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#14
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フィナが配ったゼリー飲料は、孤児院の子供たちにもかなり好評を博していたようだった。
「すごく……おいしい!!」
「なにこれっ、ちょーうめぇんだけどっ!」
久方ぶりのマトモな食事に、彼らは喜びの声を上げていた。
見れば一人でいくつも食べている子も多い。
フィナの時も思ったが、ただのゼリー飲料にあそこまで喜ばれるとは逆にこちらが驚く。
これは後から知った事なのだが、どうも彼らが普段食べていたのは、味付けもロクにされていない食事と言い難い代物ばかりだったようだ。
彼らにとってはただ、味がする、それだけでも感動に値する事態だったのだろう。
俺は彼らが美味しそうにゼリー飲料を腹に収めていくのを横目に、フィナと一緒に毛布や服などを配って回る。
「これらは一体……?」
リズリアが驚きを隠せない表情で、そう呟いている。
「まあ細かい事は今は気にするなよ。黙って受け取っとけ」
「わぁ、凄い。新品のふくだー」
「お、俺。これがいいっ」
「ちょっ、それは俺のだっ!」
マトモな食事を得たことで元気になったのか、子供らしい姿を見せるようになっていた。
「おいおい、まだ沢山あるから喧嘩するなよ」
「「はーい」」
俺がそうやんわり注意をすると、素直に返事をする。
なんだ、いい子達じゃないか。
「すいませんコウヤ様。何から何までお世話になって……」
「気にするな。ちゃんと対価は頂く。……そうだな、そこの3人には、明日から俺の仕事を手伝ってもらうぞ」
そう言って俺は、フィナと同じくらいの年頃の子供3人を指差す。
男の子が一人と女の子が2人だ。
彼らくらいの年ならば、手伝いくらいならこなせるだろう。
「それは……。一体どういうお仕事なのでしょう?」
リズリアが彼らを守るように一歩前に出てくる。
「なに、別にそう大変な仕事じゃない。フィナと同じことをやって貰うだけだ」
「……そうですか。分かりました。ロイドにティアナ、それからスノウ。ちょっとこっちにいらっしゃい」
一応だが俺の言い分を信じてくれたらしく、3人の子供たちを呼び寄せるリズリア。
まあ実際、騙しているつもりは俺にもない。
ただ、ちょっと手伝いついでに実験台になって貰おうかと考えているだけだ。
「なんだよ、リズリア先生」
「はーい、なんですか先生?」
「……」
呼ばれた3人が、俺達の元へとやって来る。
ロイドは、見た目ちょっとやんちゃそうな男の子だ。
ティアナは、活発そうな女の子で歳の割には少し背が高い。
スノウは、物静かな雰囲気の女の子だ。背はフィナよりも更に小さい。
「孤児院の皆が食べていく為に、3人にはコウヤ様のお手伝いをしてもらいます。いいですか?」
「まあ、皆の為ならしゃーないな」
ロイドは、手で後ろ髪をこすりながらもそう答える。
「分かりました先生」
ティアナは若干神妙な表情を浮かべつつ、返事をする。
「……分かった」
スノウはまったく表情を変えずに、ただコクリと頷く。
予想以上に少ない反発に、横で見ていた俺までホッとしてしまう。
なんだ、皆いい子そうじゃないか。
「まあ、手伝ってもらうのは明日からだ。今日はゆっくり休むんだな。夜と明日の朝の分の食事はここに置いていくから、皆で分けて食べてくれ」
俺はというとこれから宿に戻って、明日の朝、荷物を持ってこちらに引っ越してくる予定だ。
ここを購入したそもそもの理由は、俺の住む家としてだったのだ。本来の目的も果たさせてもらうとしよう。
孤児院の子供たちの為、昼と同じゼリー飲料に加え、カロリー多めのブロック型栄養食品や飲み物を置いていく。
冷めた食べ物ばかりでちょっと申し訳なくも思っていたが、肝心の子供たちの方の反応はというと、また美味しいモノが食べれて嬉しいという感じだったので、あまり気にしない事にした。
「すごく……おいしい!!」
「なにこれっ、ちょーうめぇんだけどっ!」
久方ぶりのマトモな食事に、彼らは喜びの声を上げていた。
見れば一人でいくつも食べている子も多い。
フィナの時も思ったが、ただのゼリー飲料にあそこまで喜ばれるとは逆にこちらが驚く。
これは後から知った事なのだが、どうも彼らが普段食べていたのは、味付けもロクにされていない食事と言い難い代物ばかりだったようだ。
彼らにとってはただ、味がする、それだけでも感動に値する事態だったのだろう。
俺は彼らが美味しそうにゼリー飲料を腹に収めていくのを横目に、フィナと一緒に毛布や服などを配って回る。
「これらは一体……?」
リズリアが驚きを隠せない表情で、そう呟いている。
「まあ細かい事は今は気にするなよ。黙って受け取っとけ」
「わぁ、凄い。新品のふくだー」
「お、俺。これがいいっ」
「ちょっ、それは俺のだっ!」
マトモな食事を得たことで元気になったのか、子供らしい姿を見せるようになっていた。
「おいおい、まだ沢山あるから喧嘩するなよ」
「「はーい」」
俺がそうやんわり注意をすると、素直に返事をする。
なんだ、いい子達じゃないか。
「すいませんコウヤ様。何から何までお世話になって……」
「気にするな。ちゃんと対価は頂く。……そうだな、そこの3人には、明日から俺の仕事を手伝ってもらうぞ」
そう言って俺は、フィナと同じくらいの年頃の子供3人を指差す。
男の子が一人と女の子が2人だ。
彼らくらいの年ならば、手伝いくらいならこなせるだろう。
「それは……。一体どういうお仕事なのでしょう?」
リズリアが彼らを守るように一歩前に出てくる。
「なに、別にそう大変な仕事じゃない。フィナと同じことをやって貰うだけだ」
「……そうですか。分かりました。ロイドにティアナ、それからスノウ。ちょっとこっちにいらっしゃい」
一応だが俺の言い分を信じてくれたらしく、3人の子供たちを呼び寄せるリズリア。
まあ実際、騙しているつもりは俺にもない。
ただ、ちょっと手伝いついでに実験台になって貰おうかと考えているだけだ。
「なんだよ、リズリア先生」
「はーい、なんですか先生?」
「……」
呼ばれた3人が、俺達の元へとやって来る。
ロイドは、見た目ちょっとやんちゃそうな男の子だ。
ティアナは、活発そうな女の子で歳の割には少し背が高い。
スノウは、物静かな雰囲気の女の子だ。背はフィナよりも更に小さい。
「孤児院の皆が食べていく為に、3人にはコウヤ様のお手伝いをしてもらいます。いいですか?」
「まあ、皆の為ならしゃーないな」
ロイドは、手で後ろ髪をこすりながらもそう答える。
「分かりました先生」
ティアナは若干神妙な表情を浮かべつつ、返事をする。
「……分かった」
スノウはまったく表情を変えずに、ただコクリと頷く。
予想以上に少ない反発に、横で見ていた俺までホッとしてしまう。
なんだ、皆いい子そうじゃないか。
「まあ、手伝ってもらうのは明日からだ。今日はゆっくり休むんだな。夜と明日の朝の分の食事はここに置いていくから、皆で分けて食べてくれ」
俺はというとこれから宿に戻って、明日の朝、荷物を持ってこちらに引っ越してくる予定だ。
ここを購入したそもそもの理由は、俺の住む家としてだったのだ。本来の目的も果たさせてもらうとしよう。
孤児院の子供たちの為、昼と同じゼリー飲料に加え、カロリー多めのブロック型栄養食品や飲み物を置いていく。
冷めた食べ物ばかりでちょっと申し訳なくも思っていたが、肝心の子供たちの方の反応はというと、また美味しいモノが食べれて嬉しいという感じだったので、あまり気にしない事にした。
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