9 / 74
9
しおりを挟む
思案顔でアリーナがライを見れば、ライが真剣な顔でじっとアリーナを見ていた。
「何?」
「私の料理を食べてくれませんか。」
「いいわよ」
アリーナは即答する。こんなおいしいものが食べられる権利ならいくらでも欲しい。あいにく料理は出来ないが無駄に舌だけはよく、忙しすぎて職場の味気ない食堂で1日2食も食べるはめになるアリーナは美味しいものに飢えていた。即答とも言えるアリーナの返事に、ライが顔を緩める。
どうやら料理をすることを理解されて嬉しいらしいとアリーナは理解して、料理が出来ても出来なくても困るものなんだと思う。
アリーナは既に結婚は諦めている。料理が出来ないから。
でもきっとライは結婚したくても自分より料理の下手な人のご飯を食べ続けるのが苦痛だったんじゃないだろかと考えた。
もしくは…相手の料理にああでもないこうでもないと口を出してしまったか。
はたまた この料理の腕を披露してしまったか。
結婚から遠ざかるとすれば、まちがいなく3番目だろう。このことが噂になっていないのは、男性が女性よりおいしいものが作れるなんて女性にとって不名誉なことはないからで、誰も口にしないからだろう。
2番目は、それこそ母親の味を求める男性がいないわけではないからで、それぐらいで今まで全ての結婚の話がなくなるとは思えない。
1番目も苦痛かもしれないが、結婚したいのであればライに我慢する余地はあるかもしれない。
よってライが結婚できないでいるのは、3番目に違いないとアリーナは結論付ける。
無論、おいしくグラタンを頬張りながら。
小さい皿はあっという間に空になり、おかわりを所望したら、それなりの量がわたされた。
お腹がすごくすいていた訳ではないが、美味しさゆえにフーフーと冷ましつつも、スルスルと胃に入って行く。
隣ではライも残りのグラタンを食べている。
整った顔立ち、約束された将来、鍛えられた体躯。会場でのスマートな立ち振舞い。どこをとっても結婚相手に最適だろうに、ただ料理ができるってだけで結婚したくてもできないなんて可愛そうに。
アリーナは同情にも似た気持ちでライを見れば、ライと目が合う。
「どうかしましたか」
「料理ができるのも大変ね」
だが、アリーナの予想に反して、ライは首をふった。
「私の趣味ですからね」
「でも…そのせいで結婚できなかったんでしょ」
率直なアリーナの言葉に、ライは苦笑する。
「いいんです。それに」
言葉を切ったライの目に…アリーナを見る目に熱が籠ったのがわかる。なぜ?
そのアリーナの疑問はすぐに解消した。
ライの流れるような動きでアリーナの手にあった皿とスプーンは手から離れ、なぜかソファに倒されたアリーナの上にライが覆い被さっている。
新たな疑問がアリーナを襲う。
なぜ?
「えーっと、騎士団副団長様?これは一体?」
アリーナの疑問にライは恥ずかしそうに微笑む。
「アリーナ嬢…いや、アリーナが現れるのをきっと運命の神様が待っていたんですね」
いやそれ答えになってないし。
アリーナの突っ込みは言葉にならなかった。
何せ、口を開きかけたとたん、ぬるっと熱いものがアリーナの口のなかに飛び込んできたせいだ。
ん!ん!と声にならない声でライの体を押し返そうと手で押すが、文官で華奢な女性であるアリーナと武官でがっしりした男性のライの力の差は明らかだ。ライはびくともせず、しまいにはアリーナの押し返そうとする腕を捕まえて、更にアリーナに密着する。
口の中を這い回るライの熱は、アリーナのやけどでじんじんとした痺れの残る口の中に更にじんじんとしたしびれをもたらす。
アリーナが受けたこともない感覚がぞわぞわと体に沸き起こる。
アリーナの唇から熱源が離された時には、アリーナはくたりとソファに沈み混んでいた。アリーナが力の抜けたまま見上げたライは、唇のはしに残る誰のものとも特定できない唾液を舌でなめとると妖艶に笑った。
今の今まで突然の出来事に流され動いていなかったアリーナの頭が、その笑顔にドキリと心臓が鳴ったのを皮切りに動き出す。
「…どう…して」
アリーナの疑問はかすれてはいたものの、ライには届いたらしい。
「私の料理を食べてくれるって言ったでしょ」
それがどういう意味を成すのか、アリーナは全く想像つかない。
「食べ…る…って言った…だけ、よ」
「女性側に料理を食べて欲しいと請われれば、結婚の意味を示すんじゃなかったですか」
「…へ」
思いもかけない話の内容に、アリーナはあっけにとられる。
いや、確かにそうなのだが、アリーナはライが男性であるがゆえに、それがプロポーズの言葉だとは気づきもしていなかった。
「何?」
「私の料理を食べてくれませんか。」
「いいわよ」
アリーナは即答する。こんなおいしいものが食べられる権利ならいくらでも欲しい。あいにく料理は出来ないが無駄に舌だけはよく、忙しすぎて職場の味気ない食堂で1日2食も食べるはめになるアリーナは美味しいものに飢えていた。即答とも言えるアリーナの返事に、ライが顔を緩める。
どうやら料理をすることを理解されて嬉しいらしいとアリーナは理解して、料理が出来ても出来なくても困るものなんだと思う。
アリーナは既に結婚は諦めている。料理が出来ないから。
でもきっとライは結婚したくても自分より料理の下手な人のご飯を食べ続けるのが苦痛だったんじゃないだろかと考えた。
もしくは…相手の料理にああでもないこうでもないと口を出してしまったか。
はたまた この料理の腕を披露してしまったか。
結婚から遠ざかるとすれば、まちがいなく3番目だろう。このことが噂になっていないのは、男性が女性よりおいしいものが作れるなんて女性にとって不名誉なことはないからで、誰も口にしないからだろう。
2番目は、それこそ母親の味を求める男性がいないわけではないからで、それぐらいで今まで全ての結婚の話がなくなるとは思えない。
1番目も苦痛かもしれないが、結婚したいのであればライに我慢する余地はあるかもしれない。
よってライが結婚できないでいるのは、3番目に違いないとアリーナは結論付ける。
無論、おいしくグラタンを頬張りながら。
小さい皿はあっという間に空になり、おかわりを所望したら、それなりの量がわたされた。
お腹がすごくすいていた訳ではないが、美味しさゆえにフーフーと冷ましつつも、スルスルと胃に入って行く。
隣ではライも残りのグラタンを食べている。
整った顔立ち、約束された将来、鍛えられた体躯。会場でのスマートな立ち振舞い。どこをとっても結婚相手に最適だろうに、ただ料理ができるってだけで結婚したくてもできないなんて可愛そうに。
アリーナは同情にも似た気持ちでライを見れば、ライと目が合う。
「どうかしましたか」
「料理ができるのも大変ね」
だが、アリーナの予想に反して、ライは首をふった。
「私の趣味ですからね」
「でも…そのせいで結婚できなかったんでしょ」
率直なアリーナの言葉に、ライは苦笑する。
「いいんです。それに」
言葉を切ったライの目に…アリーナを見る目に熱が籠ったのがわかる。なぜ?
そのアリーナの疑問はすぐに解消した。
ライの流れるような動きでアリーナの手にあった皿とスプーンは手から離れ、なぜかソファに倒されたアリーナの上にライが覆い被さっている。
新たな疑問がアリーナを襲う。
なぜ?
「えーっと、騎士団副団長様?これは一体?」
アリーナの疑問にライは恥ずかしそうに微笑む。
「アリーナ嬢…いや、アリーナが現れるのをきっと運命の神様が待っていたんですね」
いやそれ答えになってないし。
アリーナの突っ込みは言葉にならなかった。
何せ、口を開きかけたとたん、ぬるっと熱いものがアリーナの口のなかに飛び込んできたせいだ。
ん!ん!と声にならない声でライの体を押し返そうと手で押すが、文官で華奢な女性であるアリーナと武官でがっしりした男性のライの力の差は明らかだ。ライはびくともせず、しまいにはアリーナの押し返そうとする腕を捕まえて、更にアリーナに密着する。
口の中を這い回るライの熱は、アリーナのやけどでじんじんとした痺れの残る口の中に更にじんじんとしたしびれをもたらす。
アリーナが受けたこともない感覚がぞわぞわと体に沸き起こる。
アリーナの唇から熱源が離された時には、アリーナはくたりとソファに沈み混んでいた。アリーナが力の抜けたまま見上げたライは、唇のはしに残る誰のものとも特定できない唾液を舌でなめとると妖艶に笑った。
今の今まで突然の出来事に流され動いていなかったアリーナの頭が、その笑顔にドキリと心臓が鳴ったのを皮切りに動き出す。
「…どう…して」
アリーナの疑問はかすれてはいたものの、ライには届いたらしい。
「私の料理を食べてくれるって言ったでしょ」
それがどういう意味を成すのか、アリーナは全く想像つかない。
「食べ…る…って言った…だけ、よ」
「女性側に料理を食べて欲しいと請われれば、結婚の意味を示すんじゃなかったですか」
「…へ」
思いもかけない話の内容に、アリーナはあっけにとられる。
いや、確かにそうなのだが、アリーナはライが男性であるがゆえに、それがプロポーズの言葉だとは気づきもしていなかった。
21
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!
屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。
そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。
そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。
ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。
突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。
リクハルド様に似ても似つかない子供。
そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる