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この上司、仕事は非常にまともなのだが、ライに憧れるあまりか日々筋肉を鍛えており、どこからどう見ても男性にしか見えない。もちろん、この職場で配給されている制服もサイズが合わないとの理由で渋々男性ものを着ている…らしい。
…上役から却下されたとか、流石に本人も職場でカミングアウトするつもりはないのだろうとの噂はあるが、真偽のほどは定かではない。この言葉遣いとライの話をしまくりの日々でカミングアウトするもしないもないとアリーナは思っているのだが。
因みに結婚した相手としか契りたくないと言っている一人がこのガイナーだ。乙女だかららしい。…本当にカミングアウトしていないのかは疑問である。
「わかりました。美しい筋肉だとは認めますから、肩から手を離してください」
「あら、わかってるならいいのよ」
もうここで6年目になるガイナーとのやり取りにはアリーナも慣れたもので、ガイナーの手はあっさりと離れた。
「…違うわよ!私が聞きたいのは、そういうことじゃないの」
本題を一瞬忘れていたらしいガイナーに、そのまま忘れてくれていたら良かったのに、とアリーナは小さくため息をつく。
「何でしょう?一昨日の外交費の件ですか」
「ちーがーう!もう騙されないわよ!何でライ様がアリーナを選んだの」
ああ、追求の時間が来てしまった。とアリーナは遠い目になる。
「本当は嫌なの? 嫌なのね」
ガイナーの期待を込めた声に、アリーナは大変申し訳ないけれどガイナーにはライをあきらめて貰うしかないと思う。
「ライ様が決めてしまわれたので、私にはどうにもできません。ガイナー室長が散々言っておられたじゃないですか。ライ様の手にかかればどんな案件もお手のものだって」
いやー!と野太い…とは言わないが細いとも言えない悲鳴をあげられても、アリーナにはどうしようもない。
アリーナはため息をついて、もう見慣れた上司の顔を見る。
この上司はライを美丈夫だと褒め称えるけれど、ライよりきれいな顔してるんだよなー、といつものような残念な気持ちになる。
せめて筋肉を着けようとしなければ、顔立ちの美しさもあって、大柄の女性くらいには見れるのに、とアリーナは思っている。
アリーナもガイナーを乙女として扱ってあげたいのだ。ガイナーの性癖もこの国では理解されないもので、アリーナの料理の腕を始めとする家事能力が低いことが結婚に結び付かないのと同様、ガイナーもまた好きな相手と結婚する可能性はゼロに近い。もちろんアリーナがライと結婚することになったように、完全にあり得ないとは言えないが。
ただ、現在進行形だったガイナーの片想いの相手が、アリーナと結婚することになったために、ガイナーの恋は終わってしまったと言っていい。
だから、アリーナはガイナーの嫉妬や愚痴を受けることになりそうな気がしてきて朝起きたときから少々億劫だった。
ただひとつ、この上司が仕事上では公私混同しないことを知っているから、 あまりひどいことにはならないだろうと信じているが。
「どうして婚活パーティーに行くことになったわけ?!」
「朝、準備を整えてありました。当日知らされた私には拒否権などありませんでした」
拒否をすることは、しようと思えば可能だった気もするが、土下座されたのだから仕方ない、ということにする。
「どうしてライ様がいたの? 最近婚活パーティーには出てないって話だったのに!」
「…さあ。私にはよくわかりません」
その実、アリーナの両親がその元凶なのだが、それを言うとどんな反応が起こるかわからなかったので、アリーナは知らないふりをした。
「ライ様を落とした料理は何なの」
「…それ、今重要ですか? そろそろ仕事を始めたいんですが」
そんなものが存在しない以上、変なことを言えばぼろが出る。アリーナは話を切り上げようとした。
「こんな早い時間に来てるんだから、仕事の開始時間はまだまだよ。私に教えてちょうだい!」
この部署の始業時間は9時である。今現在の時間は7時半。部署には既に何人か顔を出しているけれど、仕事を始めているのはその中のほんの一握りだ。アリーナはいつもの癖で7時半に顔を出したのが仇となった。
「一体どういうことなの?! アリーナ、一昨日までライ様に興味なんてなかったわよね」
きっと婚活パーティーなどには行ったことのないガイナーですら、婚活パーティーのルールは知っている。だから、アリーナがライの名前を書いたのだと断定してきた。
それこそ違うのだが、アリーナは事の詳細を説明する気力はない。
「…そうですね。興味はなかったと思います」
婚約する話になった今でも、ライに興味があるかと問われれば、アリーナも疑問だ。
「城で見かけても、私がいくらライ様の良さを説いても興味なさそうだったから、安心してたのに!」
そうか、この室長はあんな下らない話を人にして、その実その反応を見て安心していたのか、とアリーナが若干冷ややかな気持ちになるのは止められない。単なる下らない話だと思っていたものが、自分を試すための布石だったのかと思うと、気に食わない。
「ガイナー室長は、そうやって人を試していたんですね? 下らない嫉妬をする暇があったら、仕事をしたらどうでしょ」
ガイナーの気持ちを知っていてもなお、アリーナは嫌味ともいえるその言葉を口に出した。それがどのようにガイナーをへこますのかは想像できたけれども、あの下らない話に散々付き合ってきた部下に対してそんなことを思っていたのかとアリーナが怒るのも無理はない。
ガイナーの口から休憩時間に出る話は、ライの話しかないのだから。
…上役から却下されたとか、流石に本人も職場でカミングアウトするつもりはないのだろうとの噂はあるが、真偽のほどは定かではない。この言葉遣いとライの話をしまくりの日々でカミングアウトするもしないもないとアリーナは思っているのだが。
因みに結婚した相手としか契りたくないと言っている一人がこのガイナーだ。乙女だかららしい。…本当にカミングアウトしていないのかは疑問である。
「わかりました。美しい筋肉だとは認めますから、肩から手を離してください」
「あら、わかってるならいいのよ」
もうここで6年目になるガイナーとのやり取りにはアリーナも慣れたもので、ガイナーの手はあっさりと離れた。
「…違うわよ!私が聞きたいのは、そういうことじゃないの」
本題を一瞬忘れていたらしいガイナーに、そのまま忘れてくれていたら良かったのに、とアリーナは小さくため息をつく。
「何でしょう?一昨日の外交費の件ですか」
「ちーがーう!もう騙されないわよ!何でライ様がアリーナを選んだの」
ああ、追求の時間が来てしまった。とアリーナは遠い目になる。
「本当は嫌なの? 嫌なのね」
ガイナーの期待を込めた声に、アリーナは大変申し訳ないけれどガイナーにはライをあきらめて貰うしかないと思う。
「ライ様が決めてしまわれたので、私にはどうにもできません。ガイナー室長が散々言っておられたじゃないですか。ライ様の手にかかればどんな案件もお手のものだって」
いやー!と野太い…とは言わないが細いとも言えない悲鳴をあげられても、アリーナにはどうしようもない。
アリーナはため息をついて、もう見慣れた上司の顔を見る。
この上司はライを美丈夫だと褒め称えるけれど、ライよりきれいな顔してるんだよなー、といつものような残念な気持ちになる。
せめて筋肉を着けようとしなければ、顔立ちの美しさもあって、大柄の女性くらいには見れるのに、とアリーナは思っている。
アリーナもガイナーを乙女として扱ってあげたいのだ。ガイナーの性癖もこの国では理解されないもので、アリーナの料理の腕を始めとする家事能力が低いことが結婚に結び付かないのと同様、ガイナーもまた好きな相手と結婚する可能性はゼロに近い。もちろんアリーナがライと結婚することになったように、完全にあり得ないとは言えないが。
ただ、現在進行形だったガイナーの片想いの相手が、アリーナと結婚することになったために、ガイナーの恋は終わってしまったと言っていい。
だから、アリーナはガイナーの嫉妬や愚痴を受けることになりそうな気がしてきて朝起きたときから少々億劫だった。
ただひとつ、この上司が仕事上では公私混同しないことを知っているから、 あまりひどいことにはならないだろうと信じているが。
「どうして婚活パーティーに行くことになったわけ?!」
「朝、準備を整えてありました。当日知らされた私には拒否権などありませんでした」
拒否をすることは、しようと思えば可能だった気もするが、土下座されたのだから仕方ない、ということにする。
「どうしてライ様がいたの? 最近婚活パーティーには出てないって話だったのに!」
「…さあ。私にはよくわかりません」
その実、アリーナの両親がその元凶なのだが、それを言うとどんな反応が起こるかわからなかったので、アリーナは知らないふりをした。
「ライ様を落とした料理は何なの」
「…それ、今重要ですか? そろそろ仕事を始めたいんですが」
そんなものが存在しない以上、変なことを言えばぼろが出る。アリーナは話を切り上げようとした。
「こんな早い時間に来てるんだから、仕事の開始時間はまだまだよ。私に教えてちょうだい!」
この部署の始業時間は9時である。今現在の時間は7時半。部署には既に何人か顔を出しているけれど、仕事を始めているのはその中のほんの一握りだ。アリーナはいつもの癖で7時半に顔を出したのが仇となった。
「一体どういうことなの?! アリーナ、一昨日までライ様に興味なんてなかったわよね」
きっと婚活パーティーなどには行ったことのないガイナーですら、婚活パーティーのルールは知っている。だから、アリーナがライの名前を書いたのだと断定してきた。
それこそ違うのだが、アリーナは事の詳細を説明する気力はない。
「…そうですね。興味はなかったと思います」
婚約する話になった今でも、ライに興味があるかと問われれば、アリーナも疑問だ。
「城で見かけても、私がいくらライ様の良さを説いても興味なさそうだったから、安心してたのに!」
そうか、この室長はあんな下らない話を人にして、その実その反応を見て安心していたのか、とアリーナが若干冷ややかな気持ちになるのは止められない。単なる下らない話だと思っていたものが、自分を試すための布石だったのかと思うと、気に食わない。
「ガイナー室長は、そうやって人を試していたんですね? 下らない嫉妬をする暇があったら、仕事をしたらどうでしょ」
ガイナーの気持ちを知っていてもなお、アリーナは嫌味ともいえるその言葉を口に出した。それがどのようにガイナーをへこますのかは想像できたけれども、あの下らない話に散々付き合ってきた部下に対してそんなことを思っていたのかとアリーナが怒るのも無理はない。
ガイナーの口から休憩時間に出る話は、ライの話しかないのだから。
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