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まさかの①
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……私、ヒロインになれたんじゃなかったの?
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
本当なら、私が婚約者の隣に立っているはずなのに?
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
どう見ても、婚約者の視線は友好的ではないし、義理の姉の目は、私を責めている。
そして、卒業パーティーのために着飾った学友たちの視線は、蔑むような、昔、見覚えのある視線だった。
これからきっと、私にとって悪いことが起こるに違いない。
だって、義理の姉が絡んでいるんだもの。
昨日までは、私は婚約者であるコンラッド様との結婚を夢見ていたのに。
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに。
セリフのない役から、ヒロインに抜擢されるなんて、本当にすごいことだから。
「キャサリン = ノーフォーク公爵令嬢、君は、皇太子である私を聖女であるとだましただけでなく、国民すべてを欺いたのだな。その罪は重い。コンラッド = オールコックの名において命じる。キャサリン嬢との婚約は破棄の上、国外追放とする」
ほら、来た!
「キャサリン、私だって、かわいい妹を告発するのは嫌だったの。だけど……このままじゃ、誰も幸せになれないと思って……。許して。だけど、嘘をつくのは、いけないことだわ」
義理の姉であるクララが、あたかも純粋なふりをして泣いている。
……きっと、心の中では笑っているんだろう。
「コンラッド様! 嘘はついておりません! 私は、神託を受けた聖女です! 本当のことなのです!」
私の叫びに、コンラッド様は大きくため息をついて首を横に振った。
「だが、聖女の神託を受けてこの1年、キャサリンは、聖女の力を見せたことはないだろう? 本物の聖女ならば、力を示すことができるはずだ」
「そ、それは……」
コンラッド様の指摘に、私は唇をかむ。
だって、示したくても、示せないんだもの。
……示しちゃいけないって、私は思っているんだけど。それに、悪用されたら困るから、口にしたくもないし……。
「キャサリン、もう、本当のことを言っていいのよ? いえ。もう、お父様たちも、真実はご存じだわ。国王陛下だって、もう知っているの。今更、嘘を言う必要なんてないの」
静かに私を諭そうとしているクララに、私はギュッと手を握り締める。
せっかく、ヒロインになれたと思ったのに。
どうしてまた、邪魔するの!
これじゃ、私がざまぁされているみたい。
……前世では、小さいころからいじめられっ子だった。ブラック企業に勤めてからも仕事という建前のいじめで仕事を増やされ、睡眠時間はゴリゴリ削られた。
それと同時期にストーカーに悩まされるようになった。昔から、変な人に好かれやすかったけど、あのストーカーは最悪だった。
私の精神はギリギリで、正常な判断などできなくなっていて、ブラック企業から逃げ出すことを考えられなくなっていた。そして、結局、過労死した。
結果転生したのは、この世界だった。
でも、この世界でも、私の役割は散々だった。
ノーフォーク公爵家の令嬢。
という肩書はあれど、私はノーフォーク公爵の庶子だった。母はノーフォーク家の使用人で、妊娠した結果、義母に追い出された。
だけど、幼いころに私はノーフォーク公爵に探し出され、お金と引き換えに、母は私を引き渡した。母の行方は、もうわからない。
私の居場所は、ノーフォーク家にはなかった。義母に虐められ、同じ年の義理の姉に虐められ、父は全く私に興味などなかった。私は、ノーフォーク公爵家の、コマの一つになるために引き取られただけだった。
日々の生活は、粗末な食事に、粗末な物置小屋での生活。
ただ、パーティーがあるときだけは、きっちりと飾られる生活。
その時だけは、お姫様気分が味わえて、ちょっと嬉しかった。舞台の世界に入れたみたいな気がして。テレビでしか見たことはなかったけど、画面上でも、きらびやかな世界だった。その世界が現実になったわけだから。……壁の花だから、実際は楽しくはないんだけど。
学院に通うために家を出られることになった時には、正直ほっとした。だけど、学院へは、義理の姉も一緒に通うのだ。
外面のいい姉は、あっという間に取り巻きを作って、一緒になって私をいじめた。いえ。姉は何もしていないふりをして、取り巻きたちに私をいじめさせた。
寮生活も悲惨だった。公爵家に逆らえる貴族など、ほとんどいるわけがない。
私のいじめは黙認された。
前世の記憶を使って、手を打たなかったのかって?
前世の記憶が、私をいじめられても仕方がないのだと諦めさせた。皆に、そう言われ続けていたから。
前世の両親ですら、そう言っていた。誰も、私の味方はいなかった。
私の住む世界が異世界に変わったとしても、私が救われる道があるようには思えなかった。
ラノベとかゲームの世界に転生するって話が前世にはあったみたいだけど、残念ながら私はそのソースを一つも知らなかったし、この世界がどう動いていくのかなんて、わかるわけもない。……舞台が唯一、私の現実逃避の場所だったから。
それに、例えひどい扱いだとしても、雨露をしのげる屋根の下で、最低限であれ食事を与えられる生活ができていたから。
……生みの母との生活は、食べるものにも事欠いていたから。
その生活が一変したのは、丁度1年前だった。
私が、聖女の神託を受けたからだ。
オールコック王国では、聖女は光と共に神様により力を授けられ、神様に代わり奇跡を起こす、との伝説がある。
だから、その瞬間に、私の立場は一転した。
父から存在を認められ、立派な部屋をあてがわれた。
そして、ジジイ辺境伯の後妻になるしか役に立たないと言われていた私が、皇太子の婚約者に内定したのだ。
……私をいじめていたクララが狙っていた立場に、私がなったのだ。
ヒロインになれたのだと、私は思った。
だけど、どうやらこの舞台は、私をざまぁしようとしているらしい。
私は、悪いことなど、一つもしていないのに!
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
本当なら、私が婚約者の隣に立っているはずなのに?
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
どう見ても、婚約者の視線は友好的ではないし、義理の姉の目は、私を責めている。
そして、卒業パーティーのために着飾った学友たちの視線は、蔑むような、昔、見覚えのある視線だった。
これからきっと、私にとって悪いことが起こるに違いない。
だって、義理の姉が絡んでいるんだもの。
昨日までは、私は婚約者であるコンラッド様との結婚を夢見ていたのに。
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに。
セリフのない役から、ヒロインに抜擢されるなんて、本当にすごいことだから。
「キャサリン = ノーフォーク公爵令嬢、君は、皇太子である私を聖女であるとだましただけでなく、国民すべてを欺いたのだな。その罪は重い。コンラッド = オールコックの名において命じる。キャサリン嬢との婚約は破棄の上、国外追放とする」
ほら、来た!
「キャサリン、私だって、かわいい妹を告発するのは嫌だったの。だけど……このままじゃ、誰も幸せになれないと思って……。許して。だけど、嘘をつくのは、いけないことだわ」
義理の姉であるクララが、あたかも純粋なふりをして泣いている。
……きっと、心の中では笑っているんだろう。
「コンラッド様! 嘘はついておりません! 私は、神託を受けた聖女です! 本当のことなのです!」
私の叫びに、コンラッド様は大きくため息をついて首を横に振った。
「だが、聖女の神託を受けてこの1年、キャサリンは、聖女の力を見せたことはないだろう? 本物の聖女ならば、力を示すことができるはずだ」
「そ、それは……」
コンラッド様の指摘に、私は唇をかむ。
だって、示したくても、示せないんだもの。
……示しちゃいけないって、私は思っているんだけど。それに、悪用されたら困るから、口にしたくもないし……。
「キャサリン、もう、本当のことを言っていいのよ? いえ。もう、お父様たちも、真実はご存じだわ。国王陛下だって、もう知っているの。今更、嘘を言う必要なんてないの」
静かに私を諭そうとしているクララに、私はギュッと手を握り締める。
せっかく、ヒロインになれたと思ったのに。
どうしてまた、邪魔するの!
これじゃ、私がざまぁされているみたい。
……前世では、小さいころからいじめられっ子だった。ブラック企業に勤めてからも仕事という建前のいじめで仕事を増やされ、睡眠時間はゴリゴリ削られた。
それと同時期にストーカーに悩まされるようになった。昔から、変な人に好かれやすかったけど、あのストーカーは最悪だった。
私の精神はギリギリで、正常な判断などできなくなっていて、ブラック企業から逃げ出すことを考えられなくなっていた。そして、結局、過労死した。
結果転生したのは、この世界だった。
でも、この世界でも、私の役割は散々だった。
ノーフォーク公爵家の令嬢。
という肩書はあれど、私はノーフォーク公爵の庶子だった。母はノーフォーク家の使用人で、妊娠した結果、義母に追い出された。
だけど、幼いころに私はノーフォーク公爵に探し出され、お金と引き換えに、母は私を引き渡した。母の行方は、もうわからない。
私の居場所は、ノーフォーク家にはなかった。義母に虐められ、同じ年の義理の姉に虐められ、父は全く私に興味などなかった。私は、ノーフォーク公爵家の、コマの一つになるために引き取られただけだった。
日々の生活は、粗末な食事に、粗末な物置小屋での生活。
ただ、パーティーがあるときだけは、きっちりと飾られる生活。
その時だけは、お姫様気分が味わえて、ちょっと嬉しかった。舞台の世界に入れたみたいな気がして。テレビでしか見たことはなかったけど、画面上でも、きらびやかな世界だった。その世界が現実になったわけだから。……壁の花だから、実際は楽しくはないんだけど。
学院に通うために家を出られることになった時には、正直ほっとした。だけど、学院へは、義理の姉も一緒に通うのだ。
外面のいい姉は、あっという間に取り巻きを作って、一緒になって私をいじめた。いえ。姉は何もしていないふりをして、取り巻きたちに私をいじめさせた。
寮生活も悲惨だった。公爵家に逆らえる貴族など、ほとんどいるわけがない。
私のいじめは黙認された。
前世の記憶を使って、手を打たなかったのかって?
前世の記憶が、私をいじめられても仕方がないのだと諦めさせた。皆に、そう言われ続けていたから。
前世の両親ですら、そう言っていた。誰も、私の味方はいなかった。
私の住む世界が異世界に変わったとしても、私が救われる道があるようには思えなかった。
ラノベとかゲームの世界に転生するって話が前世にはあったみたいだけど、残念ながら私はそのソースを一つも知らなかったし、この世界がどう動いていくのかなんて、わかるわけもない。……舞台が唯一、私の現実逃避の場所だったから。
それに、例えひどい扱いだとしても、雨露をしのげる屋根の下で、最低限であれ食事を与えられる生活ができていたから。
……生みの母との生活は、食べるものにも事欠いていたから。
その生活が一変したのは、丁度1年前だった。
私が、聖女の神託を受けたからだ。
オールコック王国では、聖女は光と共に神様により力を授けられ、神様に代わり奇跡を起こす、との伝説がある。
だから、その瞬間に、私の立場は一転した。
父から存在を認められ、立派な部屋をあてがわれた。
そして、ジジイ辺境伯の後妻になるしか役に立たないと言われていた私が、皇太子の婚約者に内定したのだ。
……私をいじめていたクララが狙っていた立場に、私がなったのだ。
ヒロインになれたのだと、私は思った。
だけど、どうやらこの舞台は、私をざまぁしようとしているらしい。
私は、悪いことなど、一つもしていないのに!
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