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第12章 主様、執事の世界へ
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梅雨が本格的になってきた、ある日のこと。
郊外の紫陽花カフェで休日のひとときをわたしは梅ちゃんと過ごしていた。
まぁ言ってみれば、今回はわたしのほうの、報告会だ。
「いや~ん、閉じ込められそうになるとかやばい……!」
ひとまずあらましを告げると、梅ちゃんは頬を挟み込んで揺れた。
「ハーヴェイさんの愛が暴走しちゃってるじゃないですか……」
「まぁなんていうか……。大事にはしてくれてるかな」
相変わらず、アパートで彼に世話を焼かれているとき。
たまに甘えられるとき。
まったりしているときにも、思う。
この時がずっと続けばいいな……。
「きっと、続いていきますよ」
紫陽花ティーから立ち上る湯気の中、女子二人、まったりしていると。
突如響いたスマホの着信音が、沈黙を破った。
ハーヴェイからだ。
「もしもし?」
『主様、突然お呼び建てしてしまい申し訳ありません。……緊急事態です』
「え?」
雷のように嫌な予感が胸に刻まれる。
もしや、父親がまたなにかしたとか。
「ほのさん……」
異変を察したのか梅ちゃんも身を乗り出してくる。
「ハーヴェイ、危害は加えられてないよね。子ども園の子たちや周りの人たちは……」
『ひとまず、お迎えに参上しているので、外に出てきていただけますか』
「うん……」
梅ちゃんと顔を見合わせ、急ぎ会計を済ませて、店の外へ出る。
所々に咲く紫陽花に露の玉が光っている。
一時的に雨は止んだみたいだ。
数メートル先に、シャツにジーンズ姿のハーヴェイが見えた。
彼は微笑んで、上を指さす。
七色の虹が、舞踏会場へのアーチのように、空にかかっていた。
梅ちゃんと二人、見惚れていると、いつの間にかすぐそばにハーヴェイが来ている。
「どうしても、主様と見なくてはと思いまして」
「けっ。気取ったことしやがって」
紫陽花の陰のベンチに身を投げ出すように座っているもう一つの陰もある。
眼帯に革ジャン。長髪を束ねた姿。
「そう言いながら、ボイスさんも来てくれたんですね! 梅ちゃん感激です~」
「ん、まぁ、なんだ。たまたまひましてたってだけだ」
ハーヴェイに寄り添い、改めて、ドレスアップした、生まれたてほやほやの青空を見上げる。
「綺麗だね」
「主様には、敵いませんが」
「……あんたなんか、すごいね……」
真顔を崩さない彼に、そんな言葉が出てきてしまう。
よくもそんな美辞麗句をほんとうであるかのように言える技術があるものだ。
「ここまで来ると、照れるを通り越して、感心するレベルだわ」
すると彼は、紫陽花に光る露のような笑顔を見せた。
「では、この先、ほの様に何度でも感心していただけますね」
「ん?」
そして、胸に手をあてる、お決まりのポーズをとる。
「いついかなるときでも俺は、誰にも優しくて、自分を責めがちなあなたを、生涯かけて讃え続けますから」
「ふん。キザなプロポーズだな」
「きゃ~っ、ボイスさん、わたしにも言って……!」
「あいにくと柄じゃないんでな」
「えーっ」
「……こういうのは、人から盗むもんじゃねー」
「えっ……!」
ときめいちゃっている梅ちゃんはそっとしておくことにして。
ハーヴェイを見ると、頬を赤らめながら、気まずそうに言う。
「ええっと……主様。今のはその」
「わかってるよ。深い意味じゃないってことは」
「いえ。俺としては。……そう、とっていただいてもかまいませんが」
「え? いや、逆にどうとっていいか困るそれ……」
目をぱちくりさせていると、ハーヴェイはふっと吹き出した。
「では、どうぞ想いのまま。すべて主様の、お気に召すままに」
郊外の紫陽花カフェで休日のひとときをわたしは梅ちゃんと過ごしていた。
まぁ言ってみれば、今回はわたしのほうの、報告会だ。
「いや~ん、閉じ込められそうになるとかやばい……!」
ひとまずあらましを告げると、梅ちゃんは頬を挟み込んで揺れた。
「ハーヴェイさんの愛が暴走しちゃってるじゃないですか……」
「まぁなんていうか……。大事にはしてくれてるかな」
相変わらず、アパートで彼に世話を焼かれているとき。
たまに甘えられるとき。
まったりしているときにも、思う。
この時がずっと続けばいいな……。
「きっと、続いていきますよ」
紫陽花ティーから立ち上る湯気の中、女子二人、まったりしていると。
突如響いたスマホの着信音が、沈黙を破った。
ハーヴェイからだ。
「もしもし?」
『主様、突然お呼び建てしてしまい申し訳ありません。……緊急事態です』
「え?」
雷のように嫌な予感が胸に刻まれる。
もしや、父親がまたなにかしたとか。
「ほのさん……」
異変を察したのか梅ちゃんも身を乗り出してくる。
「ハーヴェイ、危害は加えられてないよね。子ども園の子たちや周りの人たちは……」
『ひとまず、お迎えに参上しているので、外に出てきていただけますか』
「うん……」
梅ちゃんと顔を見合わせ、急ぎ会計を済ませて、店の外へ出る。
所々に咲く紫陽花に露の玉が光っている。
一時的に雨は止んだみたいだ。
数メートル先に、シャツにジーンズ姿のハーヴェイが見えた。
彼は微笑んで、上を指さす。
七色の虹が、舞踏会場へのアーチのように、空にかかっていた。
梅ちゃんと二人、見惚れていると、いつの間にかすぐそばにハーヴェイが来ている。
「どうしても、主様と見なくてはと思いまして」
「けっ。気取ったことしやがって」
紫陽花の陰のベンチに身を投げ出すように座っているもう一つの陰もある。
眼帯に革ジャン。長髪を束ねた姿。
「そう言いながら、ボイスさんも来てくれたんですね! 梅ちゃん感激です~」
「ん、まぁ、なんだ。たまたまひましてたってだけだ」
ハーヴェイに寄り添い、改めて、ドレスアップした、生まれたてほやほやの青空を見上げる。
「綺麗だね」
「主様には、敵いませんが」
「……あんたなんか、すごいね……」
真顔を崩さない彼に、そんな言葉が出てきてしまう。
よくもそんな美辞麗句をほんとうであるかのように言える技術があるものだ。
「ここまで来ると、照れるを通り越して、感心するレベルだわ」
すると彼は、紫陽花に光る露のような笑顔を見せた。
「では、この先、ほの様に何度でも感心していただけますね」
「ん?」
そして、胸に手をあてる、お決まりのポーズをとる。
「いついかなるときでも俺は、誰にも優しくて、自分を責めがちなあなたを、生涯かけて讃え続けますから」
「ふん。キザなプロポーズだな」
「きゃ~っ、ボイスさん、わたしにも言って……!」
「あいにくと柄じゃないんでな」
「えーっ」
「……こういうのは、人から盗むもんじゃねー」
「えっ……!」
ときめいちゃっている梅ちゃんはそっとしておくことにして。
ハーヴェイを見ると、頬を赤らめながら、気まずそうに言う。
「ええっと……主様。今のはその」
「わかってるよ。深い意味じゃないってことは」
「いえ。俺としては。……そう、とっていただいてもかまいませんが」
「え? いや、逆にどうとっていいか困るそれ……」
目をぱちくりさせていると、ハーヴェイはふっと吹き出した。
「では、どうぞ想いのまま。すべて主様の、お気に召すままに」
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