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第7章 執事と主様と大事件
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小熊ほの住むアパート内は今無人である。
机に無左座に転がっているスマホから声が聞こえる。
「ハーヴェイさん、そちらにいらっしゃいますか? 聞こえたら返答願います!」
しばらくして二色の光がさし、二つの人影が現れた。
「一足、遅かったようですね……」
そのうちの一人、オレンジ色の髪にヘテクロミアの瞳の執事は、瞳を曇らせる。
「ハーヴェイの奴がここにいないからどうしたってんだ、メイナード。また買い物にでも行ったんだろ」
眼帯に黒髪を束ねた執事がそう応じるが、
「いいえ、ボイスさん。これはゆゆしき事態ですよ」
メイナードと呼ばれた執事は神妙な表情で言う。
「先ほど、屋敷の地下を確認したら――悪魔の卵たちを閉じ込めておく、あの紋章を入れた箱が空になっていたのです」
それを聞いた途端、ボイスと呼ばれた執事の顔色が変わった。
「なんだって? ちっ。ハーヴェイのやつめ」
「おそらく、こちらの世界で行使するつもりでしょうね……」
「くそ。手間取らせやがって」
部屋の戸口に向けて駆け出す彼に、メイナードが呼びかける。
「ボイスさん、どこへ」
「手あたり次第探して止めるっきゃねえだろ! でなきゃあいつは」
そこへ玄関のチャイムが鳴った。
インターホンから、ハイトーンの女性の声が響く。
『ほのさん? ほのさ~ん。おかしいな。この時間であってるはずなのに……』
「はん。なんか知らんが渡りに船だ」
ボイスは勢いよく戸を開け放つと、マロンブラウンの髪にパステルカラーのワンピースを着た女性が、玄関先でひっと息を飲んだ。
「おう。あんた主の友達か?」
「え? え……? あ、あなたは……」
青ざめていた女性の顔色だったが、徐々に赤味の方が強くなっていく。
とうとう彼女はネイルのついた手で口元を覆った。
「嘘……推しそっくり……」
「あ? 悪いが時間がないんでな。ほのの友達なのかどうなんだ?」
「は、はい……。ほのさんのオタ活友達の、その、梅ちゃん、です……」
「そうか」
ボイスはあごで室内をしゃくる。
「ならちっとばかしここで、留守番頼めるか」
「えっ、いい、ですけど……」
「緊急事態なんでな。すまねぇ。——おい」
ボイスがメイナードに合図すると、
「ご挨拶もせずに申し訳ありません。ご婦人。留守は任せました」
二人は連れだって外へ繰り出す――。
「あの、ほのさんになにか……? だいじょうぶなんでしょうか」
心から心配そうに眉を顰める彼女に振り返り、ボイスは言った。
「まぁ、ねえっつったら嘘になるな。だが俺らの主だ。ぜったいどうにかすっからよ」
コワモテのまま、ボイスは親指を立てる。
「安心して待っててくれや。梅ちゃん」
言葉と同時にがたりと扉が閉まる。
「……っ」
後に残されたのは、ぎゅっとワンピースの胸の部分を握り、かすかに頬を上気させた梅ちゃんだった。
机に無左座に転がっているスマホから声が聞こえる。
「ハーヴェイさん、そちらにいらっしゃいますか? 聞こえたら返答願います!」
しばらくして二色の光がさし、二つの人影が現れた。
「一足、遅かったようですね……」
そのうちの一人、オレンジ色の髪にヘテクロミアの瞳の執事は、瞳を曇らせる。
「ハーヴェイの奴がここにいないからどうしたってんだ、メイナード。また買い物にでも行ったんだろ」
眼帯に黒髪を束ねた執事がそう応じるが、
「いいえ、ボイスさん。これはゆゆしき事態ですよ」
メイナードと呼ばれた執事は神妙な表情で言う。
「先ほど、屋敷の地下を確認したら――悪魔の卵たちを閉じ込めておく、あの紋章を入れた箱が空になっていたのです」
それを聞いた途端、ボイスと呼ばれた執事の顔色が変わった。
「なんだって? ちっ。ハーヴェイのやつめ」
「おそらく、こちらの世界で行使するつもりでしょうね……」
「くそ。手間取らせやがって」
部屋の戸口に向けて駆け出す彼に、メイナードが呼びかける。
「ボイスさん、どこへ」
「手あたり次第探して止めるっきゃねえだろ! でなきゃあいつは」
そこへ玄関のチャイムが鳴った。
インターホンから、ハイトーンの女性の声が響く。
『ほのさん? ほのさ~ん。おかしいな。この時間であってるはずなのに……』
「はん。なんか知らんが渡りに船だ」
ボイスは勢いよく戸を開け放つと、マロンブラウンの髪にパステルカラーのワンピースを着た女性が、玄関先でひっと息を飲んだ。
「おう。あんた主の友達か?」
「え? え……? あ、あなたは……」
青ざめていた女性の顔色だったが、徐々に赤味の方が強くなっていく。
とうとう彼女はネイルのついた手で口元を覆った。
「嘘……推しそっくり……」
「あ? 悪いが時間がないんでな。ほのの友達なのかどうなんだ?」
「は、はい……。ほのさんのオタ活友達の、その、梅ちゃん、です……」
「そうか」
ボイスはあごで室内をしゃくる。
「ならちっとばかしここで、留守番頼めるか」
「えっ、いい、ですけど……」
「緊急事態なんでな。すまねぇ。——おい」
ボイスがメイナードに合図すると、
「ご挨拶もせずに申し訳ありません。ご婦人。留守は任せました」
二人は連れだって外へ繰り出す――。
「あの、ほのさんになにか……? だいじょうぶなんでしょうか」
心から心配そうに眉を顰める彼女に振り返り、ボイスは言った。
「まぁ、ねえっつったら嘘になるな。だが俺らの主だ。ぜったいどうにかすっからよ」
コワモテのまま、ボイスは親指を立てる。
「安心して待っててくれや。梅ちゃん」
言葉と同時にがたりと扉が閉まる。
「……っ」
後に残されたのは、ぎゅっとワンピースの胸の部分を握り、かすかに頬を上気させた梅ちゃんだった。
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