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真っ直ぐな思いを君に
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ダメだ
ダメだ...っ!
全力で走って息が切れる。先程見た光景を忘れようと、誤魔化そうと走っているのに、頭から消えない。
那月くんが桃城さんに腕を掴まれている光景が。
私は人の感情に聡い。あの桃城さんの視線が語っていた。
那月くんを好きだと。
あの後どうなったか聞きたくない。見たくない。
不意にボロっと涙が溢れる。視界が歪む。
苦しい。
「山鹿!!!」
不意に強く腕を掴まれ、勢いよく振り返れば息を切らしている那月くんの姿があった。
「な...んで...」
「お前が逃げるからだろ...」
止めなきゃと思うのに涙が溢れる。その涙を掴まれていない腕で拭いながら叫ぶ。
「戻って!!」
「は?」
「桃城さんの話ちゃんと聞いた!?」
「いや...聞いてないけど...」
「ならちゃんと聞かなきゃダメだよ!後悔するよ!」
那月くんは優しいから。那月くんを好きな私があの光景を見て傷つくのに気付いてきっと追いかけてきてくれた。でも、だめだ。
「那月くん。信じられないかも知れないけど、桃城さん那月くんのこと好きだよ。私なんとなく分かるから。だから戻...」
戻ってって言いたかった。でも苦しくて涙が溢れて言葉が遮られた。
不意に頬を両手挟まれ顔を持ち上げられた。視線が那月くんと合う。
「お前の好きな奴は誰だよ」
「な、那月くん...」
反射的に答えれば那月くんは真っ直ぐ私を見つめて言った。
「俺が好きなのは山鹿希咲、お前だ」
時間が止まった。理解が追いつかない。
「それでも桃城のとこに戻れって言うのか?」
少し不機嫌そうな那月くんの声。好きだ。なんだかどうしようもなく好きだ。
あらゆる感情が涙になってボロボロと溢れる。
「お前...ちょっと泣きやめ」
那月くんが少し困ったように優しい手つきで私の涙を拭ってくれる。
「好き...那月くんが好き...」
溢れてうわ言のように言えば、那月くんは少し照れて笑った。
「俺も山鹿が好きだよ。俺を一途に思ってくれるとこも、照れ屋なとこも、いつものクールな感じも、今の素の喋り方も全部な」
那月くんの優しい声が響いて、段々と恥ずかしくなって顔を両手で覆った。
「照れてるな?」
「照れてない!!!!」
変に意地を張っていると、那月くんの手が私の耳に触れた。
「でも、耳真っ赤だぞ」
好きな声が耳元で響く。変な悲鳴が出て那月くんを突き飛ばした。
「いって、お前彼氏突き飛ばすなよ」
「か、彼氏!?!?」
「何?俺のこと好きなのに付き合う気はないの?」
「いや、その...」
だめだ。思考が回らない。まだ那月くんが私の事を好きだという事実も理解が及んでない。だというのに那月くんがまた距離を詰めてくる。
「好きだよ。山鹿。俺と付き合って」
ショート寸前の思考で辛うじて頷けば那月くんは嬉しそうに笑ってくれた。
好きが溢れてどうにかなりそうだった。
そんな私に気付いてくれたのか、那月くんが話し始めた。
「いや、ごめんな。突然。昨日と今日で色々考えててさ、最初は好きって言ってくれたから好きになったのかと思ったんだ」
ゆっくり落ち着けてきて、頷きながら話を聞く。
「でもさ、振り返ってみたら山鹿の好きなとこいっぱい出てきてさ。最初に慰めてくれた時とか、公園に連れてきてくれた時とか。ラーメン美味そうに食べるとことか。1番は女の子として可愛いとこだな」
ニカッと笑う那月くんの笑顔が眩しいのもあるが、好きな人にこれだけ言われるとまともに顔が見れず私は再び顔を覆った。
「それで今日偶然だけど傷つけるような光景見せちゃって、誰より、何より山鹿のこと優先したいって思ったんだ」
「ありがとうございます...」
声がか細くなって震えてしまう。正直もう色々無理です。
「そんな風に思ってたのに桃城のとこ戻れなんていうから少しイラッとしたけど」
ぽんと頭を撫でられた。
「俺の彼女が可愛いから許す」
そのあとのことは正直よく覚えてない。
翌日、晴れて両思いになって、夢かと思ってたら夢じゃなくて私はただただ幸せに過ごすことになった。
「今日どこ行く?」
「前可愛い喫茶店があってそこ行ってみたいで...みたい」
「まだ敬語抜けねーの?もう付き合って結構経つんだけど」
「だって好きな人が隣にいるって緊張する...から」
段々言っていて自分で恥ずかしくなり、語尾が小さくなっていく。チラリと隣を見上げれば、ニヤァと嬉しそうに笑っていた。
私は繋いでいた手を離し駆け出す。
「やっぱ帰る!!」
「逃すかよ!!」
私はすぐに捕まり結局いっしょに喫茶店に行くことになったのだった。
真っ直ぐな思いを君に ーENDー
ダメだ...っ!
全力で走って息が切れる。先程見た光景を忘れようと、誤魔化そうと走っているのに、頭から消えない。
那月くんが桃城さんに腕を掴まれている光景が。
私は人の感情に聡い。あの桃城さんの視線が語っていた。
那月くんを好きだと。
あの後どうなったか聞きたくない。見たくない。
不意にボロっと涙が溢れる。視界が歪む。
苦しい。
「山鹿!!!」
不意に強く腕を掴まれ、勢いよく振り返れば息を切らしている那月くんの姿があった。
「な...んで...」
「お前が逃げるからだろ...」
止めなきゃと思うのに涙が溢れる。その涙を掴まれていない腕で拭いながら叫ぶ。
「戻って!!」
「は?」
「桃城さんの話ちゃんと聞いた!?」
「いや...聞いてないけど...」
「ならちゃんと聞かなきゃダメだよ!後悔するよ!」
那月くんは優しいから。那月くんを好きな私があの光景を見て傷つくのに気付いてきっと追いかけてきてくれた。でも、だめだ。
「那月くん。信じられないかも知れないけど、桃城さん那月くんのこと好きだよ。私なんとなく分かるから。だから戻...」
戻ってって言いたかった。でも苦しくて涙が溢れて言葉が遮られた。
不意に頬を両手挟まれ顔を持ち上げられた。視線が那月くんと合う。
「お前の好きな奴は誰だよ」
「な、那月くん...」
反射的に答えれば那月くんは真っ直ぐ私を見つめて言った。
「俺が好きなのは山鹿希咲、お前だ」
時間が止まった。理解が追いつかない。
「それでも桃城のとこに戻れって言うのか?」
少し不機嫌そうな那月くんの声。好きだ。なんだかどうしようもなく好きだ。
あらゆる感情が涙になってボロボロと溢れる。
「お前...ちょっと泣きやめ」
那月くんが少し困ったように優しい手つきで私の涙を拭ってくれる。
「好き...那月くんが好き...」
溢れてうわ言のように言えば、那月くんは少し照れて笑った。
「俺も山鹿が好きだよ。俺を一途に思ってくれるとこも、照れ屋なとこも、いつものクールな感じも、今の素の喋り方も全部な」
那月くんの優しい声が響いて、段々と恥ずかしくなって顔を両手で覆った。
「照れてるな?」
「照れてない!!!!」
変に意地を張っていると、那月くんの手が私の耳に触れた。
「でも、耳真っ赤だぞ」
好きな声が耳元で響く。変な悲鳴が出て那月くんを突き飛ばした。
「いって、お前彼氏突き飛ばすなよ」
「か、彼氏!?!?」
「何?俺のこと好きなのに付き合う気はないの?」
「いや、その...」
だめだ。思考が回らない。まだ那月くんが私の事を好きだという事実も理解が及んでない。だというのに那月くんがまた距離を詰めてくる。
「好きだよ。山鹿。俺と付き合って」
ショート寸前の思考で辛うじて頷けば那月くんは嬉しそうに笑ってくれた。
好きが溢れてどうにかなりそうだった。
そんな私に気付いてくれたのか、那月くんが話し始めた。
「いや、ごめんな。突然。昨日と今日で色々考えててさ、最初は好きって言ってくれたから好きになったのかと思ったんだ」
ゆっくり落ち着けてきて、頷きながら話を聞く。
「でもさ、振り返ってみたら山鹿の好きなとこいっぱい出てきてさ。最初に慰めてくれた時とか、公園に連れてきてくれた時とか。ラーメン美味そうに食べるとことか。1番は女の子として可愛いとこだな」
ニカッと笑う那月くんの笑顔が眩しいのもあるが、好きな人にこれだけ言われるとまともに顔が見れず私は再び顔を覆った。
「それで今日偶然だけど傷つけるような光景見せちゃって、誰より、何より山鹿のこと優先したいって思ったんだ」
「ありがとうございます...」
声がか細くなって震えてしまう。正直もう色々無理です。
「そんな風に思ってたのに桃城のとこ戻れなんていうから少しイラッとしたけど」
ぽんと頭を撫でられた。
「俺の彼女が可愛いから許す」
そのあとのことは正直よく覚えてない。
翌日、晴れて両思いになって、夢かと思ってたら夢じゃなくて私はただただ幸せに過ごすことになった。
「今日どこ行く?」
「前可愛い喫茶店があってそこ行ってみたいで...みたい」
「まだ敬語抜けねーの?もう付き合って結構経つんだけど」
「だって好きな人が隣にいるって緊張する...から」
段々言っていて自分で恥ずかしくなり、語尾が小さくなっていく。チラリと隣を見上げれば、ニヤァと嬉しそうに笑っていた。
私は繋いでいた手を離し駆け出す。
「やっぱ帰る!!」
「逃すかよ!!」
私はすぐに捕まり結局いっしょに喫茶店に行くことになったのだった。
真っ直ぐな思いを君に ーENDー
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