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第8章 セーヌ河にて楽園を想う
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第116話
一言、彼が肯定するとほんのかすかに、プレヌの表情が和らぐ。
「それ、そうとうしんどいと思うけど。安らげる場所がほしいとは思わないの?」
そう言われてロジェは、考えてみる。
今まで考えたことがなかった――考える必要がないと封じてきたことを、また一つ。
彼女の言葉は酷使した目に雫を落とすようだと思う。
無意識にぼやけさせていた世界を端から少しずつ鮮明にしていく。
「……オレは、家族と仲良くしたいと思ったことはない。そういう感情はよく、わからない」
立ち入ってはいけない雰囲気を感じたのか、プレヌが言葉を差し挟むことはなかった。
ただ黙って、耳を傾けることで、続きを促している。
「だから誰かとつきあってもうまくいかないのかもしれない」
そう。どんな女性と一緒にいてもそうだった。
結婚や家庭の夢を期待されても困惑してしまう。
「誰かと支え合ってなにか築くとか、想像ができないんだと、思う」
吟味するように目を閉じ、少しそうしていたあとで、プレヌは口を開いた。
「なにがあったのかはわからない。無理にはきかないけれど」
「ほっとする感覚をそもそも知らない、ということね――」
「――あと」
むすっと、その口元がヘの字を描いた。
シリアスだった表情が、どこか愛嬌を帯びる。
「……女性とつきあったこと、あるのね」
なぜか知らないが、些末なその事項に衝撃を受けているらしい。
一言、彼が肯定するとほんのかすかに、プレヌの表情が和らぐ。
「それ、そうとうしんどいと思うけど。安らげる場所がほしいとは思わないの?」
そう言われてロジェは、考えてみる。
今まで考えたことがなかった――考える必要がないと封じてきたことを、また一つ。
彼女の言葉は酷使した目に雫を落とすようだと思う。
無意識にぼやけさせていた世界を端から少しずつ鮮明にしていく。
「……オレは、家族と仲良くしたいと思ったことはない。そういう感情はよく、わからない」
立ち入ってはいけない雰囲気を感じたのか、プレヌが言葉を差し挟むことはなかった。
ただ黙って、耳を傾けることで、続きを促している。
「だから誰かとつきあってもうまくいかないのかもしれない」
そう。どんな女性と一緒にいてもそうだった。
結婚や家庭の夢を期待されても困惑してしまう。
「誰かと支え合ってなにか築くとか、想像ができないんだと、思う」
吟味するように目を閉じ、少しそうしていたあとで、プレヌは口を開いた。
「なにがあったのかはわからない。無理にはきかないけれど」
「ほっとする感覚をそもそも知らない、ということね――」
「――あと」
むすっと、その口元がヘの字を描いた。
シリアスだった表情が、どこか愛嬌を帯びる。
「……女性とつきあったこと、あるのね」
なぜか知らないが、些末なその事項に衝撃を受けているらしい。
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