死ぬまでの暇つぶしにパリ巡りでも

ほか

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第9章 歌姫の来訪

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 それまでのどこか気安い流れが微妙にこわばる。



 消えた表情を探すように外側を向いたまま、グラスにワインを注ぐヴェッティーナにロジェは言う。



「そのワインけっこう強いよ」



 食べないのをごまかすように、少量だけ含んだ際の所見を伝える。



「声が資本だろ。やめといたほうが」



「どれ?」

 俊足で影が迫り来た。

 くちゅり、という音の直後、頬に感じる柔い感触。



 濡羽色の髪が視界にしなだれかかる隙間――向かい側でプレヌが愕然と目を見開くのが見える。



「ちょっ」



「たいしたことないわね」



 口づけられたことを悟り、目を白黒させるロジェ。



 そして前方から迫りくる黒いオーラを発するプレヌにヴェッティーナはやんわりと微笑む。
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