インターネットで異世界無双!?

kryuaga

文字の大きさ
15 / 92

#14

しおりを挟む
 フィナが配ったゼリー飲料は、孤児院の子供たちにもかなり好評を博していたようだった。



「すごく……おいしい!!」



「なにこれっ、ちょーうめぇんだけどっ!」



 久方ぶりのマトモな食事に、彼らは喜びの声を上げていた。



 見れば一人でいくつも食べている子も多い。



 フィナの時も思ったが、ただのゼリー飲料にあそこまで喜ばれるとは逆にこちらが驚く。

 

 これは後から知った事なのだが、どうも彼らが普段食べていたのは、味付けもロクにされていない食事と言い難い代物ばかりだったようだ。

 彼らにとってはただ、味がする、それだけでも感動に値する事態だったのだろう。



 俺は彼らが美味しそうにゼリー飲料を腹に収めていくのを横目に、フィナと一緒に毛布や服などを配って回る。



「これらは一体……?」



 リズリアが驚きを隠せない表情で、そう呟いている。



「まあ細かい事は今は気にするなよ。黙って受け取っとけ」



「わぁ、凄い。新品のふくだー」



「お、俺。これがいいっ」



「ちょっ、それは俺のだっ!」



 マトモな食事を得たことで元気になったのか、子供らしい姿を見せるようになっていた。



「おいおい、まだ沢山あるから喧嘩するなよ」



「「はーい」」



 俺がそうやんわり注意をすると、素直に返事をする。

 なんだ、いい子達じゃないか。



「すいませんコウヤ様。何から何までお世話になって……」



「気にするな。ちゃんと対価は頂く。……そうだな、そこの3人には、明日から俺の仕事を手伝ってもらうぞ」



 そう言って俺は、フィナと同じくらいの年頃の子供3人を指差す。

 男の子が一人と女の子が2人だ。

 彼らくらいの年ならば、手伝いくらいならこなせるだろう。



「それは……。一体どういうお仕事なのでしょう?」



 リズリアが彼らを守るように一歩前に出てくる。



「なに、別にそう大変な仕事じゃない。フィナと同じことをやって貰うだけだ」



「……そうですか。分かりました。ロイドにティアナ、それからスノウ。ちょっとこっちにいらっしゃい」



 一応だが俺の言い分を信じてくれたらしく、3人の子供たちを呼び寄せるリズリア。

 まあ実際、騙しているつもりは俺にもない。

 ただ、ちょっと手伝いついでに実験台になって貰おうかと考えているだけだ。



「なんだよ、リズリア先生」



「はーい、なんですか先生?」



「……」



 呼ばれた3人が、俺達の元へとやって来る。

 ロイドは、見た目ちょっとやんちゃそうな男の子だ。

 ティアナは、活発そうな女の子で歳の割には少し背が高い。

 スノウは、物静かな雰囲気の女の子だ。背はフィナよりも更に小さい。



「孤児院の皆が食べていく為に、3人にはコウヤ様のお手伝いをしてもらいます。いいですか?」



「まあ、皆の為ならしゃーないな」



 ロイドは、手で後ろ髪をこすりながらもそう答える。



「分かりました先生」



 ティアナは若干神妙な表情を浮かべつつ、返事をする。



「……分かった」



 スノウはまったく表情を変えずに、ただコクリと頷く。



 予想以上に少ない反発に、横で見ていた俺までホッとしてしまう。

 なんだ、皆いい子そうじゃないか。



「まあ、手伝ってもらうのは明日からだ。今日はゆっくり休むんだな。夜と明日の朝の分の食事はここに置いていくから、皆で分けて食べてくれ」



 俺はというとこれから宿に戻って、明日の朝、荷物を持ってこちらに引っ越してくる予定だ。

 ここを購入したそもそもの理由は、俺の住む家としてだったのだ。本来の目的も果たさせてもらうとしよう。



 孤児院の子供たちの為、昼と同じゼリー飲料に加え、カロリー多めのブロック型栄養食品や飲み物を置いていく。

 冷めた食べ物ばかりでちょっと申し訳なくも思っていたが、肝心の子供たちの方の反応はというと、また美味しいモノが食べれて嬉しいという感じだったので、あまり気にしない事にした。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

処理中です...