死ぬまでの暇つぶしにパリ巡りでも

ほか

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終章

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 パリ発。イギリス経由新大陸行きの、大型船の一室。

 そこに、つい先日パリ中の話題をさらった二人の姿はあった。

 ヴェルレーヌ宝石社に雇われた凄腕の奴隷管理官と、手紙を交わして彼に奴隷の解放をそそのかしたと囁かれる娘である。




 船室のベッドの上で、不自然に縮れた髪をもてあそびながら、娘――プレヌはため息をついた。

「自慢の金髪が台無し。拷問もばっちこいだったけど、髪だけは焼くのを遠慮してほしかったわ」

 すっかりパリジェンヌのような台詞をうそぶく彼女のベッドのもとへ、朝食のプレートを置きに来た彼――ロジェが笑い声を上げる。




「すぐ伸びるさ」

 いじけたようにすっぽり掛布を頭からかぶって、プレヌが言う。

「……ほんとにそう思う?」

 肩に手をやって見つめてくる視線が甘やかに細められる。

「そうこの世の終わりみたいな顔すんなって。今だって十分きれいだ」

 ぱっと、プレヌの顔が輝く。

「ほんと?」

「あぁ。なんなら、きみは髪なんか一本もなくなったって美人だよ」




 プレヌの顔が、微妙になり、崩れた。

「ロジェなんかきらい」

「……なんでだよ」

 つっこみとも不満ともつかない声をロジェが漏らした。




 船室のベッドに腰を下ろしそっぽを向いたさきにあったのは鏡。

 自らの胸元に光り輝くネックレス。思わず体の角度を変えてしみじみと見つめてしまう。

 まさかこれが、エスポールが作らせる幻のブルーダイヤだったなんて。
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