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14話 命の約束
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覚悟はしていたが、主人の追っ手はどこまでもしつこく追ってきた。自分たちの人相書きを見かけ、ナツはぎょっとしてその場を足早に立ち去った。繋いでいるシノの手が、手を強く握ってくる。
「夜の内に、ここを出よう。もうこの街は無理だ、またどこか探してかねえと……。路地の鼠まで、あいつら探し回ってるらしい。あたしらが見つかるのも、時間の問題だよ」
シノが反対する訳もなく、二人は朧月夜の元を歩き続けた。通りを避け、影を選び、それでもいつその影から大人が出てくるか、誰かに襟首を掴まれるのではとびくびくと怯えながら、街の外を目指した。大きな街のせいか、すれ違う人影が途絶えることはないが、大人が自分たちを気にする様子はない。
緊張しながらも通りを抜け、人影の消えた薄暗い路地裏で、ナツが音を立てずに息をついた。
「あと少しで、街から出られるぞ……」
途端、隣をぴったりとくっついて歩いていたシノが、がくんと後ろへ引っ張られた。
硬直してしまったシノの腕を掴んでいるのは、暗い路地から音もなく現れた、一人の若い女だった。恐ろしい大人の男ではない。だが、それに安堵する前に、ナツは相手の顔を見て息を呑んだ。
相手は、若い顔立ちを憎々しげに歪ませている。
「あんたたち……」
シノの腕を握る手に力を込め、食いしばった歯を見せ、彼女は呻くように言った。
「よくも、こんなところまで、逃げたわね。やっと見つけたわ」
彼女の首には、ナツやシノと変わらない首輪があった。
「あんた、旦那様のところにいた……」
「そうよ。よく覚えていたわね」
奴隷などに名前はない。だが幾年も働いていれば、その名も声も知らずとも、顔を覚えることはできた。彼女は間違いなく、ナツとシノと共に主人の下で働いていた、奴隷の一人だった。
「のこのこと逃げおおせて……。あんたたちのせいで、私たちは、非道い目にあったんだからね……!」
「非道い目って……あたしたちのことなんて、関係ないだろ……」
「あるから言ってんのよ!」
彼女は怒りに任せて声を荒らげた。
「旦那様が、どれだけお怒りか、知りもしないで……。あの火事の後、家はそれは荒んでいったわ。手始めに、ボヤを起こした下女を、みんなの前で殺した……ほんの不始末だって言ってたけど、そんなの、聞くわけがなかった!」
どんな殺され方をしたのか。その凄惨さは、彼女が思わずシノから手を解き、自らの身を抱きしめる様子から予想できた。彼女はきっと、二人を睨みつける。
「それに、あんたたちが逃げ出したのも、火に油を注いだわ」
「あたしは、朝が来たら、殺されるんだって、聞いたんだ……だから……」
「あんたが殺されればよかったんだ!」
彼女の瞳に宿る燃えるような怒りに、ナツは言葉を飲み込み、シノは震え上がった。ナツの腕を両手で握り、怯えながら縋り付く彼を、彼女は鋭い眼差しで見据える。
「そいつが逃げたっていうのも、余計に怒りを買ったのよ! 旦那様、気に入ってたって話だから……!」
「だけどシノは、あのままあそこにいれば、いつか嬲り殺しにされてたんだ。遊ばれて、殺されるところだったんだ」
「そのまま殺されたらよかったのよ! あんたたちが死ねばよかったんだ!」
彼女は髪を振り乱し、叫ぶ。人気のない道は街灯に照らされるだけで、通りかかる者はいない。だが、向けられる言葉の勢いに、二人は逃げるという思いを打ち消されてしまっていた。
「それって……」
「殺されたのよ、何人も! 旦那様、怒りが収まらないって、下人にも手をかけたの! こんなこと、今までになかった!」
命を買われた奴隷とは異なり、雇われている彼らを手にかけるというのは、普通のことではない。
彼女は肩につく自分の髪をかきあげる。それを見てナツとシノは息を飲んだ。彼女の頬から耳元にかけての皮膚は、赤黒くただれていた。彼女の顔が焼かれたのだということは、言われずとも悟ってしまった。
自分たちの逃亡が、多大な犠牲を生んでしまったことを、思い知った。ナツとシノに向けられるはずの主人の怒りは、行き場をなくし、弱い立場のものへ向いてしまったのだ。それが彼女の訴える、奴隷や下人の酷い死に様だった。
ぐっと、彼女はナツの首にあるスカーフを握り締める。
「こんなもの使って!」
息苦しさに息を詰まらせるナツから奪ったスカーフを、彼女は地面に叩きつけた。ナツが拾い上げるまもなく、裸足で幾度も踏みつける。
「あんたたちが……あんたたちのせいで……!」
ナツは抗議できなかった。憎悪を宿した彼女の瞳から、涙が溢れていたのだ。
「あたしたちが、逃げたから……」
呆然と呟くナツの手を握っているシノも、がっくりと項垂れている。
その時、向こうの方から大勢の足音が近づいてくるのに、ナツは気がついた。泥で汚れたスカーフを咄嗟に拾い上げ、シノの手を握ったまま駆け出すのを、力なく泣きじゃくる彼女は、追おうとはしなかった。
再び夜闇に紛れ、街を外れた丘の上を、とぼとぼと歩く。ナツの足取りに力はなく、それをシノが心細く見上げている。
「あたしら……とんでもないことしちまったんだな……」
ついに足を止め、ナツはシノに語りかけた。シノは、いつもの濡れているような澄んだ瞳で、真っ直ぐに見つめてくる。
「やっぱり、逃げたら駄目だったんだ」
ナツもシノも、自分の死を、そして大事な人の死を嫌っただけだった。理由もなく殺されてしまう恐ろしい未来から、逃れようとしただけだったのだ。それがこのように、他人の犠牲という結果を招くなどとは思いもしなかった。
「本当にひどいのは、逃げ出した、あたしたちだったんだ」
唇の端を、声を震わせる。
「あのまま、死んでたら、よかったんだ……!」
そう零したナツを、シノが抱きしめる。彼もまた落胆し、疲れきり、表情に影を落としていたが、ナツのその言葉を耳にすると、両腕を回して抱きついた。
ナツには、シノの言葉が聞こえる。死なないでと、言っている。ナツ、死なないでと、生きていて欲しいんだと、シノは声のない体で精一杯叫んでいる。
「ありがとな……あたしもそうだよ。あんたに、シノに、死んで欲しくなんかない。あたしが死ぬことがあったって、あんたが死ぬのは嫌だ」
ナツもシノの背に腕を回したが、崩れるように、そのままずるずると草地の上に膝をついてしまった。彼女の右手は未だに、汚れたスカーフを固く握り締めていた。
「……言ってくれたよな、あの人たちも、生き延びろって。生まれたんだから、生きるんだって。本当に、嬉しかった。……だけど、それは、他の誰かが死んでも変わんねえのかな。そこまでして生きなきゃいけねえのか、分かんねえんだよ。あたしには、もう、分かんないんだ」
ナツの細腕が震える。
「どうして、あたしら、こんなんなんだろな……なんで、こんな生きるだの死ぬだの言わないと、いけないんだよ。これからもずっとそうだ。これが付いてる限り、あたしらは、人間になれないんだ。足や手なら、すぐにでもぶった切ってやるってのに、なんでなんだよ……!」
自分の首輪に手をやり、声を震わせ、ナツは嘆く。そんな彼女の前に、シノが膝をついた。寂しげな瞳にナツを映し、そっと抱きしめる。
ナツは、涙を零し、泣いていた。
「あの時、少しでも思ったんだ。このまま、こんな生活がずっと続くんじゃないかって……この幸せが、死ぬまで続くかもしれないって、一瞬でも、思ったんだ……。そんなわけねえのに、あたし、馬鹿だ。本当に、どうしようもないんだ……!」
そう言って、シノを強く、強く抱きしめる。熱い涙を流しながら、スカーフを握り締めた腕で、縋るようにシノを抱く。シノは頭をナツの肩に乗せ、目を閉じた。
そして、彼が唇を動かすのが、ナツには感じられた。声は出ていない。しかし、シノの言葉が、ナツにはわかる。
それを聞き取り、ナツはやがて頷いた。
「そうだな……」
シノは、ナツに死んで欲しくない。
「生きよう……」
そうして、ナツも、シノに死んで欲しくなどない。
「どこまでも、生きて生きて、ずっと一緒にいよう」
シノが、大きく頷いた。
顔を見合わせ、幼いふたりは笑い合った。かけがえのない約束が、ふたりを繋いでいた。
「夜の内に、ここを出よう。もうこの街は無理だ、またどこか探してかねえと……。路地の鼠まで、あいつら探し回ってるらしい。あたしらが見つかるのも、時間の問題だよ」
シノが反対する訳もなく、二人は朧月夜の元を歩き続けた。通りを避け、影を選び、それでもいつその影から大人が出てくるか、誰かに襟首を掴まれるのではとびくびくと怯えながら、街の外を目指した。大きな街のせいか、すれ違う人影が途絶えることはないが、大人が自分たちを気にする様子はない。
緊張しながらも通りを抜け、人影の消えた薄暗い路地裏で、ナツが音を立てずに息をついた。
「あと少しで、街から出られるぞ……」
途端、隣をぴったりとくっついて歩いていたシノが、がくんと後ろへ引っ張られた。
硬直してしまったシノの腕を掴んでいるのは、暗い路地から音もなく現れた、一人の若い女だった。恐ろしい大人の男ではない。だが、それに安堵する前に、ナツは相手の顔を見て息を呑んだ。
相手は、若い顔立ちを憎々しげに歪ませている。
「あんたたち……」
シノの腕を握る手に力を込め、食いしばった歯を見せ、彼女は呻くように言った。
「よくも、こんなところまで、逃げたわね。やっと見つけたわ」
彼女の首には、ナツやシノと変わらない首輪があった。
「あんた、旦那様のところにいた……」
「そうよ。よく覚えていたわね」
奴隷などに名前はない。だが幾年も働いていれば、その名も声も知らずとも、顔を覚えることはできた。彼女は間違いなく、ナツとシノと共に主人の下で働いていた、奴隷の一人だった。
「のこのこと逃げおおせて……。あんたたちのせいで、私たちは、非道い目にあったんだからね……!」
「非道い目って……あたしたちのことなんて、関係ないだろ……」
「あるから言ってんのよ!」
彼女は怒りに任せて声を荒らげた。
「旦那様が、どれだけお怒りか、知りもしないで……。あの火事の後、家はそれは荒んでいったわ。手始めに、ボヤを起こした下女を、みんなの前で殺した……ほんの不始末だって言ってたけど、そんなの、聞くわけがなかった!」
どんな殺され方をしたのか。その凄惨さは、彼女が思わずシノから手を解き、自らの身を抱きしめる様子から予想できた。彼女はきっと、二人を睨みつける。
「それに、あんたたちが逃げ出したのも、火に油を注いだわ」
「あたしは、朝が来たら、殺されるんだって、聞いたんだ……だから……」
「あんたが殺されればよかったんだ!」
彼女の瞳に宿る燃えるような怒りに、ナツは言葉を飲み込み、シノは震え上がった。ナツの腕を両手で握り、怯えながら縋り付く彼を、彼女は鋭い眼差しで見据える。
「そいつが逃げたっていうのも、余計に怒りを買ったのよ! 旦那様、気に入ってたって話だから……!」
「だけどシノは、あのままあそこにいれば、いつか嬲り殺しにされてたんだ。遊ばれて、殺されるところだったんだ」
「そのまま殺されたらよかったのよ! あんたたちが死ねばよかったんだ!」
彼女は髪を振り乱し、叫ぶ。人気のない道は街灯に照らされるだけで、通りかかる者はいない。だが、向けられる言葉の勢いに、二人は逃げるという思いを打ち消されてしまっていた。
「それって……」
「殺されたのよ、何人も! 旦那様、怒りが収まらないって、下人にも手をかけたの! こんなこと、今までになかった!」
命を買われた奴隷とは異なり、雇われている彼らを手にかけるというのは、普通のことではない。
彼女は肩につく自分の髪をかきあげる。それを見てナツとシノは息を飲んだ。彼女の頬から耳元にかけての皮膚は、赤黒くただれていた。彼女の顔が焼かれたのだということは、言われずとも悟ってしまった。
自分たちの逃亡が、多大な犠牲を生んでしまったことを、思い知った。ナツとシノに向けられるはずの主人の怒りは、行き場をなくし、弱い立場のものへ向いてしまったのだ。それが彼女の訴える、奴隷や下人の酷い死に様だった。
ぐっと、彼女はナツの首にあるスカーフを握り締める。
「こんなもの使って!」
息苦しさに息を詰まらせるナツから奪ったスカーフを、彼女は地面に叩きつけた。ナツが拾い上げるまもなく、裸足で幾度も踏みつける。
「あんたたちが……あんたたちのせいで……!」
ナツは抗議できなかった。憎悪を宿した彼女の瞳から、涙が溢れていたのだ。
「あたしたちが、逃げたから……」
呆然と呟くナツの手を握っているシノも、がっくりと項垂れている。
その時、向こうの方から大勢の足音が近づいてくるのに、ナツは気がついた。泥で汚れたスカーフを咄嗟に拾い上げ、シノの手を握ったまま駆け出すのを、力なく泣きじゃくる彼女は、追おうとはしなかった。
再び夜闇に紛れ、街を外れた丘の上を、とぼとぼと歩く。ナツの足取りに力はなく、それをシノが心細く見上げている。
「あたしら……とんでもないことしちまったんだな……」
ついに足を止め、ナツはシノに語りかけた。シノは、いつもの濡れているような澄んだ瞳で、真っ直ぐに見つめてくる。
「やっぱり、逃げたら駄目だったんだ」
ナツもシノも、自分の死を、そして大事な人の死を嫌っただけだった。理由もなく殺されてしまう恐ろしい未来から、逃れようとしただけだったのだ。それがこのように、他人の犠牲という結果を招くなどとは思いもしなかった。
「本当にひどいのは、逃げ出した、あたしたちだったんだ」
唇の端を、声を震わせる。
「あのまま、死んでたら、よかったんだ……!」
そう零したナツを、シノが抱きしめる。彼もまた落胆し、疲れきり、表情に影を落としていたが、ナツのその言葉を耳にすると、両腕を回して抱きついた。
ナツには、シノの言葉が聞こえる。死なないでと、言っている。ナツ、死なないでと、生きていて欲しいんだと、シノは声のない体で精一杯叫んでいる。
「ありがとな……あたしもそうだよ。あんたに、シノに、死んで欲しくなんかない。あたしが死ぬことがあったって、あんたが死ぬのは嫌だ」
ナツもシノの背に腕を回したが、崩れるように、そのままずるずると草地の上に膝をついてしまった。彼女の右手は未だに、汚れたスカーフを固く握り締めていた。
「……言ってくれたよな、あの人たちも、生き延びろって。生まれたんだから、生きるんだって。本当に、嬉しかった。……だけど、それは、他の誰かが死んでも変わんねえのかな。そこまでして生きなきゃいけねえのか、分かんねえんだよ。あたしには、もう、分かんないんだ」
ナツの細腕が震える。
「どうして、あたしら、こんなんなんだろな……なんで、こんな生きるだの死ぬだの言わないと、いけないんだよ。これからもずっとそうだ。これが付いてる限り、あたしらは、人間になれないんだ。足や手なら、すぐにでもぶった切ってやるってのに、なんでなんだよ……!」
自分の首輪に手をやり、声を震わせ、ナツは嘆く。そんな彼女の前に、シノが膝をついた。寂しげな瞳にナツを映し、そっと抱きしめる。
ナツは、涙を零し、泣いていた。
「あの時、少しでも思ったんだ。このまま、こんな生活がずっと続くんじゃないかって……この幸せが、死ぬまで続くかもしれないって、一瞬でも、思ったんだ……。そんなわけねえのに、あたし、馬鹿だ。本当に、どうしようもないんだ……!」
そう言って、シノを強く、強く抱きしめる。熱い涙を流しながら、スカーフを握り締めた腕で、縋るようにシノを抱く。シノは頭をナツの肩に乗せ、目を閉じた。
そして、彼が唇を動かすのが、ナツには感じられた。声は出ていない。しかし、シノの言葉が、ナツにはわかる。
それを聞き取り、ナツはやがて頷いた。
「そうだな……」
シノは、ナツに死んで欲しくない。
「生きよう……」
そうして、ナツも、シノに死んで欲しくなどない。
「どこまでも、生きて生きて、ずっと一緒にいよう」
シノが、大きく頷いた。
顔を見合わせ、幼いふたりは笑い合った。かけがえのない約束が、ふたりを繋いでいた。
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