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天国
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山を登るにつれ、激しい体調不良は本気で死を感じる程だった。割れるような頭の痛みや、引きずるように歩くことになる体のだるさ。
それでも、それでも。
たどり着いた。
その瞬間体の全ての不調を忘れた。その場に膝をつきただ目の前の光景に見惚れた。
上も下も一面の青空。飲み込まれそうな青空が地上にも広がっているのだ。白い雲と青い空。今俺は空の中に居る。
「ここが天国...あぁ...綺麗だなぁ...」
ハーリィに会いたかった。天国なら死んだハーリィに会えるんじゃないかって。そんな訳はないと頭では分かっていたのに。
そして、やはりここにハーリィはいない。
それでも来てよかった。
この景色を、ハーリィにも見せてあげたかった。
「エリス...。ありがとう俺をここに連れてきてくれて」
立ったままのエリスを見上げた。エリスは目を大きく開き、その瞳から静かに涙を零していた。
「エリス...?」
俺の声でハッと我に返ったエリスは袖で目元を拭う。
「とても...とても美しい景色だな。見れて良かった...。ジェッドはここでペランスと待っていてくれ。私はこの天国がどこまで続いているのか見に行ってくる」
歩き出そうとしたエリスの手首を反射的に掴む。
「ジェッド?どうしたんだ」
エリスは振り返りもせず問いかけてきた。
「イカナイデ。エリス」
ペランスの言葉にエリスはピクリと反応した。
そして振り返っていつものように笑う。
「ただ見てくるだけだ!頂上には幸い危険な生き物は居ない。安心してくれ」
「違う」
「違う...?」
違和感があったんだ。ずっと。その違和感の答えに今ようやくたどり着いた。
「あんたが好きなのは冒険じゃないだろう」
「急になんの話をしているんだ」
「ずっとずっと違和感はあった。でも、大したことじゃないと気にとめてなかった。でも...積み重なった違和感が答えだったんだ」
本人の体格に合わない探検服。
荒れのない柔らかな手。
雛から育てたというペランスの女性らしい口調。
冒険に対する知識。
そして、その知識は全て誰かから聞いたもののようだった。
「あんたが愛してたのは冒険じゃない。冒険をして、その体験を語って聞かせてた誰かだ。きっと、今のあんたみたいな口調の豪快で大らかな人の」
俺の言葉を聞いた瞬間、綺麗な金の瞳から幾つも幾つも涙が滑り落ちた。
やがてその場に崩れ落ち、顔を覆って泣くエリスの嗚咽は段々と大きくなった。
その背をずっと撫で続ける。
きっとこの人も会いたかったんだ。俺みたいに。
居なくなったその誰かに。
ペランスもずっとエリスに頬を擦り寄せていた。
どれぐらいの時間が経ったか分からない。
エリスは目元を押さえたまま口を開いた。
「ごめんなさい。恥ずかしい所を見せたわね」
彼女の見た目に合った女性らしい口調。これが本来の彼女の喋り方なのだろう。
「...亡くなったのは恋人だったのか?」
「夫よ。夫は冒険馬鹿で家に居ないのが当たり前だったわ。たまにふらーっと戻ってきてはお土産話と私が好きそうっていうお土産を買ってきてくれた。腹立つことに本当にそれが全部私の好きな物なの」
小さく笑う彼女から、大きな愛情が伝わってくる。エリスはポツポツと天国に至る冒険までの出来事を語ってくれた。
それでも、それでも。
たどり着いた。
その瞬間体の全ての不調を忘れた。その場に膝をつきただ目の前の光景に見惚れた。
上も下も一面の青空。飲み込まれそうな青空が地上にも広がっているのだ。白い雲と青い空。今俺は空の中に居る。
「ここが天国...あぁ...綺麗だなぁ...」
ハーリィに会いたかった。天国なら死んだハーリィに会えるんじゃないかって。そんな訳はないと頭では分かっていたのに。
そして、やはりここにハーリィはいない。
それでも来てよかった。
この景色を、ハーリィにも見せてあげたかった。
「エリス...。ありがとう俺をここに連れてきてくれて」
立ったままのエリスを見上げた。エリスは目を大きく開き、その瞳から静かに涙を零していた。
「エリス...?」
俺の声でハッと我に返ったエリスは袖で目元を拭う。
「とても...とても美しい景色だな。見れて良かった...。ジェッドはここでペランスと待っていてくれ。私はこの天国がどこまで続いているのか見に行ってくる」
歩き出そうとしたエリスの手首を反射的に掴む。
「ジェッド?どうしたんだ」
エリスは振り返りもせず問いかけてきた。
「イカナイデ。エリス」
ペランスの言葉にエリスはピクリと反応した。
そして振り返っていつものように笑う。
「ただ見てくるだけだ!頂上には幸い危険な生き物は居ない。安心してくれ」
「違う」
「違う...?」
違和感があったんだ。ずっと。その違和感の答えに今ようやくたどり着いた。
「あんたが好きなのは冒険じゃないだろう」
「急になんの話をしているんだ」
「ずっとずっと違和感はあった。でも、大したことじゃないと気にとめてなかった。でも...積み重なった違和感が答えだったんだ」
本人の体格に合わない探検服。
荒れのない柔らかな手。
雛から育てたというペランスの女性らしい口調。
冒険に対する知識。
そして、その知識は全て誰かから聞いたもののようだった。
「あんたが愛してたのは冒険じゃない。冒険をして、その体験を語って聞かせてた誰かだ。きっと、今のあんたみたいな口調の豪快で大らかな人の」
俺の言葉を聞いた瞬間、綺麗な金の瞳から幾つも幾つも涙が滑り落ちた。
やがてその場に崩れ落ち、顔を覆って泣くエリスの嗚咽は段々と大きくなった。
その背をずっと撫で続ける。
きっとこの人も会いたかったんだ。俺みたいに。
居なくなったその誰かに。
ペランスもずっとエリスに頬を擦り寄せていた。
どれぐらいの時間が経ったか分からない。
エリスは目元を押さえたまま口を開いた。
「ごめんなさい。恥ずかしい所を見せたわね」
彼女の見た目に合った女性らしい口調。これが本来の彼女の喋り方なのだろう。
「...亡くなったのは恋人だったのか?」
「夫よ。夫は冒険馬鹿で家に居ないのが当たり前だったわ。たまにふらーっと戻ってきてはお土産話と私が好きそうっていうお土産を買ってきてくれた。腹立つことに本当にそれが全部私の好きな物なの」
小さく笑う彼女から、大きな愛情が伝わってくる。エリスはポツポツと天国に至る冒険までの出来事を語ってくれた。
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