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第6章 執事と主様、飲み会へ行く
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というわけで、三十分くらい街中でウィンドーショッピングしてから指定のお店に入ると、ハーヴェイたち三人が飲んでいた。
すっかりいい感じの空気だ。
出て行こうとしたら、メイナードが目で合図してくる。
ん? もう少し待てってことかな?
ちょっと様子を見てみるか……。
「いやはやそれにしても、ほの様は素晴らしい主様でございますね」
盛り上げ役に徹するメイナード。
「……。ああ、そうだな」
その横でハーヴェイは、相槌を打っている。
「お仕事も頑張られて、そのうえあのように歌声もお美しいとは! いかがでしょうみなさん。このあとカラオケにまた参上するというのは」
「俺はパスするぜ。飲んでるほうがいい」
ボイスがすげなく断る。
「おやそうですか。ではハーヴェイさんはいかがでしょう」
「……俺も、遠慮させてもらおうかと思う」
ハーヴェイは何故か、シリアスな表情だ。
「あの声を聴いていると……なんというか。妙な気持ちになる。美しい声に違いはないんだが。その、身体の内側からぞくっとするような」
「はん」
ボイスがイケボ低声で言う。
ニヒルに、口の端を上げて。
「色気があるって素直に言ったらどうだ。めんどくせー奴だな」
ずっきゅん。
ボイスファンの梅ちゃんの気持ちが今わかった……!
なんだこの愚直な口調なのにときめかせる殺し文句。
「なっ。ボイス、俺はそういうつもりでは……」
ハーヴェイも赤くなってる。
くっ、かわいいやつめ……。
「主様と執事の関係でそんな、ことを……」
「んっとに手間のかかる野郎だな。てめーの色恋なんざてめーでどうにかしろってんだ」
「言われなくてもそうする。誰も頼んでないだろ」
わわわ、やばい。
そういえばハーヴェイとボイスは執事の中では同期で、けんか仲間だったっけ。
言い争いを始めるとお互いムキになってしまう……。
おろおろしていたら、メイナードが目で合図してきた。
今ってことか。
よし。緊張するけど、作戦通り、行くぞ!
「あらみなさん、お揃いなのね。遅れてごめんなさ~い」
最初からハイテンション、強めのキャラ、大事。
「あ、主様……なんだか、いつもと様子が……」
これも打ち合わせたとおり、戸惑うハーヴェイの横に座る。
「さあさ我らの主様、ぐいっといってください!」
メイナードが並々と継いだノンアルをごくごく飲む。
「あ、主様。たしかお酒はあまり得意ではないと……。そんなスピードで。無茶です。おやめください」
「っぷはー」
よし、ここからだ。
エンタメ小説家にかかればこれくらいお安いものだ。
ようはキャバ嬢キャラでいけばいいんだろう。
そそっと、メイナードにすりよる。
「ねぇメイナード。カラオケでのあなたの声すてきだったわ~ぁ」
「芸術に秀でた男の人ってすてきよね~ぇ」
「ふふふ。おほめにあずかり光栄でございます」
「あ、主様。メイナードと少し距離が近すぎです」
「けっ。茶番のはじまりか」
「茶番……?」
「あら~。武骨でつれない殿方もすてき」
ボイスのたくましい肩にもたれかかれば、
「主様……」
ハーヴェイが狙い通りの切なそうな顔をしてくれる。
なんだかだんだんほんとうに酔っているような心地になってきた。
キャラ設定だとわかっていてもキュンとくるぜちくしょう。
「でも……真面目でストイックな人が、やっぱり好み」
とんっとハーヴェイの肩を叩く。
それだけでふらりとよろけたところを見ると、相当飲まされたらしい。
その隙を逃さず、真上から迫る。
「ねぇ、ハーヴェイ……」
「主、様……?」
「あたしのこと、どう思う?」
「そ、それは……」
「さっきの言葉がほんとうなら」
彼の胸に手を当て、身体を寄せる。
「証拠を見せて。今ここで」
「いいぞほの。もっと言ってやれ」
ボイスがいい感じにはやし立ててくれる。
顔を赤らめ目をぱちくりさせるハーヴェイに、囁く。
「亡くなったご家族への花束もいいけど。あたしだってほしい。ハーヴェイから、花束……」
あ。まずい。
飲んでないはずなのに、くらりと眩暈がして――。
そのまま倒れ込んだ。
「主様! だいじょうぶですか⁉」
「うーん、ハーヴェイ、証拠を……見せて……」
「それは……」
この腕を支える彼の腕を感じながら、急激に、眠くなってくる……。
「なんと! このメイナード痛恨のミス! 主様に飲ませたのは、アルコール度数の強いカクテルでございました!」
メイナードがなんか言っているが、聞こえない。
ただ目の前で囁く声だけ。
「今はこれで、お許しいただけますか」
額に柔い感触を感じたのを最後に、わたしは目を閉じた。
すっかりいい感じの空気だ。
出て行こうとしたら、メイナードが目で合図してくる。
ん? もう少し待てってことかな?
ちょっと様子を見てみるか……。
「いやはやそれにしても、ほの様は素晴らしい主様でございますね」
盛り上げ役に徹するメイナード。
「……。ああ、そうだな」
その横でハーヴェイは、相槌を打っている。
「お仕事も頑張られて、そのうえあのように歌声もお美しいとは! いかがでしょうみなさん。このあとカラオケにまた参上するというのは」
「俺はパスするぜ。飲んでるほうがいい」
ボイスがすげなく断る。
「おやそうですか。ではハーヴェイさんはいかがでしょう」
「……俺も、遠慮させてもらおうかと思う」
ハーヴェイは何故か、シリアスな表情だ。
「あの声を聴いていると……なんというか。妙な気持ちになる。美しい声に違いはないんだが。その、身体の内側からぞくっとするような」
「はん」
ボイスがイケボ低声で言う。
ニヒルに、口の端を上げて。
「色気があるって素直に言ったらどうだ。めんどくせー奴だな」
ずっきゅん。
ボイスファンの梅ちゃんの気持ちが今わかった……!
なんだこの愚直な口調なのにときめかせる殺し文句。
「なっ。ボイス、俺はそういうつもりでは……」
ハーヴェイも赤くなってる。
くっ、かわいいやつめ……。
「主様と執事の関係でそんな、ことを……」
「んっとに手間のかかる野郎だな。てめーの色恋なんざてめーでどうにかしろってんだ」
「言われなくてもそうする。誰も頼んでないだろ」
わわわ、やばい。
そういえばハーヴェイとボイスは執事の中では同期で、けんか仲間だったっけ。
言い争いを始めるとお互いムキになってしまう……。
おろおろしていたら、メイナードが目で合図してきた。
今ってことか。
よし。緊張するけど、作戦通り、行くぞ!
「あらみなさん、お揃いなのね。遅れてごめんなさ~い」
最初からハイテンション、強めのキャラ、大事。
「あ、主様……なんだか、いつもと様子が……」
これも打ち合わせたとおり、戸惑うハーヴェイの横に座る。
「さあさ我らの主様、ぐいっといってください!」
メイナードが並々と継いだノンアルをごくごく飲む。
「あ、主様。たしかお酒はあまり得意ではないと……。そんなスピードで。無茶です。おやめください」
「っぷはー」
よし、ここからだ。
エンタメ小説家にかかればこれくらいお安いものだ。
ようはキャバ嬢キャラでいけばいいんだろう。
そそっと、メイナードにすりよる。
「ねぇメイナード。カラオケでのあなたの声すてきだったわ~ぁ」
「芸術に秀でた男の人ってすてきよね~ぇ」
「ふふふ。おほめにあずかり光栄でございます」
「あ、主様。メイナードと少し距離が近すぎです」
「けっ。茶番のはじまりか」
「茶番……?」
「あら~。武骨でつれない殿方もすてき」
ボイスのたくましい肩にもたれかかれば、
「主様……」
ハーヴェイが狙い通りの切なそうな顔をしてくれる。
なんだかだんだんほんとうに酔っているような心地になってきた。
キャラ設定だとわかっていてもキュンとくるぜちくしょう。
「でも……真面目でストイックな人が、やっぱり好み」
とんっとハーヴェイの肩を叩く。
それだけでふらりとよろけたところを見ると、相当飲まされたらしい。
その隙を逃さず、真上から迫る。
「ねぇ、ハーヴェイ……」
「主、様……?」
「あたしのこと、どう思う?」
「そ、それは……」
「さっきの言葉がほんとうなら」
彼の胸に手を当て、身体を寄せる。
「証拠を見せて。今ここで」
「いいぞほの。もっと言ってやれ」
ボイスがいい感じにはやし立ててくれる。
顔を赤らめ目をぱちくりさせるハーヴェイに、囁く。
「亡くなったご家族への花束もいいけど。あたしだってほしい。ハーヴェイから、花束……」
あ。まずい。
飲んでないはずなのに、くらりと眩暈がして――。
そのまま倒れ込んだ。
「主様! だいじょうぶですか⁉」
「うーん、ハーヴェイ、証拠を……見せて……」
「それは……」
この腕を支える彼の腕を感じながら、急激に、眠くなってくる……。
「なんと! このメイナード痛恨のミス! 主様に飲ませたのは、アルコール度数の強いカクテルでございました!」
メイナードがなんか言っているが、聞こえない。
ただ目の前で囁く声だけ。
「今はこれで、お許しいただけますか」
額に柔い感触を感じたのを最後に、わたしは目を閉じた。
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