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42 投げ込まれる火種
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我が砦の防壁を飛び降りると、同じくミストラやルネスをはじめとした、近接戦闘の得意な魔族等も其れに続く。
その数凡そ三十名。
「良いか、汝等は一当てしたら森の中に下るのだぞ」
斬り込み部隊が頷くのを見、我は敵陣に向かって突撃を開始する。
その時、頭上を幾つもの魔法が敵陣に向かって飛んで行き、大きな爆発を起こす。
サーガやマリオーネの魔術だろう。いや、魔法が得意と言えばシュシュトリアもそうだ。
母親に兵士として戦争に参加する事を禁じられていたシュシュトリアだったが、冬の間中説得を続けて認めさせたらしい。
負けてしまえば行き場なんて無いのだと。
……シュシュトリアの気持ちは嬉しいが、正直生産能力に長ける彼女には後方に居て欲しいのが本音である。
とはいえ、仲の良いサーガやマリオーネ、ミストラやルネス等が戦場に赴くのに、一人後方に居る事を命じるのは酷であろう。
約束通りに母を説き伏せたのだから、シュシュトリアには己の手でこの地を守る権利があった。
―グァォォォォォォォォォォゥッ!―
我等が敵の前衛部隊に斬り込むのと時を同じく、咆哮と共に森から狼達が飛び出す。
彼等の狙いは後方に留まった敵の弓兵、並びにその更に奥の本陣だ。
「ふはは、手柄が欲しければ此処に在るぞ! だが無駄死にを嫌う者は道を開けよ!」
この戦場で我が振るうは、ダンジョンより手に入れし鎖付きの鉄球。
以前に使った破壊の大槌と同じく、込めた魔力に応じて破壊の力を撒き散らす、破壊の鉄球だ。
鎖に繋がれた鉄球をグルグルと振り回しながら進むだけで、人間の兵等が鎧兜ごと砕けて肉片と化していく。
正直少しばかり哀れみを感じなくも無いが、相手は我や同胞を殺しにかかって来ているのだ。
無意味な情けの報いは我が身で無く、同胞への危険として降りかかる。
一般兵では相手にならぬと察したのだろうか。
我に向かってくる相手が、先程までの兵士等よりも数段階上の装備を身に纏った者達に変わった。
恐らく精鋭兵か、或いは騎士と呼ばれる連中だ。先程までの相手とは、装備だけでなく技の練度も段違いなのだろう。
しかし、無意味である。
我が後方で戦う魔族達なら兎も角、我に対して多少の武技は意味を成さない。
如何に剣の達人でも、嵐は切り裂けないし、如何に槍の達人でも、地震を貫き止める事等出来はしないのだ。
今の我を止めるは、其れ等の天災を止めると同義であった。
少なくとも唯人が幾ら技を磨こうが、我から見れば雑兵も精鋭も全く持って大差は無い。
……等と調子に乗ると痛い目を見るので、油断せず、侮らず、効率よく敵を屠ろう。
魔界の母に聞いた事があるのだが、昔、唯人の剣士に負けた強き魔王が居たそうだ。
何でもその者の剣技は魔力を用いずとも、強者である魔王の障壁を切り裂いたらしい。勿論想像もしない結果に茫然とする魔王ごと。
極めた技が節理を越えた例であり、他者を侮れば痛い目を見るという戒めでもある。
精鋭の損耗に耐え切れなくなったのだろうか、従騎兵等が我に向かって突っ込んで来た。
「退け!」
狙いの獲物が釣れた所で、我は斬り込み隊の魔族等に向かって撤退の指示を出す。
その言葉に、我も退くと思ったのだろう。
逃がさぬとばかりに従騎兵の突撃の速度が増すが、別に我に退く気はない。
あの指示はあくまでも、斬り込み隊の魔族等への物だ。
斬り込み隊の撤退支援に砦から魔術が飛来して、辺りに幾つもの炎の華が咲く。
我は鎖を巻き取り鉄球を肩に担ぎ、空いた片手で、炎を突っ切って突撃して来た従騎兵の足を受け止める。
周囲の人間兵等の顔が驚愕に歪む。
此奴等にとって、従騎兵は力の象徴であろう。確かに質量も、膂力も、並のゴーレム辺りとは比べ物にならない。
だが所詮これは紛い物。
我とて勇者の乗った神騎兵であれば、この様な真似は到底出来ない筈である。
裏技込みの強化魔術を思いっ切り施しても受け切れるかどうか……。
しかし所詮人が劣化模倣して造り出したに過ぎない従騎兵如きでは、魔王と力比べをするには役者が不足過ぎなのだ。
足を引っ張り、其れから押し込んでやれば、膂力のみでも従騎兵は引っ繰り返った。
さて残るは一機。
受け止められた仲間の末路を見、突撃を止めてしまった最後の従騎兵を見やり、我は笑みを浮かべて破壊の鉄球を振り回す。
ロルック王国軍の崩壊は、それから間もなくの事だった。
全ての従騎兵が破壊され、精鋭が屠られ、弓兵も大幅に数を減らし、一時は本陣も危うい所まで押し込まれ、彼等の士気が崩壊したのだ。
まあ残った戦力で砦を落とす事など到底不可能なのだから、逃げ帰るのは正しい判断だと言えるだろう。
問題は我等が其れを許すかどうかだが。
と言っても正直小勢に過ぎぬ我等が、ロルック王国軍を皆殺しにするのは割と大変な作業になる。
それに勝ち戦に逸る配下達は別にして、そもそも我にその気があまり無い。
出来れば敗軍にはロルック王国に帰って貰いたいのだ。惨めで無様なボロボロの姿で。
追撃は行った。だがその目的は輜重を奪い、或いは燃やす為。
無論殺しも行うが、其れはより深い恐怖と疲労を生き残りに与える為だ。
人間の兵士は飢え、恐怖に震えながら、武器や兜も手放したみすぼらしい姿でロルック王国に辿り着く。
少数のみなら王国は彼等を隠蔽する事が叶うかも知れないが、千もの兵士が同じ状態で逃げ帰って来たならば、ロルック王国の民は我等魔族を大いに恐れ、彼等の無様な敗戦は王国の中だけに留まらず近隣諸国にも届くだろう。
そうなれば彼の国の威信は低下し、近隣諸国に千切られ喰われる獲物になり下がる。
だが近隣諸国がロルック王国を均等に分配して話を終える事などあり得ない。
より多い利益を求め、醜く喰らい合いを始める筈だ。
そして東の人間領は混沌に包まれる。
中途半端な数で此方に手出しをすれば大火傷をする事は学んだ筈。
かと言って大軍を派遣するには、人間国家同士の信頼関係が足りない。
何年か、或いは何十年か、彼等は互いに争い続けるだろう。
勿論我も盛大に其れを煽る。人間同士が争う間に、我等は力を蓄えれるから。
其の為の方策は、既にワケットが用意していた。
此れからの東の人間領の情勢はきっと大いに我を楽しませてくれるに違いない。
名称 アシール
種族 魔王
年齢 0(?)
髪色 黒 瞳 黒
レベル 48 → 50
生命力 1940 → 2030+800
魔力 2799 → 2939+800
STR 1332 → 1368+800
INT 1530 → 1578+800
DEX 1404 → 1444+800
VIT 1344 → 1380+800
MND 1451 → 1491+800
戦闘技能
武器類取扱(中) 格闘(高)
魔術技能
魔力操作(超越) 強化魔術(高→超越) 幻想魔術(高) 治癒魔術(高)
他技能
感知(中) 魔物統率(低) ダンジョン管理(低)
ギフト
『貯金』魔王銀行を何時でも何処でもご利用になれます
現在貯金額(特大→表示出来ません)G
魔力貯金額(特大→表示出来ません)P
所持品
デュラハンのグレートソード
破壊の大槌
魔王の服(防御力小、清潔、自動修復付与)
ダンジョンの腕輪(遠話、座標)
*
50レベルボーナス!
全能力値+800、レベルアップ時の成長率が上昇
我が砦の防壁を飛び降りると、同じくミストラやルネスをはじめとした、近接戦闘の得意な魔族等も其れに続く。
その数凡そ三十名。
「良いか、汝等は一当てしたら森の中に下るのだぞ」
斬り込み部隊が頷くのを見、我は敵陣に向かって突撃を開始する。
その時、頭上を幾つもの魔法が敵陣に向かって飛んで行き、大きな爆発を起こす。
サーガやマリオーネの魔術だろう。いや、魔法が得意と言えばシュシュトリアもそうだ。
母親に兵士として戦争に参加する事を禁じられていたシュシュトリアだったが、冬の間中説得を続けて認めさせたらしい。
負けてしまえば行き場なんて無いのだと。
……シュシュトリアの気持ちは嬉しいが、正直生産能力に長ける彼女には後方に居て欲しいのが本音である。
とはいえ、仲の良いサーガやマリオーネ、ミストラやルネス等が戦場に赴くのに、一人後方に居る事を命じるのは酷であろう。
約束通りに母を説き伏せたのだから、シュシュトリアには己の手でこの地を守る権利があった。
―グァォォォォォォォォォォゥッ!―
我等が敵の前衛部隊に斬り込むのと時を同じく、咆哮と共に森から狼達が飛び出す。
彼等の狙いは後方に留まった敵の弓兵、並びにその更に奥の本陣だ。
「ふはは、手柄が欲しければ此処に在るぞ! だが無駄死にを嫌う者は道を開けよ!」
この戦場で我が振るうは、ダンジョンより手に入れし鎖付きの鉄球。
以前に使った破壊の大槌と同じく、込めた魔力に応じて破壊の力を撒き散らす、破壊の鉄球だ。
鎖に繋がれた鉄球をグルグルと振り回しながら進むだけで、人間の兵等が鎧兜ごと砕けて肉片と化していく。
正直少しばかり哀れみを感じなくも無いが、相手は我や同胞を殺しにかかって来ているのだ。
無意味な情けの報いは我が身で無く、同胞への危険として降りかかる。
一般兵では相手にならぬと察したのだろうか。
我に向かってくる相手が、先程までの兵士等よりも数段階上の装備を身に纏った者達に変わった。
恐らく精鋭兵か、或いは騎士と呼ばれる連中だ。先程までの相手とは、装備だけでなく技の練度も段違いなのだろう。
しかし、無意味である。
我が後方で戦う魔族達なら兎も角、我に対して多少の武技は意味を成さない。
如何に剣の達人でも、嵐は切り裂けないし、如何に槍の達人でも、地震を貫き止める事等出来はしないのだ。
今の我を止めるは、其れ等の天災を止めると同義であった。
少なくとも唯人が幾ら技を磨こうが、我から見れば雑兵も精鋭も全く持って大差は無い。
……等と調子に乗ると痛い目を見るので、油断せず、侮らず、効率よく敵を屠ろう。
魔界の母に聞いた事があるのだが、昔、唯人の剣士に負けた強き魔王が居たそうだ。
何でもその者の剣技は魔力を用いずとも、強者である魔王の障壁を切り裂いたらしい。勿論想像もしない結果に茫然とする魔王ごと。
極めた技が節理を越えた例であり、他者を侮れば痛い目を見るという戒めでもある。
精鋭の損耗に耐え切れなくなったのだろうか、従騎兵等が我に向かって突っ込んで来た。
「退け!」
狙いの獲物が釣れた所で、我は斬り込み隊の魔族等に向かって撤退の指示を出す。
その言葉に、我も退くと思ったのだろう。
逃がさぬとばかりに従騎兵の突撃の速度が増すが、別に我に退く気はない。
あの指示はあくまでも、斬り込み隊の魔族等への物だ。
斬り込み隊の撤退支援に砦から魔術が飛来して、辺りに幾つもの炎の華が咲く。
我は鎖を巻き取り鉄球を肩に担ぎ、空いた片手で、炎を突っ切って突撃して来た従騎兵の足を受け止める。
周囲の人間兵等の顔が驚愕に歪む。
此奴等にとって、従騎兵は力の象徴であろう。確かに質量も、膂力も、並のゴーレム辺りとは比べ物にならない。
だが所詮これは紛い物。
我とて勇者の乗った神騎兵であれば、この様な真似は到底出来ない筈である。
裏技込みの強化魔術を思いっ切り施しても受け切れるかどうか……。
しかし所詮人が劣化模倣して造り出したに過ぎない従騎兵如きでは、魔王と力比べをするには役者が不足過ぎなのだ。
足を引っ張り、其れから押し込んでやれば、膂力のみでも従騎兵は引っ繰り返った。
さて残るは一機。
受け止められた仲間の末路を見、突撃を止めてしまった最後の従騎兵を見やり、我は笑みを浮かべて破壊の鉄球を振り回す。
ロルック王国軍の崩壊は、それから間もなくの事だった。
全ての従騎兵が破壊され、精鋭が屠られ、弓兵も大幅に数を減らし、一時は本陣も危うい所まで押し込まれ、彼等の士気が崩壊したのだ。
まあ残った戦力で砦を落とす事など到底不可能なのだから、逃げ帰るのは正しい判断だと言えるだろう。
問題は我等が其れを許すかどうかだが。
と言っても正直小勢に過ぎぬ我等が、ロルック王国軍を皆殺しにするのは割と大変な作業になる。
それに勝ち戦に逸る配下達は別にして、そもそも我にその気があまり無い。
出来れば敗軍にはロルック王国に帰って貰いたいのだ。惨めで無様なボロボロの姿で。
追撃は行った。だがその目的は輜重を奪い、或いは燃やす為。
無論殺しも行うが、其れはより深い恐怖と疲労を生き残りに与える為だ。
人間の兵士は飢え、恐怖に震えながら、武器や兜も手放したみすぼらしい姿でロルック王国に辿り着く。
少数のみなら王国は彼等を隠蔽する事が叶うかも知れないが、千もの兵士が同じ状態で逃げ帰って来たならば、ロルック王国の民は我等魔族を大いに恐れ、彼等の無様な敗戦は王国の中だけに留まらず近隣諸国にも届くだろう。
そうなれば彼の国の威信は低下し、近隣諸国に千切られ喰われる獲物になり下がる。
だが近隣諸国がロルック王国を均等に分配して話を終える事などあり得ない。
より多い利益を求め、醜く喰らい合いを始める筈だ。
そして東の人間領は混沌に包まれる。
中途半端な数で此方に手出しをすれば大火傷をする事は学んだ筈。
かと言って大軍を派遣するには、人間国家同士の信頼関係が足りない。
何年か、或いは何十年か、彼等は互いに争い続けるだろう。
勿論我も盛大に其れを煽る。人間同士が争う間に、我等は力を蓄えれるから。
其の為の方策は、既にワケットが用意していた。
此れからの東の人間領の情勢はきっと大いに我を楽しませてくれるに違いない。
名称 アシール
種族 魔王
年齢 0(?)
髪色 黒 瞳 黒
レベル 48 → 50
生命力 1940 → 2030+800
魔力 2799 → 2939+800
STR 1332 → 1368+800
INT 1530 → 1578+800
DEX 1404 → 1444+800
VIT 1344 → 1380+800
MND 1451 → 1491+800
戦闘技能
武器類取扱(中) 格闘(高)
魔術技能
魔力操作(超越) 強化魔術(高→超越) 幻想魔術(高) 治癒魔術(高)
他技能
感知(中) 魔物統率(低) ダンジョン管理(低)
ギフト
『貯金』魔王銀行を何時でも何処でもご利用になれます
現在貯金額(特大→表示出来ません)G
魔力貯金額(特大→表示出来ません)P
所持品
デュラハンのグレートソード
破壊の大槌
魔王の服(防御力小、清潔、自動修復付与)
ダンジョンの腕輪(遠話、座標)
*
50レベルボーナス!
全能力値+800、レベルアップ時の成長率が上昇
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