1 / 10
君達の幸せが僕の幸せ
しおりを挟む
高校に入ってすぐ、好きな人ができた。肩より下の黒髪で、よく笑う明るい子だった。
そして、そんな俺の好きになった子を同じような眼差しで見ている親友がいた。少しして、2人が思いあっていることを悟れた。
俺が好きな桃城千夏は俺の親友である七瀬海斗が好きだった。
そして同じように親友の海斗は桃城のことが好きだった。
男の俺から見ても海斗はいい男だ。だから、応援することに迷いはなかった。
好きな子が自分以外の男のために笑って、泣いて、悩んでいる姿に思うことがなかった訳では無いが。
海斗のためにプレゼントを買いたいから付き合ってくれと桃城に誘われた時、馬鹿だと自分で思うが心臓が高鳴った。
目的は好きな子が他の男へのプレゼントを買うためだというのに。
それでも、海斗のために悩んで、海斗のことを考えて満足そうに笑う桃城の顔はとても可愛かった。俺には絶対にさせられない顔だ。そう思うと少し得をしたとも思えた。
そんな桃城からプレゼントを受け取る海斗も嬉しそうで、2人が幸せだと俺も幸せになった。
ある日、2人から大事な話があると中庭に呼ばれた。俺はずっと前から決めていたことがある。
「祐誠。お前には1番に伝えたかったんだ」
少し照れた様子の2人はお互いの顔を見合わせたあと、手を繋いだ。
「私たち、付き合うことになりました!」
桃城と海斗の幸せそうな満面の笑みに色んな感情が溢れそうになった。
そんな感情を全て飲み込んで、笑う。
「おめでとう!!2人とも!!」
絶対に心からの笑顔で祝福を言おうと決めていた。2人は俺に何度も礼を言い、付き合って初めての下校をして行った。
2人の姿が完全に見えなくなって少ししてから、中庭のベンチに座り項垂れる。顔を覆って歯を食いしばった。
「あぁ...っ」
なるべく声を押し殺して泣く。溢れる涙は止まらない。
好きだった。本当に好きだったんだ。
でも海斗も大切な親友で、何度も何度も嫌な感情に捕らわれた。
それでも、それでも...っ。2人に幸せになって欲しくて、全てを飲み込んだ。
でももういいだろう。
少しだけ吐き出させてくれ。
明日からきっと笑顔でおはようと言えるから。幸せな2人を見て、幸せだと笑えるはずだから。
「馬鹿ですね」
不意に目の前に白いハンカチが差し出された。余裕がなく、近づいてくる気配に気づかなかった。驚きながら顔を上げれば、そこには光加減で茶髪にも見えるショートカットの女子学生がいた。
「人間基本は自分のことだけ考えていればいいんですよ。それなのに...あなたは馬鹿ですね」
彼女はそう言いながら俺の手に問答無用でハンカチを握らせた。
「でも、私はあなたのそんなところが好きですよ」
一瞬思考が停止した。彼女のことは見たことがある。学年は一緒だ。しかし、クラスは違ったように思う。話したことも多分ない。そんな子がなぜ突然?いや、別にこれは告白では...「告白ですよ」
思考を読まれたのかと思った。彼女は俺をまっすぐ見て続ける。
「私はあなたのことが好きです。那月さん。付き合いたいと思うほど」
おかしいな。告白というものはドキドキと不安や恥じらいなど揺れ動く感情と共にされるものではないのだろうか。彼女は淡々と最初の時から表情を変えることなく告げてきている。そのせいで余計に告白されているという実感が湧かない。
「今返事は求めません。だって、貴方が桃城さんのことを好きだったことも知ってますから」
その名前にドクンッと心臓が嫌な音を立てた。彼女は俺のそんな心境を知ってか知らずか、相変わらずの調子で続ける。
「私は桃城さんのことを一途に思いながら、彼女の幸せのために身を削った貴方を好きになりました。だから、私の思いだけ知っておいてください」
そう言って彼女は立ち去ろうと踵を返した。
呼び止めようとしたが、彼女は小さく笑って軽く振り向く。
「返事はもう少し私という存在と、私のあなたへの思いを知ってからにしてください。それでは」
彼女は一方的にそう言って去っていった。俺はただただぽかんと困惑するばかりだ。
俺は俺のことを好きと言ってくれたあの子の名前すら知らないのだから。
そして、そんな俺の好きになった子を同じような眼差しで見ている親友がいた。少しして、2人が思いあっていることを悟れた。
俺が好きな桃城千夏は俺の親友である七瀬海斗が好きだった。
そして同じように親友の海斗は桃城のことが好きだった。
男の俺から見ても海斗はいい男だ。だから、応援することに迷いはなかった。
好きな子が自分以外の男のために笑って、泣いて、悩んでいる姿に思うことがなかった訳では無いが。
海斗のためにプレゼントを買いたいから付き合ってくれと桃城に誘われた時、馬鹿だと自分で思うが心臓が高鳴った。
目的は好きな子が他の男へのプレゼントを買うためだというのに。
それでも、海斗のために悩んで、海斗のことを考えて満足そうに笑う桃城の顔はとても可愛かった。俺には絶対にさせられない顔だ。そう思うと少し得をしたとも思えた。
そんな桃城からプレゼントを受け取る海斗も嬉しそうで、2人が幸せだと俺も幸せになった。
ある日、2人から大事な話があると中庭に呼ばれた。俺はずっと前から決めていたことがある。
「祐誠。お前には1番に伝えたかったんだ」
少し照れた様子の2人はお互いの顔を見合わせたあと、手を繋いだ。
「私たち、付き合うことになりました!」
桃城と海斗の幸せそうな満面の笑みに色んな感情が溢れそうになった。
そんな感情を全て飲み込んで、笑う。
「おめでとう!!2人とも!!」
絶対に心からの笑顔で祝福を言おうと決めていた。2人は俺に何度も礼を言い、付き合って初めての下校をして行った。
2人の姿が完全に見えなくなって少ししてから、中庭のベンチに座り項垂れる。顔を覆って歯を食いしばった。
「あぁ...っ」
なるべく声を押し殺して泣く。溢れる涙は止まらない。
好きだった。本当に好きだったんだ。
でも海斗も大切な親友で、何度も何度も嫌な感情に捕らわれた。
それでも、それでも...っ。2人に幸せになって欲しくて、全てを飲み込んだ。
でももういいだろう。
少しだけ吐き出させてくれ。
明日からきっと笑顔でおはようと言えるから。幸せな2人を見て、幸せだと笑えるはずだから。
「馬鹿ですね」
不意に目の前に白いハンカチが差し出された。余裕がなく、近づいてくる気配に気づかなかった。驚きながら顔を上げれば、そこには光加減で茶髪にも見えるショートカットの女子学生がいた。
「人間基本は自分のことだけ考えていればいいんですよ。それなのに...あなたは馬鹿ですね」
彼女はそう言いながら俺の手に問答無用でハンカチを握らせた。
「でも、私はあなたのそんなところが好きですよ」
一瞬思考が停止した。彼女のことは見たことがある。学年は一緒だ。しかし、クラスは違ったように思う。話したことも多分ない。そんな子がなぜ突然?いや、別にこれは告白では...「告白ですよ」
思考を読まれたのかと思った。彼女は俺をまっすぐ見て続ける。
「私はあなたのことが好きです。那月さん。付き合いたいと思うほど」
おかしいな。告白というものはドキドキと不安や恥じらいなど揺れ動く感情と共にされるものではないのだろうか。彼女は淡々と最初の時から表情を変えることなく告げてきている。そのせいで余計に告白されているという実感が湧かない。
「今返事は求めません。だって、貴方が桃城さんのことを好きだったことも知ってますから」
その名前にドクンッと心臓が嫌な音を立てた。彼女は俺のそんな心境を知ってか知らずか、相変わらずの調子で続ける。
「私は桃城さんのことを一途に思いながら、彼女の幸せのために身を削った貴方を好きになりました。だから、私の思いだけ知っておいてください」
そう言って彼女は立ち去ろうと踵を返した。
呼び止めようとしたが、彼女は小さく笑って軽く振り向く。
「返事はもう少し私という存在と、私のあなたへの思いを知ってからにしてください。それでは」
彼女は一方的にそう言って去っていった。俺はただただぽかんと困惑するばかりだ。
俺は俺のことを好きと言ってくれたあの子の名前すら知らないのだから。
0
あなたにおすすめの小説
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう
音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。
幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。
事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。
しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。
己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。
修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる