死ぬまでの暇つぶしにパリ巡りでも

ほか

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第8章 セーヌ河にて楽園を想う

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「そんな場合じゃないでしょ」



 桃色の夕焼けを仰ぐふりをして顔を隠して。



 悔しまぎれのように、プレヌは言う。



「……自分自身がほっと気をぬく感覚がわからないのに、わたしの未来なんか心配してる場合じゃないのよ」



 ぐずぐずと鼻をすすり、ランチボックスから再び取り出した残りのホットサンドをやけくそのようにぱくつく。



「なんだろう」



 吹きわたる風のささやかさからなのか。



 くすぐったい心地がする。



 心境を言い当てる言葉を探して、ロジェはくすりと笑みを零した。



「今は――すごく、楽だ」



 相変わらず八つ当たりのようにブレッドを咀嚼しながら、プレヌが言う。



「目の前にいるのが美女じゃないからっ?」

 

「ううん」



「目の前にいるのが、他の誰でもなく、きみだから」



 プレヌは頬をかんだのか、あいたっと顔を抑える。



 滑稽な表情にとうとう、ロジェは笑い出す。

 笑いながら、確信する。



 彼女は、隣にいる人の気持ちを楽にする。



「だからきみのことだって、楽にしてくれる人がきっといるってこと」
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