リツのつよつよ冒険譚

chocochoco

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Prologue

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ここ数ヶ月、私は家よりも外にいる時間が増えた。というよりも、家を抜け出し街に出たり近くの森を散策したりと家を出るための経路を確認するようになった。早朝、両親や姉弟が起きるよりも前に抜け出し、寝静まった深夜に窓から帰宅する。
最初こそは大騒ぎだったようだが、今では何も言われたりはしなくなった。諦めたのか、それとも何か企んでいるのか。でも、私にはそんなことは関係なかった。


そして私は9歳の誕生日を迎えた。


今日も今日とて街に繰り出そうと思っていたが、部屋に置き手紙があった。両親からである。
なんでも、私の誕生日に来客があり、私にも大切な話だから昼までには帰るようにとのことだった。もしこれでとんでもなく偉い人だった時を考えるとややこしくなりそうだ。
仕方ないので、街を軽く散策するだけに止めることにした。



街は早朝にはもう動き出している。仕入れや店を開けるための準備に追われるからだ。

「リツお嬢様、今日も早いですね!おはようございます!」
「ハンズさん、おはよー!」

道具屋のおじさん、ハンズさんが今日も私に挨拶をしてくれた。それに続いて、隣の武器屋、前にダガーを打ってくれた店主、ガランさんも店から顔を出す。挨拶とそこそこに「今日はどこ行くんだい」と聞かれた。

「どっかに行きたかったんだけど、今日はなんか人が来るみたいだから、あまり遠くに行けないの。すぐに戻る予定」
「来客かい?お嬢様に?珍しいね」
「ええ、本当に。めんどくさいわ」

がはは、とガランさんは笑いながらわしゃわしゃと私の頭を撫でた。

「まあ、何かあったら言うといい。街の連中はみんな聞いてくれるさ」

頼りになるやつのが多いからな、と、ガランさんの言葉にハンズさんも微笑んでいた。

「それで?そんな少ない時間でどこに行くんだ?」
「メロおばさんのとこ。お願いしてたものが出来上がったって言ってたの!もういくね!」

二人を背に私は走り出したのだった。
それから少しして、こじんまりとしたお店にたどり着いた。close、という札は下がっていたので、私は裏路地に繋がる道へ向かった。裏路地というと危険なイメージがあるが、ここの裏路地はそこまで危険ではない。仕切っているのがメロおばさんだからである。奥に進んでいくと、上へと続く古びた階段が見えて来た。それを登っていくと扉にたどり着く。トントン、と2回ノックした。

「誰だい」
「リツよ、おばさん」

中から聞こえた問いに答えると、ギギギ、と音を立てて扉は開いた。魔法扉と呼ばれるもので、連動させた魔力の持ち主の意がままに扉は開閉するのだという。つまり、おばさんは魔法使いである。以前、人差し指をぐるっと回すだけで針や糸が動き出す所を見たときは感動した。
扉は私が中に入るのと同時にまたギギギと音を立てて閉まる。部屋の中は様々な生地で溢れかえっており、かろうじて足の踏み場があるような状態だった。魔法で生地を管理しているため、下手に触るとメロおばさんの怒声が飛んでくることは既に経験済みである。
そして、部屋の奥。そこにおばさんは座っていた。こちらをじっと見ていて、目が合うと口元を緩ませた。

「よく来たねえ。そして誕生日おめでとう。これが贈り物さ。受け取りな」

ふわりと浮いた鞄が私の目の前に現れた。ウエストポーチだ。茶色をベースに縁に花の刺繍が刻まれており、派手さはないが可愛らしいポーチだった。

「帯刀ベルトも合わせてるから、吊り下げることもできるよ。まあ、見た目は小さめだが必要最低限は入るようにしてるから。使っておくれ」
「ありがとう、メロおばさん!本当に嬉しいわ!ところで、このお花はなんというお花なの?」
「その花かい?……遥か東の国にあるといわれる花で名前は」

花の名前を聞いて私は驚いて。さらにこの鞄を使って冒険者になろうと決めた。
改めてお礼を言って、メロおばさんと別れた。少し早いが、家に帰ろうかと帰路に着く。あまりギリギリに帰ってもめんどくさいからだ。


そして、私が今日の深夜に家を出ることになることになるとは、この時は思ってもいなかった。
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