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だから③
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「学院の卒業式で、クリスティアーヌとの婚約を破棄する。だから、ノエリアは堂々と私の隣に立っていていいんだ」
私が顔を覗き込むと、ノエリアがそっと目を伏せた。
「わ、私で……務まるでしょうか」
不安そうなその声にすら、愛おしさがこみ上げる。
私はノエリアの肩を抱く。
「ノエリアならば大丈夫だ。それに、私がいるだろう?」
ノエリアが泣きそうな顔で、私を見上げる。
「ですが、クリスティアーヌ様が……私の作法はなっていないと……いくら頑張っても、庶子は所詮庶子なのだとおっしゃいます」
その言葉に、カッとする。
「ノエリア。そんなくだらないクリスティアーヌの言葉など、気にする必要はない!」
私の勢いに、ノエリアがびくりとなる。
私はハッとして、気持ちを落ち着けると、ノエリアを勇気づけるために微笑んでみせる。
「ノエリア。そんなことを言う人間の方が、どう考えたって人間として最低だ。放っておいても、自滅する。いや、私がこの手で裁きを与えるんだから、自滅を待つまでもない」
私の言葉に、ノエリアはそれでも目を伏せた。
「……ノエリア? 他に心配事でもあるのかな?」
おずおずと顔を上げたノエリアは、今にも泣きそうだった。
「我が家で用意するドレスでは、ファビアン様に恥をかかせてしまうんじゃないかって……クリスティアーヌ様が私が普段着に選ぶ服をいつもそう言って私はファビアン殿下にふさわしくないと……」
「何だと……クリスティアーヌめ、忌々しい! ノエリア、大丈夫だ! ノエリアのドレスは私が用意しよう」
私の返事に、ノエリアが慌てたように首を横に振る。
「そんなことはできません。……我が家で、用意いたします!」
「私が、ノエリアのドレスを決めたいのだ。私の我がままだよ。許してくれるかな?」
私の言葉に、ノエリアが困ったように眉を寄せる。
「我がままって……でも……」
「私の婚約者を私が着飾るのは、許されないのかな?」
ノエリアの手を取ると、ノエリアの頬が色づく。
「そんなことは……ないんでしょうけれど……」
「ノエリア、お金のことは気にしなくていい。ほら、どんなドレスが着たいか、希望はあるかな?」
私がニコリとノエリアの顔を覗き込むと、ノエリアが、あの、と小さく声を漏らした後、私を見つめる。
「私、ファビアン様の瞳とドレスの色を合わせたら素敵だろうな、って……ずっと夢見てたんです」
恥ずかしそうに顔を伏せるノエリアが愛おしくてたまらなくなって、私はノエリアを抱き寄せた。
ノエリアは、学院に入る前、それよりずっともっと前の幼いころに、馬車から沿道に手を振る私を遠目に見た時から、私に恋心を抱いていたのだと言う。
「どうして夢、なのかな?」
「……だって、ファビアン様の隣に立てる日が来るなんて……思ってもいなかったから」
「もう、夢で終わらないよ。だから、その夢を叶えよう」
ノエリアが私の腕の中でこくりと頷く。
私まで嬉しくなる。
だが、ふと思う。
「ただ……私の瞳と同じ色と言うと……王族特有の金色になるからね……あいにく、こんな色のドレスは、私は見たことがないが……特別に染めてもらえば、作ることはできるかな」
ブツブツと呟く私に、ノエリアが、あの、と声をかけてくる。
「私、一度だけ、ファビアン様の瞳と同じ色の生地の話を聞いたことがあります……我が家がひいきにしている商人が、お父様に、面白い生地があるのだと話していたのです。ですから、私も、ファビアン様の瞳と同じ色のドレスが着れたら素敵だろうなって、その話を覚えていたんです。……あの、商人に問い合わせましょうか?」
小首をかしげるノエリアに、私は首を横に振った。
「いやノエリア、そのままその商人を私に紹介してくれ。卒業式までに間に合わせないといけないから、生地を取り寄せたり仕立てたり、その後に刺繍などをしていたらいくら時間があっても足りなくなる。話を早く進めたい」
ドレスを作るのには時間がいる。ノエリアのためのドレスだから、きちんとしたものを仕立てたいと思うのは、当然だろう。
クリスティアーヌがそれ以上ノエリアに文句を言えないように、完璧なドレスを完成させなければ。
「わかりましたわ、ファビアン様。商人を呼ぶように手配いたしますわ」
ノエリアが頷く。
そして次の瞬間、ハッとした顔になる。
「いやだわ! 自分の夢のままに、ファビアン様にねだってしまうなんて……はしたないって、クリスティアーヌ様に言われてしまうわ」
しょんぼりするノエリアが、余計にかわいい。そのために笑顔が漏れるが、心の中では、ノエリアに罵詈雑言を言っているらしいクリスティアーヌにはらわたが煮えくり返っている。
こんな素直で純粋なノエリアを、忌々しい言葉で縛り付けようとするクリスティアーヌなど、令嬢の風上にも置けぬ。
だから、絶対に、私はクリスティアーヌを許してなどやらない。
私が顔を覗き込むと、ノエリアがそっと目を伏せた。
「わ、私で……務まるでしょうか」
不安そうなその声にすら、愛おしさがこみ上げる。
私はノエリアの肩を抱く。
「ノエリアならば大丈夫だ。それに、私がいるだろう?」
ノエリアが泣きそうな顔で、私を見上げる。
「ですが、クリスティアーヌ様が……私の作法はなっていないと……いくら頑張っても、庶子は所詮庶子なのだとおっしゃいます」
その言葉に、カッとする。
「ノエリア。そんなくだらないクリスティアーヌの言葉など、気にする必要はない!」
私の勢いに、ノエリアがびくりとなる。
私はハッとして、気持ちを落ち着けると、ノエリアを勇気づけるために微笑んでみせる。
「ノエリア。そんなことを言う人間の方が、どう考えたって人間として最低だ。放っておいても、自滅する。いや、私がこの手で裁きを与えるんだから、自滅を待つまでもない」
私の言葉に、ノエリアはそれでも目を伏せた。
「……ノエリア? 他に心配事でもあるのかな?」
おずおずと顔を上げたノエリアは、今にも泣きそうだった。
「我が家で用意するドレスでは、ファビアン様に恥をかかせてしまうんじゃないかって……クリスティアーヌ様が私が普段着に選ぶ服をいつもそう言って私はファビアン殿下にふさわしくないと……」
「何だと……クリスティアーヌめ、忌々しい! ノエリア、大丈夫だ! ノエリアのドレスは私が用意しよう」
私の返事に、ノエリアが慌てたように首を横に振る。
「そんなことはできません。……我が家で、用意いたします!」
「私が、ノエリアのドレスを決めたいのだ。私の我がままだよ。許してくれるかな?」
私の言葉に、ノエリアが困ったように眉を寄せる。
「我がままって……でも……」
「私の婚約者を私が着飾るのは、許されないのかな?」
ノエリアの手を取ると、ノエリアの頬が色づく。
「そんなことは……ないんでしょうけれど……」
「ノエリア、お金のことは気にしなくていい。ほら、どんなドレスが着たいか、希望はあるかな?」
私がニコリとノエリアの顔を覗き込むと、ノエリアが、あの、と小さく声を漏らした後、私を見つめる。
「私、ファビアン様の瞳とドレスの色を合わせたら素敵だろうな、って……ずっと夢見てたんです」
恥ずかしそうに顔を伏せるノエリアが愛おしくてたまらなくなって、私はノエリアを抱き寄せた。
ノエリアは、学院に入る前、それよりずっともっと前の幼いころに、馬車から沿道に手を振る私を遠目に見た時から、私に恋心を抱いていたのだと言う。
「どうして夢、なのかな?」
「……だって、ファビアン様の隣に立てる日が来るなんて……思ってもいなかったから」
「もう、夢で終わらないよ。だから、その夢を叶えよう」
ノエリアが私の腕の中でこくりと頷く。
私まで嬉しくなる。
だが、ふと思う。
「ただ……私の瞳と同じ色と言うと……王族特有の金色になるからね……あいにく、こんな色のドレスは、私は見たことがないが……特別に染めてもらえば、作ることはできるかな」
ブツブツと呟く私に、ノエリアが、あの、と声をかけてくる。
「私、一度だけ、ファビアン様の瞳と同じ色の生地の話を聞いたことがあります……我が家がひいきにしている商人が、お父様に、面白い生地があるのだと話していたのです。ですから、私も、ファビアン様の瞳と同じ色のドレスが着れたら素敵だろうなって、その話を覚えていたんです。……あの、商人に問い合わせましょうか?」
小首をかしげるノエリアに、私は首を横に振った。
「いやノエリア、そのままその商人を私に紹介してくれ。卒業式までに間に合わせないといけないから、生地を取り寄せたり仕立てたり、その後に刺繍などをしていたらいくら時間があっても足りなくなる。話を早く進めたい」
ドレスを作るのには時間がいる。ノエリアのためのドレスだから、きちんとしたものを仕立てたいと思うのは、当然だろう。
クリスティアーヌがそれ以上ノエリアに文句を言えないように、完璧なドレスを完成させなければ。
「わかりましたわ、ファビアン様。商人を呼ぶように手配いたしますわ」
ノエリアが頷く。
そして次の瞬間、ハッとした顔になる。
「いやだわ! 自分の夢のままに、ファビアン様にねだってしまうなんて……はしたないって、クリスティアーヌ様に言われてしまうわ」
しょんぼりするノエリアが、余計にかわいい。そのために笑顔が漏れるが、心の中では、ノエリアに罵詈雑言を言っているらしいクリスティアーヌにはらわたが煮えくり返っている。
こんな素直で純粋なノエリアを、忌々しい言葉で縛り付けようとするクリスティアーヌなど、令嬢の風上にも置けぬ。
だから、絶対に、私はクリスティアーヌを許してなどやらない。
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