転生したら悪魔になったんですが、僕と契約しませんか?

らる鳥

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第九章『僕と彼女』

105 十五歳

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 初陣から更に半年が経過し、僕は十五歳になった。
 そう、漸く僕とアーネは其々の家の領地を離れ、王都にある学院に通う年齢になったのだ。
 貴族や、ごく一部の特別に優秀と認められた平民のみが通える此の学院は、協調性を養うと言う名目もあって全寮制になっている。
 と言っても実家が上級貴族に分類される僕やアーネには、当然の様に与えられた部屋は個室だったが。
 更に上級貴族の家の子弟は、実家から数名程の使用人を連れて来て生活の世話をさせる事が慣例として許されているらしいが、僕は当然ながらその権利は使わない。

 折角家を離れたのだから、僕は此の世界に来た目的を果たす為に時間を使いたかった。
 即ち神性、ミケーヤの居場所の特定である。
 恐らくミケーヤは、秘匿された神殿か、もしくは人知れぬ地の迷宮の奥と言った、余人が訪れぬ場所で自己強化の為の眠りについてる筈なのだ。

 彼女も僕と同じく実家からの使用人は断ろうとしたが、流石に令嬢であるアーネが身の周りの世話をする者無しと言う訳にはいかなかったらしい。
 二人の使用人を強引にミルシェルス辺境伯爵家から付けられていた。
 使用人達の目がある以上は彼女の探索時間が削られる事は確実である。
 申し訳なさそうにする彼女に、僕は笑って手を振って、学院内でのフォローをお願いしておく。
 魔術を含む教科の大半は、免除試験を受けてクリア出来るだろうが、其れでも学院に顔を出さない日が続けば、当然不信に思われるだろう。
 しかし婚約者であるアーネのフォローがあったなら、疑いは大分抑えられる筈だ。

 実の所、僕とアーネが婚約者である事は、入学前から学院では有名だった。
 半年前の戦争で、学院入学前にも関わらず軍を率いて婚約者の窮地に駆け付けて武功を立てた僕の話は、当時の王都では美談として話題になってたらしい。
 そしてアーネもまた貴族家の令嬢でありながら、鎧兜を身に纏って戦場に立ち、村を襲おうとした蛮族を撃退した話で知られてるそうだ。
 なので僕等は似合いの婚約者として扱われており、まあ学院は彼女に任せれば上手く誤魔化してくれるだろう。

 そう言えば学院とは無関係だが、領地を離れる際は妹のミュールが少しごねた。
 可愛い妹が慕ってくれるのは嬉しいが、其れでもミュールも十歳になり、そろそろ兄離れが必要だと思う。
 父母には早めに婚約者を決める様にとお願いしておいたが、一体どんな相手が選ばれるのだろうか。



 準備しておいた革鎧と、黒い外套を身に纏い、意匠に工夫の無い武骨な鉄剣を腰に吊るす。
 身なりを其れらしくしてから僕が門の魔術で飛んだのは、王都からは遠く離れた、此の国で三番目位に栄える交易都市。
 僕は下調べで得ていた情報通りに迷わず進み、冒険者ギルドへと辿り着く。
 其れなりに栄えてる都市だけあって、冒険者ギルド内もガヤガヤと非常に賑やかだ。
 受付の列に並んで冒険者登録の申し込みを済ませ、試験開始までじっと待つ。

 気配を薄くしている為か、特に絡まれる事も無く、呼び出しに従って試験会場へと進む。
 読み書きや知識、身のこなし、武器の腕前等をチェックされ、僕はその全てを無難にこなす。
 まあ尤も、剣の腕だけは誤魔化すまでも無くあまり上手くは無いけれど。
 ギルド内の数人は、僕が敢えて気配を薄くしている事に気付いた様だが、其れも別に構わなかった。
 どうせ此のギルドには長居をしない。
 僕が欲しいのは旅をするのに便利な冒険者としての身分だけ。
 数個ほど簡単な依頼をこなして活動実績をつくったならば、直ぐに別の都市へと移動する。
 僕の時間は有限なのだから。


 神性、ミケーヤを探す方法。
 其れは物凄く単純で、『霊子と魔素の視認』を行い、神の気配が濃い方へとひたすら旅をするだけだ。
 ただし世界は広く、僕が比較的自由に活動出来る期間は僅か三年。
 もしこの期間内に見つからなければ、僕と彼女は、自力でミケーヤを見付ける事は諦めると決めていた。

 その場合に行われるのが、悪魔王レプトと聖天使カリエラ、即ち僕等の本体の召喚である。
 ミケーヤは世界の守護を司る、悪魔狩りの神性だ。
 強化を終えたミケーヤは、世界の守護って役割からは解き放たれてる可能性が高いけれども、其れでも今は其れを放棄していない。
 故に悪魔王レプトと聖天使カリエラが顕現し、此の世界で暴れたならば、ミケーヤは眠りを中断して出て来ざるを得なくなるだろう。

 けれども此れには二つばかり問題があって、一つは悪魔王レプトと聖天使カリエラが捕獲撃滅の為に動いてるであろうミケーヤを唆した黒幕を取り逃がしてしまう可能性が高くなる事。
 そしてもう一つは、悪魔王レプトと聖天使カリエラが暴れれば、此の世界自体が只じゃ済まないだろう事だった。
 人間としての僕と彼女、マリアルもアーネも、此の件が片付いた後は寿命を迎えるまでは此の世界で人間として過ごす。
 だから出来れば、此の世界が本体達に由って大きく破壊されてしまうのは避けたい。
 其れが僕等二人の、人間としての意思だ。


 数刻後、冒険者としての身分を得た僕は、簡単な配達依頼を初仕事として終え、報告を済ませて寮へと戻った。
 順調な滑り出しに、口元が綻んでいるのが自分でもわかる。
 もう数個あの都市で依頼をこなしたならば、次は隣国を目指して移動しよう。
 此の国を出てしまえば行動の自由は更に広がり、人里離れた場所に辿り着けば飛行の魔術で更に距離を稼げる筈だ。

 夕食後に今日の出来事を話したら、彼女は羨ましいと呟いて頬を少し膨らませていた。
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