまわしても……。おや、友よ、中々に良いタイミングだ」
 グラーゼンの言葉と同時に、僕の身体が何かに引かれた。
 何で僕より早く、僕の召喚を察知出来るのかは不思議に思うが、確かにグラーゼンの言う通り中々に良いタイミングと言えるだろう。
 しかもこの召喚の感じ、呼び声は、どこか懐かしさを僕に感じさせる。
「嬉しそうだな、友よ。君が長く此処を空けるのは少し寂しく思うが、そう、土産話を楽しみにしている。さぁ、行って来たまえ」
 そんな僕の様子に、友であるグラーゼンは何かを感じたのだろうか。
 でも其れを問う暇は無く、僕は彼の言葉に一つ頷き、呼び声に身を任せた。
 僕の名を呼ぶ、その声に。



「御婆ちゃん、駄目よ。やめて!」
 召喚された僕の耳に飛び込んで来る、少女の声。
 瞼を開けた僕の視界に飛び込んで来るのは、深手を負って地に倒れた老女と、其の老女を僕から庇おうとするかの様に前に立つ十四、五歳位に見える少女。
 当りを覆う魔力は濃く、思わず空を見上げた僕は、
「うわぁ、マジかー……」
 其処に広がる光景に思わず茫然と呟いた。
 だって広い夜空には、七つの月が煌々と輝いていたのだから。

「そんな、この魔力、完全に私の手には負えないわ。御婆ちゃん一体何を喚んだのよ……」
 絶望に満ちた少女の声に、僕は我に返って視線を空から戻す。
 ちなみに足元に契約の魔法陣は無い。
 つまり僕は自由に動けてしまうのだ。
 そりゃさぞかし怖いだろう。
 少女の言葉から察するに、どうやら地に倒れた老女が僕を召喚したらしいけど、野外で、契約の魔法陣も無しに悪魔を呼び出すなんて無謀にも程がある。
 ハッキリ言えば、自殺と何も変わらない行為だった。
 ……でも僕、割と契約魔法陣無しで呼び出される事多いなぁ。

 取り敢えず何と言えば怯える少女を刺激せずにいられるだろうかと、言葉を選ぶ僕はその時漸く気付く。
「あれ、えっと、もしかして、アニー?」
 地に伏した老女は、僕を見上げて弱々しく頷いた。
 懐かしさに僕は笑みを浮かべる。
「久しぶりね、レプト君。……お願いがあるの。私はもう駄目だわ。私が死んだら私の魂をあげるから、私の孫を、レニスを守って頂戴」
 でもアニーの言葉の内容はまるで別れの言葉で、またかと僕は思わず溜息を吐きそうになった。
 確かに僕は悪魔だけれど、其れでも友人の魂を貪り食いたいとは決して思わないのだ。
 もし悪魔になりたいから、魂を受け取って配下の悪魔として生み直して欲しいってなら考えなくもないけれど、今の言葉はそうじゃない。

「うん、何が駄目なのかはわからないけど、怪我の事? 其れならもう治したよ。アニー、侮らないでくれるかな。僕は悪魔にして、大魔術師グラモンさんの弟子だ。そんな傷位どうって事無い」
 僕は多分、少し怒ってる。
 再会が懐かしく嬉しかった分、その後のアニーの言葉が僕の心に刺さったのだろう。
 アニーを庇う少女、多分彼女が孫のレニスだろう、が怯えているけど、僕は言葉を止められない。
「其れよりも何で皆直ぐに魂をあげるとか言うのかな。僕が友達の魂食べたがってる風に見えるのかな。そう言うの本当にやめてよね。……でも現界の為の契約は必要だから、何か下さいお願いします」
 僕の言葉に、傷口を抑えて茫然としていたアニーの口から、思わずといった感じの笑いが漏れ、其れはやがて大笑いに変わった。
 アニーって笑い上戸だったっけ? 


 現界の為にアニーが長年身に付けていた、彼女の魔力が籠った指輪を受け取り、取り込む。
 追手が来るから先ずは場所を変えようと言うアニーの言葉に従って移動をするが、最初彼女達は何故か徒歩で移動しようとした。
 アニーと言えば収納と門魔術の達人の筈だ。
 不思議に思い、理由を聞くと、この辺り一帯には魔力を感知して分析する結界が張られており、門魔術で移動したとしても、移動先に追手が来るだけなのだと言う。
 成る程と納得した僕だったが、つまり魔力の使用、魔術と言う形で術を使わなければ良いのだと、霊子と魔素を操作して門魔法を発動し、かつてグラモンさんの塔があった場所へと飛ぶ。
 僕がこの世界で覚えてる座標は其処しかない。

 しかし魔力を感知だけじゃなく、分析までして魔術の効果を判明させる結界とは、どうやらこの世界は僕が過ごしていたあの頃よりもずっと複雑になっている様だった。






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