悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花

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「レナ様!」
 遠い国へと歩き出したレナを、国境警備隊の面々が呼び止めた。
 振り向いたレナとサイールは驚いた。不発に終わった魔法が、発動していたからだ。

「レナ様、あのマリアンヌという女は、嘘でレナ様を追放しようとしたんですね! おかしいと思っていたんだ!」
 映像の意味をすぐに悟った様子の警備隊員は、警備隊の一番トップだった。
「私の無実を信じてくれる人がいるだけで、私は救われます」
 レナが微笑み、その目に涙を浮かべた。サイールがレナを支えた。

 警備隊のトップが首を横にふった。
「我々辺境の地にいる国民までをも気にしてくださるのは、レナ様だけだった。王家だって、平和だからと国境警備隊の役割がないように扱い、我々の生活は底辺だった。それを救ってくれたのは、レナ様だ! そのレナ様をないがしろにし、嘘つき女を国母に据えるような国に未来などない! レナ様、我々と共に、国を変える戦いを起こしてはくれないでしょうか?」

 レナは驚いた。もちろんサイールも。
 だが、王国の未来を憂慮していたのは、二人も同じだった。
 庶民たちの暮らしが楽になるような未来は思い描けなかったからだ。
 レナとサイールは顔を見合わせて頷いた。

 レナたちも二人で国境へと向かう道の中で、話してはいたのだ。もちろんありえない絵空事として。
「それで、国がよい方向に行くのであれば。ただ、血が流れないようにしたいの」
「我々の魔力があれば、戦いに向かう人たちを守ることもできるだろう。国民の総意だと伝えたいから、皆で城に向かえるなら向かいたい。それくらいしなければ、王家は動きもしないだろう。ただ数で王家を圧倒できればいい。みんなの力を貸してくれないだろうか?」
 サイールの提案に、国境警備隊が大きく頷いた。
 誰だって、血が流れる戦いなどしたくないのだ。

 レナを担ぎ上げたクーデターの集団は、王都に向かう間に、みるみる膨れ上がった。レナの潔白を知った庶民たちは怒り狂っていたからだ。そして、そんな嘘つき人間を国母にしようとした王家に嫌気がさしたからだ。どうにかその集団を壊そうとする人もいないわけではなかったが、レナとサイールの魔力の前に簡単に弾かれて行った。

 そして、王国の半分とも言えるくらいの集団を引き連れたレナたちが王都にたどり着いたときには、王城の騎士団も一緒に王家に反旗を翻した。
 王家を擁護しようとする人たちは、この時にはもう稀だった。
 王城は無血開城された。

「悪いのは、マリアンヌだ! 私は騙されただけなのだ!」
 言い張る王太子に、レナもサイールもため息をついた。
「見抜ける力がない自らを反省しようともせず、誰かのせいにする。それで、この国のことを考えられるとお思いですか?」
 レナの言葉に、王が頭を下げる。
「王太子は追放する、だから!」
 
 レナ達は溜め息しか出なかった。
「王太子だけが悪いと思っているその考え方が、国民に受け入れられると思っているんですか? 王よ。あなたはもっと賢い方だと思っておりました。ですが、国民のことを考えれば、王の存在すら有害になりそうだとしか思えません。そもそも、既に国の端々まで、王家の目は届いていなかった。国全体を守るつもりがないのであれば、王家など不要です」
 常々、考えていたことだった。それほどまでに、レナは国民たちのことを考えていた。
 最初は、レナも自分の保身のためだった。だが、いつの間にか、本気で考えるようになっていたのだ。

「国民の総意として、王家の消滅を宣言いたします。王家、および、今回の事件の関係者の処分については、議会を立て、そこで議論の上決めることにします」
 レナの言葉で、王国は消滅した。

 *

「サイール、私、幸せ過ぎていいのかしら?」
 潤んだ目で自分を見上げるレナを、サイールは愛おしく思う。
 レナはそのまま、国のトップとして担ぎ出されたが、今は議会のトップにその役割を譲っている。
 国が落ち着くのを見届けた二人は、ほどなく結婚した。

 サイールは、レナを抱きしめる。
「レナは、幸せになっていいんだよ。それは、私が認めるから」
「ありがとう、サイール。愛しているわ」
 二人は、幸福感に包まれた。

完(番外編がつづきます)
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