転生したら悪魔になったんですが、僕と契約しませんか?

らる鳥

文字の大きさ
66 / 129
第五章『約束の人』

66 紡ぐ物語と悪意の誤算

しおりを挟む

「矢張り間違いありません。My Lord. 此の世界は五年後に核戦争が起きます。また五年間はそうならない様、操作されています」
 端末も使わずに、直接ネットワークにアクセスしていたヴィラが目を開き、僕に告げる。
 巧の入学式、本来ならば此処に居る筈の無いイーシャの姿の発見から、およそ一年と少しが経つ。

 勿論巧とイーシャは同じクラスとなり、直ぐに仲良くなった。
 何でもイーシャの今の名前は、加納いろはと言うらしい。
 此方の家にも遊びに来るようになり、また加納家にも巧を誘っているらしいが、今の所は巧には断って貰ってる。
 行かせられない理由は単純に、彼方の家にはイーシャと契約した悪魔の配下が居るだろうからだ。
 だが何時までも許可を出さなければ、巧が勝手に行く可能性はあるので、やがては行かせるしかないだろう。
 隠れたピスカに貼り付かせて置けば、万一の際にも恐らく対応は可能な筈。
 二年生になっても同じクラスで、偶然だねって巧といろはの二人は言っていたが、そんな物はこの二人が同じ世界の同時期に生まれた事に比べれば誤差である。
 宝くじが当たる確率だって、其れに比べたら誤差なのだから、小学校の間中、或いは学校さえ違わなければ中学校も高校も、ずっと同じクラスになるのは間違いが無い。

 此れまでの調査と今のヴィラの言葉で、敵の筋書きは大体が読めた。
 今のヴィラの分析は、此の国の中から漫然と調べていただけでは決して辿り着けない結論だ。
 嘗て惑星環境保全AIエデンとして、破壊兵器を用いて世界を滅ぼした経験のあるヴィラだからこそ掴めた、世界崩壊の兆候。
 彼女が其れを間違える筈は無い。

 本来、今回の黒幕の予定では、僕が現れるのはもっと後になる筈だったのだと思う。
 巧といろはが近くに居れば、僕は巧の危機に応じてこの世界に現れて、核戦争の脅威から二人を守る。
 故に巧といろはの道は常に交わり続ける様に操作されていた。
 そして荒廃した世界で一緒にひっそりと暮らす事になるだろう。
 まるであの頃の様に。

 だから核戦争の開始時期は、いろはが十二、十三歳、僕がイーシャと初めてであった年頃の時に始まるのだ。
 だが違うのは、数年後、僕が魔界に戻った頃のイーシャの年齢にいろはがなったら、その時には契約完了として悪魔が彼女の魂を奪いに来る。
 その悪魔は僕の目の前で、長年熟成させたイーシャの魂を、僕の絶望をスパイスにして貪り喰らう。
 まあそんな感じの予定だったに違いない。


 けれども既にその予定は道を外れ出している。
 最初の誤算は核戦争を待つまでも無く、巧を叔父の良治が殺そうと企み、危機に応じてこの世界に僕が来てしまった事だ。
 悪魔の癖に人の悪意を計算に入れずに予定を立てるとは、何たる間抜けか。
 更にもう一つ、此方は本当に致命的な計算ミスだと思うのだけれど、今回の計画は、どうもイーシャの記憶にある僕を基準に立てられているらしい。
 イーシャの知る僕は中位になったばかりで、今とは比べるべくもなく弱く、配下だって居なかった。
 故に其処から百年や二百年の時が流れたとしても、普通は高位悪魔になっていたら急成長と呼ばれて驚かれる成長速度だ。

 まさか悪魔王として、複数の配下を抱える存在になってるとは、到底思って無かったのだろう。
 いや、どうやら今も其れには気付いてない様子である。
 世界を移動出来るアニスに手紙を託し、グラーゼンと連絡を取った所、今回のケースに相当する悪魔は『紡ぎの女侯』と呼ばれる悪魔王。
 今この世界に彼女はおらず、管理は配下の悪魔に任されていた。
 紡ぎの女侯は今も魔界で、数々の縁を紡いでは切りながら、謀略を張り巡らせている。
 此の世界にやって来るのは、イーシャの魂を食う瞬間だけだ。

 だからこそ、今回は僕が勝つ。
 敵の実態が掴め、尚且つ敵は此方を侮り油断していた。
 確かに先手は取られたけれども、ひっくり返す事は不可能じゃ無い。
 相手の喉笛に牙を突き立てるその瞬間まで、息を潜めて、一つずつ準備を重ねる。


 イーシャに、僕以外の悪魔を召喚させてしまったのは、彼女の感情の深さを見誤った僕の失態だ。
 悪魔として未熟だった、人としての感性を多く残していたが故に起きた、痛恨のミス。
 こんなに執着を覚えるのなら、最初から連れ去ってしまえば良かったのに。
 でも同時に思う。
 我欲と甘さの狭間で揺れるからこそ、僕は僕なのだと。
 悪魔王グラーゼンは僕に言った。
 単なる悪魔とも悪魔王とも違うから、僕は面白いと。
 
 最近は大分悪魔としての考え方に馴染んでいたが、其れでも心の底に消えない人としての欠片。
 きっと僕は、其れを抱えたままだから、こんなミスを繰り返すだろう。
 しかし其れが故に僕は、逆鱗に触れて来た敵対者を滅する。
 僕らしさを殺されない為、僕自身が僕らしさを殺さない為、大切なモノは何一つとして譲りはしない。
 手を出せばただでは済まぬと知らしめねばならないのだ。


 僕が胸中を押し隠して平然と日々を過ごす裏では、隠れた配下達が飛び回り、紡ぎの女侯を殺す為の準備は、少しずつだが着実に整いつつあった。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。 だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。 だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。 馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。 俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜

束原ミヤコ
ファンタジー
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。 そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。 だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。 マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。 全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。 それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。 マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。 自由だ。 魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。 マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。 これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

処理中です...