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今出来ることを
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「ルード」
街で見つけたルードにゼーリッヒが声を掛けると、大きく目を丸くしあからさまに表情を歪めた。
「何のつもりですか隊長」
「ゼーリッヒがお前に会いたがってな」
「は?俺に?」
ゼーリッヒはルードに歩み寄り、頭を下げた。
「ごめんなさい」
「...何に対する謝罪だ」
「僕は、貴方を傷つけたのだと思うから」
不意に頭を下げていたゼーリッヒの胸ぐらがルードによって掴みあげられる。ダリルが止めに入ろうとしたが、ゼーリッヒが手で制止する。
「お前のその謝罪になんの意味がある!」
「僕は戦闘兵器として運用されてた。人を殺すことになんの違和感も持ってなかった」
ルードは握った拳を振り上げる。
「でも、この間ゲントが死んで僕は、悲しかった。その悲しみを僕は何人もの人に与えてしまった。ルードもその1人だ。だから、ごめんなさい」
ルードが拳を振り上げても、ゼーリッヒは怯えることも、目をそらすこともしなかった。
「俺の戦友達は何人もお前に殺された...っ」
「その事実は変わらない。謝罪したところで僕の罪が消えないことも分かってる。だから僕は、今の僕に出来ることを精一杯やりたい。これは僕が許されることが目的じゃないんだ。ルードの心の傷が少しでも塞がればいいとそう思っての行動だから」
ルードは震えながらその拳をおろした。
「分かってる...。お前が兵器だったことは...。それでも...それでも俺は!お前を許せない!」
「うん。僕もきっとゲントが殺されてたら、その相手を絶対に許せないと思う。だからルードも僕のことを許さなくていい」
ルードはゼーリッヒの胸ぐらから手を離し、自身の顔を被った。
「あぁ...くそっ...。お前は確かに隊長の息子だよ...」
「いい子だろ」
「...もう少し、時間をください。そいつと...ゼーリッヒと向き合える時間を」
「あぁ。いいだろ?ゼーリッヒ」
「うん。またいつでも話そうルード」
ゼーリッヒの言葉にルードは小さく頷いた。
ゼーリッヒに対しての嫌悪の視線はある。戦闘兵器であったことが知れ渡っているのだろう。
それでも、ゼーリッヒは人を助けることを、人と関わることをやめなかった。
どれだけ悪意を向けられようと、その悪意に素直に謝罪する様に皆毒気を抜かれていき、やがて街の人達はゼーリッヒに対しあからさまな悪意をぶつけることは無くなっていった。
街で見つけたルードにゼーリッヒが声を掛けると、大きく目を丸くしあからさまに表情を歪めた。
「何のつもりですか隊長」
「ゼーリッヒがお前に会いたがってな」
「は?俺に?」
ゼーリッヒはルードに歩み寄り、頭を下げた。
「ごめんなさい」
「...何に対する謝罪だ」
「僕は、貴方を傷つけたのだと思うから」
不意に頭を下げていたゼーリッヒの胸ぐらがルードによって掴みあげられる。ダリルが止めに入ろうとしたが、ゼーリッヒが手で制止する。
「お前のその謝罪になんの意味がある!」
「僕は戦闘兵器として運用されてた。人を殺すことになんの違和感も持ってなかった」
ルードは握った拳を振り上げる。
「でも、この間ゲントが死んで僕は、悲しかった。その悲しみを僕は何人もの人に与えてしまった。ルードもその1人だ。だから、ごめんなさい」
ルードが拳を振り上げても、ゼーリッヒは怯えることも、目をそらすこともしなかった。
「俺の戦友達は何人もお前に殺された...っ」
「その事実は変わらない。謝罪したところで僕の罪が消えないことも分かってる。だから僕は、今の僕に出来ることを精一杯やりたい。これは僕が許されることが目的じゃないんだ。ルードの心の傷が少しでも塞がればいいとそう思っての行動だから」
ルードは震えながらその拳をおろした。
「分かってる...。お前が兵器だったことは...。それでも...それでも俺は!お前を許せない!」
「うん。僕もきっとゲントが殺されてたら、その相手を絶対に許せないと思う。だからルードも僕のことを許さなくていい」
ルードはゼーリッヒの胸ぐらから手を離し、自身の顔を被った。
「あぁ...くそっ...。お前は確かに隊長の息子だよ...」
「いい子だろ」
「...もう少し、時間をください。そいつと...ゼーリッヒと向き合える時間を」
「あぁ。いいだろ?ゼーリッヒ」
「うん。またいつでも話そうルード」
ゼーリッヒの言葉にルードは小さく頷いた。
ゼーリッヒに対しての嫌悪の視線はある。戦闘兵器であったことが知れ渡っているのだろう。
それでも、ゼーリッヒは人を助けることを、人と関わることをやめなかった。
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