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4章 秘密と約束
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どことなくもやもやした思いを胸にしたまま、亜希はレジの前にいた。隣のレジを担当している航は、いつも通りやる気のない表情で時折眠たそうに瞼を擦っている。
そこに一人の客が、ペットボトルを一本持ってやって来た。
「百十円になりまーす」
それを受け取って間延びした声で言う航に、客が驚いた顔をした。
「あれ、来栖くん」
わざとらしいな、と思ったが何も言わず、亜希は凛香を眺める。対する航は、改めて彼女の顔を見てようやく気が付いたらしい。
「あー、えっと、山本さんだっけ?」
二人は昨年、同じクラスだったそうだ。それでも特に親しい間柄というわけではなかったと凛香は言っていた。航にとっては可も不可もない、ただの元クラスメイトだろうと。
「そうそう。へー、ここで働いてたんだ!」小銭を出しながら凛香は感心した声を出す。「偉いよね。バイトしてるなんて」
「それほどでも」
彼はレジから吐き出されたレシートと商品を手渡した。「そんじゃ、ご贔屓に」
至極あっさりと航は会話を打ち切ってしまう。凛香もそれ以上は会話を続けることなく、「頑張ってね」とだけ言って背を向けた。
遠ざかっていくその背を見送りながら、そろそろかと亜希は口を開いた。
「あっ」
突拍子もない声に、航が振り向いた。
「あれ、落としちゃったのかな」
レジの前には、凛香がこっそり意図的に落とした犬のキーホルダーが落ちている。「ほんとだ」とカウンターの出口に近い航が、それを拾った。
「さっき落としてったみたいですね」亜希は顔を上げ、店から出ていく凛香を見た。「まだ間に合うかも」
キーホルダーを手に航は足早にレジを離れ、それを渡すべく彼女を呼び止めた。
亜希は、ふうと息をついた。「ありがとー!」という女の子の声が見なくても聞こえてくる。取り合えず、計画は上手くいった。
航と自分だけがレジに入る日を伝えると、それなら会話のきっかけを作って欲しいと凛香は提案したのだった。目の前で物を落とすという随分古典的な方法だが、相手が気づかなければ意味がない。現に、航は自分が促さなければ気が付かなかった。
内容までは聞き取れないが、凛香の女の子らしい高くよく通る声に、航が何ごとか相槌を打っている。亜希はため息交じりに俯いた。アルバイト先でなんて不真面目なことをやっているのだという自己嫌悪と、同級生との約束を果たせた安堵が入り混じる。何やってるんだろ、と思わず呟いてしまう。
そこに一人の客が、ペットボトルを一本持ってやって来た。
「百十円になりまーす」
それを受け取って間延びした声で言う航に、客が驚いた顔をした。
「あれ、来栖くん」
わざとらしいな、と思ったが何も言わず、亜希は凛香を眺める。対する航は、改めて彼女の顔を見てようやく気が付いたらしい。
「あー、えっと、山本さんだっけ?」
二人は昨年、同じクラスだったそうだ。それでも特に親しい間柄というわけではなかったと凛香は言っていた。航にとっては可も不可もない、ただの元クラスメイトだろうと。
「そうそう。へー、ここで働いてたんだ!」小銭を出しながら凛香は感心した声を出す。「偉いよね。バイトしてるなんて」
「それほどでも」
彼はレジから吐き出されたレシートと商品を手渡した。「そんじゃ、ご贔屓に」
至極あっさりと航は会話を打ち切ってしまう。凛香もそれ以上は会話を続けることなく、「頑張ってね」とだけ言って背を向けた。
遠ざかっていくその背を見送りながら、そろそろかと亜希は口を開いた。
「あっ」
突拍子もない声に、航が振り向いた。
「あれ、落としちゃったのかな」
レジの前には、凛香がこっそり意図的に落とした犬のキーホルダーが落ちている。「ほんとだ」とカウンターの出口に近い航が、それを拾った。
「さっき落としてったみたいですね」亜希は顔を上げ、店から出ていく凛香を見た。「まだ間に合うかも」
キーホルダーを手に航は足早にレジを離れ、それを渡すべく彼女を呼び止めた。
亜希は、ふうと息をついた。「ありがとー!」という女の子の声が見なくても聞こえてくる。取り合えず、計画は上手くいった。
航と自分だけがレジに入る日を伝えると、それなら会話のきっかけを作って欲しいと凛香は提案したのだった。目の前で物を落とすという随分古典的な方法だが、相手が気づかなければ意味がない。現に、航は自分が促さなければ気が付かなかった。
内容までは聞き取れないが、凛香の女の子らしい高くよく通る声に、航が何ごとか相槌を打っている。亜希はため息交じりに俯いた。アルバイト先でなんて不真面目なことをやっているのだという自己嫌悪と、同級生との約束を果たせた安堵が入り混じる。何やってるんだろ、と思わず呟いてしまう。
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