9 / 48
2章 小さな友人
4
しおりを挟む
それから三日間、珍しく亜希はシフトが入っていなかった。アルバイトで削られる勉強時間を取り戻そうと奮起していた三日目、自席で予習に励んでいた彼女のもとに航がやって来た。
「今日、空いてる?」
眠たそうな顔で気怠く言うのに、亜希は咄嗟にその理由を考えた。都合が悪くなったから、今日のシフトを代わって欲しい。それが最も妥当だと思ったから、「バイトですか?」と返す。
しかし彼は「そうじゃないけど」と言った。
「何もなかったら、八時に公園来てよ。五丁目のけやき公園」
「何の用事ですか。今じゃ駄目なんですか」
「駄目。まあ、無理ならいいよ」
「いえ、行けますけど……」
「わかった。そんじゃ待ってる」
相変わらずマイペースな彼は、言いたいことだけを言うとさっさと自分の席に戻ってしまう。
まったくもってわけがわからない。亜希が首をひねっていると、いそいそと子之葉が寄ってきた。
「なになに、なんの約束?」
また彼女は、浮いた話を期待しているようだった。
「なんだろう。多分、バイトのことだと思うけど」
「それはつまらんなあ」
「変な期待しないでよ」
「しゃあないやん。気になるんやから」手に持った単語帳をぱらぱらと捲る彼女は楽しそうだ。「それにしても、亜希も変な子やな。同級生に敬語やなんて」
「けじめだから。私の」
亜希も同じ単語帳を手にすると、はいはいと子之葉は笑った。
「今日、空いてる?」
眠たそうな顔で気怠く言うのに、亜希は咄嗟にその理由を考えた。都合が悪くなったから、今日のシフトを代わって欲しい。それが最も妥当だと思ったから、「バイトですか?」と返す。
しかし彼は「そうじゃないけど」と言った。
「何もなかったら、八時に公園来てよ。五丁目のけやき公園」
「何の用事ですか。今じゃ駄目なんですか」
「駄目。まあ、無理ならいいよ」
「いえ、行けますけど……」
「わかった。そんじゃ待ってる」
相変わらずマイペースな彼は、言いたいことだけを言うとさっさと自分の席に戻ってしまう。
まったくもってわけがわからない。亜希が首をひねっていると、いそいそと子之葉が寄ってきた。
「なになに、なんの約束?」
また彼女は、浮いた話を期待しているようだった。
「なんだろう。多分、バイトのことだと思うけど」
「それはつまらんなあ」
「変な期待しないでよ」
「しゃあないやん。気になるんやから」手に持った単語帳をぱらぱらと捲る彼女は楽しそうだ。「それにしても、亜希も変な子やな。同級生に敬語やなんて」
「けじめだから。私の」
亜希も同じ単語帳を手にすると、はいはいと子之葉は笑った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる