転生したらぼっちだった

kryuaga

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第一章 はじまり

#4

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 朝夕と大勢の冒険者で賑わう冒険者ギルドも、日が真上を通過し、やや傾き始めたぐらいのこの時間帯は閑散としていた。

 忙しい時には休む暇も無いギルド職員達も、今は事務処理をする者もいれば、手を休めて同僚と雑談に興じる者もいる。



 そこへ、ギルドの受付カウンターの稼動時には開け放たれている正面の入り口から、まだ少年を脱し切れていない、冒険者にしては軽装な少年が入ってきた。



 髪は短く、ぼさぼさで、顔はそれなりに整っている方だろうか。身長はその年齢の平均からすればやや高い程度。華奢とは言えないが、さほど筋肉が付いているようにも見えない。



 少年は落ち着き無く視線をさまよわせ、ギルド内を観察している。

 一通り観察が終わったのか、それとも用事を思い出したのかもしれない、カウンターに並ぶ受付嬢達を眺め、そのうちの一人に近付く。



「冒険者ギルドへようこそ。新規の冒険者登録ですか? それともご依頼でしょうか?」



 近付いた少年に気付き、受付に立ったところで、受付嬢が声をかける。

 ギルド職員の制服に身を包み、顔は素朴だが愛らしい。栗毛の髪は後ろで束ね、垂らしている。身長は平均より下、肉付きは平凡、だが胸は小さい。少年よりはいくらか年上らしいそんな彼女は、名をラーニャという。



 実の所、他の受付嬢達はスタイルが良かったり、顔がかなり整っていたりと、美人揃いなのだが、それに気後れしたのか、ラーニャの素朴な雰囲気に惹かれたのか、そんな少年のふるまいに彼女の胸中はやや複雑だった。



 緊張しているのだろうか、少年はおどおどしながら答える。



「えと、新規登録をお願いします」



「はい、新規登録ですね。承りました。まずはこの用紙に必要事項を記入してください」



 文字が読めない場合は5イースで職員が代筆する事になっているが、少年は大丈夫のようだ。

 用紙に記入し終わった少年が、ラーニャに声をかける。



「はい。…………はい、問題ありません。では次に、ご本人の情報と魔力を登録するのに必要なので、髪の毛を一本頂けますか」



 言われた少年は前髪を一本引き抜き、手渡す。

 受け取った彼女はそれを一枚の白い布にはさみ、折り畳んでいく。



「これで登録に必要な事は済みましたが、ギルドカードの発行にはしばらく時間がかかりますので、明日の一の鐘AM5:00以降に受け取りに来てください。

 ギルドカードの機能の説明については、その時にお伝えします」



「はい、分かりました。

 あ、その……もしよければ懐に優しい宿屋とか、駆け出しが装備を整えるような店を知ってたら、教えていただけませんか?」



「ええ、良いですよ」



 いくつかの宿屋、武器、防具屋に道具屋や、薬屋などを教えてもらい、少年は冒険者ギルドを後にした。





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